第一幕 絶対不可逆運命デステニーLINE 10
読んでくださってありがとうございます。
ちょっと小休止の要視点です。
「つぼみ、なんで、飛鳥と接触した……!」
「だって、親友だもの。放っては、おけないわ」
「二人で、今は時間を空けようって、そうでなくとも、慎重になろうと話したばかりだろう!」
今回ばかりは、要は怒っていた。
陽光にも翳りが見え、闇の帳が降りようとしている。
カップルの夢。学校の屋上なんて場所にいながら、要はやっぱり怒っている。
弟が、兄に目もくれず走り去ってから、要はこうしてつぼみと同じ舞台に上がった。飛鳥とつぼみの会話も、割って入れずに傍聴していた。
弟の「俺は、つぼみ。お前のことが……」の後に続く台詞が気にならないと言えば嘘になる。どんな気持ちで、何を言おうとしたのか。
好きだ、でも、好きじゃない、でも、要としては暗澹としたものが残る。堂々と彼女が好きだと言われるのは彼氏としてはそれは嫌だが、好きじゃない、は、兄として、弟にどれだけの無理を強いているのかを実感させられる。
兄として、彼氏として、一方の最良は、もう一方を阻害する。ジレンマだった。
「屋上ってさ。夢の象徴なんだって。でも、それだけじゃないよね」
「は? 何を言ってる?」
突飛な発言は、このつぼみには珍しいことではないが、流石にタイミングがおかしい。
「例えば、死の象徴だったり、すると思わない?」
「本当に、何を言ってるんだ、お前は……?」
「飛び降り自殺、とかね。実際、それがあったから、屋上は封鎖されてるんでしょ?」
「……そうだ。大分前だった筈だが」
こんな時でも、問われれば答えてしまうのが、要の悪所だ。要としても自覚してはいるが、愛するつぼみの問いともなれば、如何ともし難かった。
「私はさ、飛鳥にそうなってほしくないのね。飛鳥は、理想と現実の隔たりとか言ってたけど、その理想の側にも二面性はある。そういったものに対しては、私は理想の理想だけをみている飛鳥でいて欲しい」
「……飛躍しすぎだ。たしかに今の飛鳥は不安定だ。だからといって、飛び降りたりなどするか」
「私たちの飛鳥は、本当に馬鹿なんだよ。飛鳥は、馬鹿になりたい凡人、なんて思ってるんだけどね」
「それとこれと、何の関係がある!」
「過保護過ぎるくらいが、丁度いいんじゃないか、ってこと」
「過保護……? 今接触するのは、その反対だろ、過保護なショック療法なんて、そんなのは矛盾してる!」
「とにかく。私は、飛鳥を大事に思ってる。要、貴方の飛鳥への思いに、負けないくらい、思ってる」
その言葉から、偽りの色は見えない。昔から、飛鳥に対して過保護な二人だから、その点は疑いようもない。
ただ、おかしいではないか。
眼前の、つぼみの表情は、おかしいではないか。
「ふふ、可愛い」
どこか、恍惚とさえしている様な表情で、つぼみは呟いた。
その後、つぼみは力強く、要を抱きしめる。要には、何が何だかわからなかった。
「大丈夫よ、飛鳥は帰ってくるわ。絶対に、ね」
読んでくださった方、本当にありがとうございます。
感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。
今回、要の向き合うべき問題みたいなのがちょっと見えた気がしますね。
次回でもよろしくお願いします。




