第九幕 無要運命ダストLINE 2
九幕二話です、よろしくお願いします。
「どうも、天津です」
「あらあら華月ちゃん、さいきんよく来るのねえ」
「ええ、飛鳥さんが浮気しないか監視しなくてはなりませんから。あ、これ大福です。美味しいですよ」
「いつもありがとうねえ。後で出すからね」
「いいやつですから、楽しみです」
「というか飛鳥、疑われるようなことしたの?」
「いえいえ、良い奴ですから、そんなことはありませんよ。私が姉離れできていないのです、何かと口実を付けて姉と話したいだけなのですよ」
「そう? なら良かった。もしそんなことしたら勘当してやるんだから」
と、なんだか毎回やっているようなやりとりを経て、飛鳥さんの部屋に向かう。お兄さんはどうやら不在のようだ。無論、いたからどうということは無いのだが……。
運命の相手。一応マギがそう示している相手だ。私とて少女。運命などという言葉に心が躍らないといえば嘘になる。
アプリを使って、彼を通して飛鳥さんの為人を探っていた時だって、意識はしていたのだ。
重ねて無論、今その気はないけれど。
それと、浮気。まあ、実際そんなことをするような彼ではないだろう。主因である私に誹る資格などないが、姉が引き篭もりであり、姉と付き合っていく上で障害はあるにしても、だ。
好青年であるとあの姉が判断を下した以上、不義理は果たせまい。
今日は前に話した通り、姉たちの関係を進めるための打開策であるプレゼントの選定に協力するために赴いている。
ほんとうに、どの面下げて口出しすればいいのかという話ではあるが、だからこそやらねばならないのだ。
考えている間に部屋についたので、ノックをすると、飛鳥さんがドアを開いた。
「よく来てくれた」
◆
「それにしても、アポ無しでないのは初めてだな」
二人して床に座り込むと、飛鳥さんが言う。なんだか皮肉っぽいので少し腹が立った。
「そうでしたか? 報連相には気を遣っているつもりなのですがね」
「よく言う」
「まあ、余談はこのくらいにして。本題に入りましょうか。お姉ちゃんへのプレゼント、目星くらいは付けていますか?」
途端、飛鳥さんの顔が曇った。
どうやら、決めあぐねているといった感じらしい。
「知り合いの女子曰く、普段使いできるものが好ましいとのことだったから、スマホケースとかにしようかなとは思ってる」
「ふむ、スマホケース。なるほど、その知り合いさん、いい線行ってますね」
「女子だから行ってなかったらまずいだろ」
「アプリさんは希望ありますか?」
『え、私に選択権が?』
飛鳥さんのアプリが驚いたふうな声を上げた。
「あなたにとっては衣服のようなものでしょう」
『私はアプリであってハードではないが……おめかしするのは、やぶさかではない』
「らしいですよ」
「……睦美さんへのプレゼントを選ぶのになんでこいつの希望を容れないといけないんだ」
「少女を模しているようですから、参考にはなるのでは」
「……なるほど?」
よくわからないから思考を放棄したのか、彼はヒラヒラと手を振った。
「まあサンプルが多いに越したことはないというのは道理か」
「です」
「まあ、こいつの意見は現地で聞くよ。……というかスマホケースでいいのか?」
「いいのじゃないですか? お揃いのケースとか記念にはぴったりでしょう。そこまで値が張るものでもありませんし」
「たしかに。となると、どのデザインにするかか……」
その後、お母さんの持ってきた大福を手に手にしばらくスマホと睨めっこしながら良いデザインのものを探したが、なかなかこれというものが見つからない。
姉は多分飛鳥さんからの贈り物とあれば、よほど変な柄でなければ常用して頬擦りとかするんだろうが、だからと妥協するのは違う。
魔法のアプリには分岐ルートのシミュレーション機能があるが、無論それは姉に適用されるものではない。
飛鳥さんたちは互いにアプリを使わんとしたらしいから無用の長物だけど。
……そういったところも好ましいと思う。事情はあれど、アプリをフル活用していた身からすれば耳が痛い。
さて、どうしたものか。
それに、一つ目をスマホケースと定めたとて、もう一つも選ばねばならないのだ。
クリスマスプレゼントと、誕生日プレゼントの双方を渡すというのが計画である。
それに、クリスマスプレゼントは姉も用意するだろう。多分姉なら手編みのマフラーとかになるか。二人で一緒に巻けるくらい長いものを編んで、それを使うというのはいかにも姉の好みそうなシチュエーションだ。
「この辺りってショッピングモールとかないんでしたっけ」
「吉川にそんなものはない。越谷辺りまで赴く必要がある」
「なるほど。なら向かいましょうか、そのショッピングモール」
「そうだな、なら時間的余裕がないし急がないとか」
言われて時刻を見ると、ジャストおやつの時間といったところ。たしかに今から電車に乗って移動するのでは余裕はない。
二人して身支度をし、お母さんに挨拶の後、玄関を開ける。
「あれ、二人して出かけるのか?」
と、なんとも奇遇なことに、お兄さんがそこに立っていた。ちょうど帰るところだったらしい。整った顔をきょとんとさせている。
……。ふむ。
「ああ、少し野暮用があってな」
飛鳥さんの言葉を受けたお兄さんがチラとこちらの風体を見やる。
「わかった。あんまり遅くならないようにな」
「俺とてそれくらいは心得ている」
「ならいいんだ、じゃあ、俺はこれで。華月さんも、またな」
「……お兄さんはこの後お暇ですか?」
「? まあ、向こうは千種さん帰ってきたから空いてると言えば、空いてるが」
千種さんとは、たしかつぼみさんのお母さんだったか。過去視している際に見たことがある。
「……おい、まさか」
飛鳥さんが怪訝そうに呟いた。
私はニイ、と笑み、
「ちょっと手伝ってもらっても、いいですか?」
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