表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

97/155

97 友達

 ここのところ、おにいちゃんがこそこそと出かけている。後をつけようとしてるのだけどおにいちゃんは気配察知の持ち主なのですぐ気付かれてしまい、「ちょっとその辺行くだけだから」とか誤魔化されてしまう。でも誤魔化すってことは怪しいよね。


 あかりおねえちゃんはいつもながら外出中。エルフだから森でも走ってるのかな。しょうがないからメイちゃんにでも相談するか。


「メイちゃんは?」

「メイちゃんならついさっき出かけましたよ」


 お店の人が教えてくれた。さっきはこれから研究とか言ってたのに。なんか匂う。おにいちゃんと同じ時に出かけてるとか怪しくない?ひょっとしてメイちゃんはおにいちゃんを狙ってるんじゃないだろうか。なんだっけえっとNTRだっけ?


 シャリは目立たないようにフードのついたケープを被ると街に出た。


・・


 加速の指輪を使って王都の道を走り回ると、メイちゃんはすぐに見つかった。実験する時に着ている白衣とかいう服を着たまま歩いている。どう見てもデートという感じではないけど。あの中におしゃれな服を着ているのかも。まだ油断はできない。


 メイちゃんは王宮近くの倉庫地区に入っていった。王宮は街の中心ではなく奥の城壁に接して建っている。王宮の裏側、つまり城壁の外は川だ。


 まわりの建物はお店じゃなくて倉庫だけになってきた。馬車や荷車が行きかっている。こんなところで何をしているんだろうと見ていると、メイちゃんは一つの建物に入っていった。やっぱり倉庫だ。近寄って確認すると、表札にハーネス商会とある。なんだメイちゃんの家の倉庫か。


 しばらく見張ってたけど何も起きない。今日は帰ろうかなと思ったら、おにいちゃんが出てきた!その後からメイちゃんも!


 これ密会ってやつでしょ。やっぱりNTR?


・・


 二人が行った後、扉を開けようとしたら鍵がかかっている。中はどうなってるんだろう。倉庫なので窓がない。上のほうに換気窓はあるけど、地面からだと覗き込めない。どこか高い場所に登れば……周りを見回すと城壁に上る階段があった。とりあえず登ってみよう。


 城壁の上から倉庫を観察する。換気窓から覗く中の様子はただの倉庫みたい。薄暗くてがらんとしている。あの二人どうしてこんなところで密会してたんだろう。


 ゴトゴト


 シャリのすぐ横で重い音がした。岩が当たって擦れるような音。音のほうを見ると、城壁の床石が動いた。ゆっくり隙間が開いてくる。床の一部が扉だったみたい。そして中から人が出てくる。


「よいしょっと」

床の穴から金髪の女の子が出てきた。背は高くない。自分と同じぐらい。細くて色白。歳は10歳ぐらいかな。シンプルだけどよく見ると仕立てのよさそうな服を着ている。

 

 女の子と目が合った。こっちをみてニコッとした。かわいい。


「こんにちは。私シャルロットって言うの」

「えっと、私はシャリ」


・・


 シャルロットとお話をした。あんまり人と話をすることが得意ではないシャリだけど、シャルロットと話すのは楽しかった。でもシャルロットがどこから来たのかだけは聞いてはいけないみたい。それを聞くと黙ってしまうのだ。


「そろそろ帰らないと。楽しかった」

シャルロットが言う。

「うん。楽しかった」

シャリが答える。

「また会えるかな」

そう聞かれたけどどうやって連絡したらいいんだろう。


「それじゃ、シャリが大丈夫な日は合図するから。合図した時間にここに出てきて」

「合図ってどうやって?」

(・・ これが合図 ・・)

シャルロットはびっくりしている。シャリはシャルロットに言う。

「シャルロットがダメな日は別にいいから。待ってても出てこなかったら帰るよ」

「それじゃ、それでお願いね」


・・


 次の日もシャルロットは城壁の階段から出てきた。シャリは今日は旅の話をする。村を出てからこの街まで。グリフォンに追いかけられたり、山賊にさらわれそうになったり。


「シャリってすごいのね。私なんてオークを見ただけでもう……」

「オークを見たことあるんだ!」


 シャルロットは下を向いてつぶやく。


「シャリは生き物を殺せる?」


 えっと、ゴブリンとバグベアとトロールは妖精だから生き物じゃないよね。アンデッドは生きてなさそう。オークとオーガはダンジョンでしか見たことないし死ぬと消えちゃったけど生き物なのかな。そういえばリザードマンは生き物だな。うん。


「おにいちゃんを守るためならね」

答えてみる。


「私、ダンジョンに行かないといけないの」

「子供なのにダンジョン入れるの?」

「私は特別なのよ」

ふーん。


「また連絡してね」

「うん」


・・


 次の日はシャルロットは出てこなかった。その次の日も。


『シャルロット、どうしたんだろう……』


「シャリ!」

「おにいちゃん!」

帰り道、倉庫からおにいちゃんとメイちゃんが出てきた。


「おにいちゃん、ここで何してたの?」

「あ、えっと言ってなかったっけ?」

「フィンに掃除を手伝ってもらってたの。見る?」

メイちゃんが中に入れてくれた。


「うわー」

机の上にガラスの器具がいっぱい。瓶みたいなのもいっぱい。キラキラしてきれい。


「出来たばかりの私の実験室にようこそ。シャリさん!」


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ