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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第九幕 無要運命ダストLINE

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第九幕 無要運命ダストLINE 7

九幕七話です、よろしくお願いします。

弟たちと別れ。つぼみを探しに校舎を歩き回っていると、一つの候補に思い当たり、足を向ける。


 ____当たりだ。


 即ち、屋上の鍵が空いている。

 また何か適当なことを言って教員を唆したのだ。


 十二月の屋上の寒さはかなり堪えるだろうに、なぜそんなことをするのか。


 思考をする前に、身体は動き、ドアを開ける。ビュウビュウと芯から凍える風の中でも聴こえる鼻歌を聴衆の居ない屋上に響かせながら、つぼみはそこにいた。


 本来なら使われることのないであろうベンチに腰掛け、その腕に持つペンを走らせている。

 あれは、日記帳だろうか。付けているところを見るのは久しぶりだが。


「つぼみ」


 遠巻きに声をかけてみると、つぼみは、ノソノソとこちらに振り返って微笑んだ。


「いいの? こんなとこきて」

「ダメだから、早く戻ろう」

「……そうね。ちょっと冷えちゃったわ」


 ポイポイと日記帳をカバンに入れて、つぼみは立ち上がる。あっという間に身支度を整えて、入り口の方に戻ってきた。


「……何書いてたんだ?」


 つい、訊いてしまう。日記とは、花園。誰あろうと覗くことは許されない聖域である。

 しかし、それでも訊いてしまう。


「んー、飛鳥、頑張ってるんだなあ、って、それだけ」


 ……訊かなくても、予想はついていた。角度的に、あそこのベンチからは、生徒会室がよく見える。


「直接ちょっかいかけに行かないなんて珍しい」

「最近は自重してるのに、心外ね」

「自覚はあると」


 溜息混じりに返すと、つぼみはまた笑う。


「多分寂しいのね、私」

「よくもまあ、俺の前でそんなことを言える……まあ、俺も人のことは言えないか」


 今まで手を焼いてきた弟が生徒会長として頑張ってやっているというのは、少しばかり寂しく思う。

 しかしそれ以上に誇らしくも思う。あいつはただの馬鹿ではない、それは俺が一番よく知っている。


 だから、気持ちがわからないとか、そういうことはないが、どうしても、つぼみには考えてしまう。


 もっと俺を見てくれ、と。


 観覧車の中、飛鳥の乗るゴンドラに向けるつぼみの視線が、脳裏に焼き付いて消えないのだ。

 

「帰りましょ、冷えちゃった」


 ……追及するのは、怖い。

 俺がつぼみにとってなんなのか。

 訊ねれば、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてからほくそ笑んで、彼氏に決まってるじゃない、などと言うのだろう。


 しかし、その心の奥の奥で、何を考えているのか。

 思えば、俺はそこに触れたことはないのではないか……?


 ……先日、やはり日記を覗くべきだったか。……いや、そんなわけはない。プライバシーは如何なる関係にあったとしても侵してはならない領域だ。


 だが……。

 次があったとしたら。俺は自分を抑えられるだろうか。


 確証は、なかった。


「そう、だな」


読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。

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