第九幕 無要運命ダストLINE 8
九幕八話です、よろしくお願いします。
つぼみと二人で自転車を漕ぎ、帰りながら話している。
いろいろ考えるべきことはあるが、それでも話せているだけで幸福を感じてしまうのは、惚れた弱みか、それともなにか運命的な縁でもあるのか。
……飛鳥でも、こんなに臭いことは考えないだろう……。
我が家の向かいに居を構えるつぼみであるから、帰路も殆ど同じである。
恋人としては恵まれているだろう。……送っていくよ、みたいなやり取りができないのは少し寂しくもあるが。
「今年、クリスマスどうする?」
つぼみが、晩ごはんの献立でも決めるように言った。
クリスマス。
……これは、デートのお誘いなのでは?
いや、恋愛関係にあって、特に障害もないのにクリスマスを共に過ごさぬなどあり得ないことである。しかも、今年のクリスマスは冬休みの最中だ。
少しくらいは関係を進めるチャンスである。
物にせねば。
「そうだな、飛鳥は睦美さんのところに行くらしいからな」
「そりゃそうだ。去年は……蓮城家で過ごしたんだっけ」
俺たちは、昔から家族ぐるみの付き合いがあった。そのため、クリスマスは毎年交互にパーティを催し、相手方の宅にお邪魔してわいのわいのしていたわけだが、飛鳥との関係の変化によってそれも今年はなくなった。
俺たちが恋人であるということもあり、母親同士は二人でディナーに出かけることになっている。無論飛鳥は睦美さんの家に行くわけだから、必然的に俺たちはフリーになる。
ちなみに、世知辛いことだが父親は双方仕事である。
「じゃあウチでなんかしよっか」
呼吸をするようになんの気兼ねもなくつぼみの口からその言葉は飛び出た。
我ながらなんとも単純なことに、モヤモヤが少しずつ晴れていく。
「プレゼント期待してるよ」
「任せとけ」
机の引き出しに大切にしまってある赤い簪を思い返しながら答える。
クリスマス、二人きり。
何が起こるやらわからないが、何かしら起こるだろうシチュエーションだ。
どうしても胸は高鳴る。
飛鳥より早く走り始めながらも愚弟の後塵を拝する日々だったが、ついに並走くらいはできるようになるかもしれない。
情けないことに、素直に弟を祝福できない俺がいたが、それも新年を迎えると共に捨て去ることができればと願うばかりだ。
「俺も期待しておこう、少しだけな」
「ひど、当日腰抜かすよそんなこと言ってると」
「だといいんだけど」
実際はもう飛び上がりそうなくらい嬉しいのだけど、それを表に出すのは癪だからしない。まあ、見抜かれてるかもしれないが。
学校から家まではかなり近いので、少し話しているともう家に着いてしまう。
学校から近くて、互いの家も真向かいとなると、もっと一緒にいる言い訳ができないのが嫌なのだ。
考えたところでどうしようもないことだけど。
「じゃ、また後でね」
「ああ」
後でというのは無論チャットだが、それがあるというだけでもだいぶちがうものだ。
家に入るつぼみを見て少ししてから、俺も玄関を開けた。
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