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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第九幕 無要運命ダストLINE

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113/183

第九幕 無要運命ダストLINE 6

九幕六話になります。

もしかしたら追加するかもしれません。

プレゼントを買いに走った翌週である。

 クリスマスを翌々週月曜日に控えるわけだが、俺は睦美さんへのプレゼントを決めあぐねていた。……華月が色々抱え込んでいそうだったからと格好つけてスノードームを彼女に渡したはいいが、さて、それでどうしよう。


 睦美さんにも同じものを渡そうかとも考えたが、彼女と彼女の妹に贈るものが同じというのはどうなのだろう?


 と、そのようなことを生徒会室で作業する三代さんに話してみた。本日も会長副会長以外は下校済みだ。

 三代さんはジト目でこちらを睨んでから二つほど溜息を吐くと、なんのかんの言いながら相談に答えてくれる。


「別にいいんじゃない? 同じでも。二つ渡すんでしょ?」

「いやなあ、三代さんが貰ったものが妹と同じものだったらどうよ」

「妹いないもん私」

「拗ねるなよ、悪いとは思ってるんだ」

「それ関係ないし。というかなんで妹さんを先にしたのさ」


 聞かれて、先日の成り行きを話すと、三代さんは大いに笑い、


「あはは! なにそれ、かっこつけちゃったから後に引けなかったっての!? ふふ、やっぱ馬鹿だわ、馬鹿馬鹿だね蓮城君」

「……言われて嬉しい馬鹿とそうでない馬鹿とがあるが」

「ふふ、あー笑った。相談料は無しにしてあげるよ。化かされてあげる」


 言うと、三代さんは作業に戻った。

 

 俺も手元のプリントに目を落とす。今は終業式のスピーチの原稿を書いているところだ。

 何度もスピーチばかりしていると少しばかりは書き方もわかってくる。

 ……だからこそ、そこを崩して何かをしたくなる気持ちもあるのだが、誰かの後押しがなければその悪戯心は表面にまでは浮かんでこない。


 結局、生徒会選のあのスピーチ以降は割と真面目に壇上に立っている。それで何が面白いやらわからないが、睦美さんはそんな話を聞いて笑っていた。そして、それならまあ、いいのだ。モヤモヤはあるが、結果が伴うなら文句はない。


 しばらく原稿と格闘し、ようやくノックアウトに成功する。


「三代さんは、後何が」


 残ってるんだ? と。訊ねようとドアがガラガラと開かれる音がした。


 ……またつぼみか、と警戒した俺たちだったが、来訪者は予想とは異なった。即ち、三代さんが言う、


「か、会長!」


 要は我が兄である。制服姿であるが、頬は上気している。どうやらテニス部に顔を出していたようだ。

 ……悩みがあれば体を動かす兄である。無論そういう時だけではないが、今は多分悩みゆえだろう。まあそれをここで突きはすまいが。


「三代さん。久しぶりだな」

「い、いえ、そんな……」


 両手を内腿に埋めてモゾモゾしながら、運動上がりの兄より顔を赤くして三代さんが答える。


 今会長は俺だが? と、そんなツッコミを入れる間もない。


「愚弟が世話になってるな。それが一応は大きな問題なくやれてるのは三代さんの力添えによるとのろが大きいはずだよ、だから、これからもお願いするよ」

「は、はい! 喜んで!」


 どうやら、失恋してもファンではある、ということらしい。従順なチワワの風情で三代さんは兄と話していた。

 その話にも一段落つくと、兄がこちらに向かってくる。


「なんのようなんだ?」

「古巣を覗きに来たら悪いか?」

「邪魔になってるんだから悪いだろ」

「は、違いない。と、そんなことよりだ、つぼみを見なかったか? ここに来たと思ってたんだが」

「いや? 心当たりがない。三代さんもないよな?」

「……うん、ないよ」


 なんとも分かりやすくテンションを下げながら三代さんが言う。無理もない。俺が恋愛相談を持ちかけるのを三代さんは実際に気にしているわけではないだろう。

 しかし、兄が直接赴いて別人を探しに奔走しているというのでは、それは面白くあるまい。


 失恋した! キッパリ忘れる!


 ……そんなに簡単ではないのだ。

 が、それでも努めて表に出すまいとしているのは、よくできた娘なのだということだろう。


「そうか、わかった、ありがとう」

「ああ、見かけたら伝える」

「助かる」


 言うと、兄は三代さんの溜息を背に受けながら生徒会室から出ていった。

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。

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