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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第八幕 無要運命デートor LINE
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第八幕 無要運命デートor LINE 11

八幕十一話です、よろしくお願いします。

 ペアを分けてから一時間ほどが経過している。そろそろ合流の時機……という時、それは目の前に現れた。


 ボクとお兄さんが共に周るのは運命の悪戯か、などと考えていたボクだったが、違ったのかもしれない。


 ……まあ、ボクとしては、お兄さんの気持ちを応援しようとは思う。運命の相手が華月とでているから華月とくっつくように仕向けるとかそういうことはしない方がいい。


 と、しても、だ。正直どう対応していいか困る。飛鳥君がいない今、華月と正面から接するのは難しい。だいぶマシになってきてはいるけど、それでも震えがおさまらないのだ。飛鳥君がそばにいればそんなことはないのだが、今隣にいるのはその兄だ。


 震えるボクを見て、悲しげに微笑んでから、華月がお兄さんに挨拶した。


「どうも、お兄さん」

「ああ、ケーキ、うまかったよ、ご馳走様」

「当然ですね、あれ高かったんですよ。……それで、どうしてお二人がご一緒に?」

「あー、えっとね……」


 会話するくらいなら問題はないので、少し前に出て説明する。


 瞳を閉じて思案しながら、ボクの説明を聞いていた華月は、なるほどと零してからため息をついた。


「皆さん色々おありなようですね」

「……華月も人のこと言えなさそうだけど」


 華月の座るテーブルに並ぶ大量のドリンクを睥睨する。これ全部で四千円分くらいはいくんじゃないか。

 少し呆れながら華月を見やると、不服とばかりに華月は言う。


「これは、仕方ないのです。グッズをコンプリートするためには、必要な犠牲です……」

「残したりとかはしないんだな」

「それは矜持に反しますから。食べ物を粗末にするなど言語道断ですよ」

「……でも、現実問題飲み切れるのか? それ」

「……閉園前には」

「……手伝おうか?」


 お兄さんがそう提案すると、華月は蜘蛛の糸を見つけた亡者のような顔持ちになった。

 茶目っ気のある笑顔を見ていると、まるで昔に戻ったかのような気にさせる。


「……お言葉に、甘えてもよろしいですか?」

「仕方ないなあ」


 ボクとお兄さんも華月のテーブルに座ると、改めて並ぶジュースに圧倒される。


 カップはコラボしているアニメの柄がプリントされていて、なかなかに可愛い。そして、飲み物毎に柄が異なっている。なるほど、これをコンプして持ち帰りたいということのようだ。


 たしかに記念にもなるし、欲しくなる気持ちもわかる。


 周りのテーブルを見回して確認すると、加えて金額に応じてランダムにイラストカードが配布されるようで、そちらも全種揃えるという無茶をやろうとしたからこそ、この惨状なのだろう。


「……これ、飛鳥君たちも呼んだほうがいいよね」

「そうだな、時間的にも丁度いいと思う」

「……申し訳ありません……」

「いつもお菓子とか気遣ってもらってるからね。これで恩を返せるならいくらだって飲んでやるさ。それに、そういう意味なら飛鳥だって無関係ではないしな」


 罰の悪そうに謝る華月に鷹揚に帰してから、お兄さんが飛鳥君たちを呼び寄せる。


 ボクが一杯飲み干したくらいで、飛鳥君たちが合流した。


「これはまあ、なんとも奇遇なことだな」

「そのくだりはやったよ飛鳥君」

「思うことは同じ、と」

「早く、早く」

「わかったわかった、急かすな」


 円形のテーブルに向かい合う形で座っていたボクたちは、各々のペアの元に相方を呼んだ。ボクから右に、飛鳥君、華月、つぼみさん、お兄さんといった席順だ。


「貴方が華月さん? 飛鳥に聞いた通り、綺麗な娘。ほんとに神話の登場人物みたい」

「ええ、よく言われます。そう言う貴方は淀見つぼみさんですね、いつも姉がお世話になっております」


 二人が挨拶しているのを見ながら、ボクは少し嫉妬しているのか、頬が膨らんでいた。


 訝しんだ飛鳥君が声をかける。


「いや、これはよそ見とかではなくてだな、というか睦美さんもおなじこといってたよな?」

「綺麗とか、ボクも言われたことないのに」

「ぐっ! い、いや、可愛いとかいつも言ってるって」

「……」

「……睦美さんが一番綺麗だよ」

「なら、よし」


 他の三人が呆れたような目線をぶつけてくるのに気づく。顔の方に全身の熱が集ったかのような心地だった。


「可愛いなあ、睦美さん。私もこんな妹がほしかった」

「おや、私では不満でしたか?」

「貴方はなんか悪友って感じ」

「む、妹としては聞き捨てなりませんね」

「というか双子の妹ってあんまり妹感ない」

「い、言いましたね! 言ってはならないことを!」


 と、わちゃわちゃお話ししながらみんなでドリンクを飲んでいく。

 四十分ほどした頃、ようやく最後の一口が華月の腹中に流し込まれた。


「……この度は、ありがとうございました」


 店の外、会計を終えた華月が深々とお辞儀をした。


「この恩は生涯忘れることはないでしょう」


 カップとカードを手に手に持ってにんまりと少女のような笑みを浮かべる華月を見ていると、何だか失った大事なものを取り戻したような心地になる。


 まだ、ちゃんと向き合えているわけではないけど、それでも遠くないうちに、向き合う必要がある。

 ……引き篭もりのこともそうだ。

 双生会はもうないのだ。華月がボクを犯すことはもうないのだ。

 そろそろ、ではないのか。

 ……そうだ。いつまでも、飛鳥君におんぶに抱っこではいられない。

 ボクが飛鳥君を支えられるようにならないとダメなんだ。


「今度はボクにも、ケーキ持ってきてね」

「……ええ。もちろんです」

「あれ、一緒に周らないの?」


 キョトンとした顔で言うつぼみさんに華月は、


「そんなに野暮じゃありませんし、ダブルデートに単身飛び込める程豪胆でもありませんよ。それに」


 お腹を摩りながら続ける。ボクとお兄さんが遭遇する前にも相当量飲んでいたようだから、動けないのだろう。


「あんまり動けそうにありませんから、のんびり動物でも眺めて帰りますよ。目的は達しましたしね」


 では、と告げながらまた深くお辞儀をして、華月は去っていった。

 運命。そんな言葉がポンと浮かんで消えていく。

 華月と、お兄さんと、つぼみさん。三人の運命は、どのように展開していくのだろう。

 と、ボクと同じように去る華月をじっと見送ってからお兄さんが呟いた。


「面白い娘だったね」

「そうですね、ボクも随分と振り回されましたよ」


 振り回された、なんてものではないか。それでも、そんな言葉が無意識にでる程度には、華月に対するトラウマは軟化しているようだ。……それなら、ボクと飛鳥君の邪魔をしないで欲しいものだけど、そうはなっていないのが現実なのだ。逃避していてはいけない。


 が、とりあえず今は今を楽しもう。


 さて、次はどうしよう、と考えようとした時、つぼみさんがまた提案する。


「今度は、ちゃんとペアで周りましょ」

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。

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