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88 主の宝

 空を飛んで、陸地に戻る。シャリと、あかりと、そしてメイが迎えてくれる。

「おにいちゃん!」

シャリが抱きついてきた。僕もシャリを抱き寄せる。

「シャリ、よかった」


「フィン!」

ビキニアーマーのメイも抱きついてくる。あんまり違和感ないのはここが水辺だからかな。


「お兄ちゃん」

あかりがやって来た。


「宝箱探さないと!」


 まずはボスのドロップ探し。沼の上を飛び回ってボスを倒したあたりを探すと、水面になにか浮いている。近寄ってみると、形的には亀の甲羅かな。六角模様はなくてのっぺりしているけど。大きさは1mもないぐらい。

 引き上げてみると盾みたいだ。あとで鑑定してもらおう。そういえばあのボスも甲羅はあったけど六角模様はなかったな。


 そして宝箱なんだけど見つからない。まさか水の中?


「あの島じゃないですか?」

メイが指さす。沼の中心付近に小さな島。祠みたいなのがあるな。ここからは数百メートル離れている。

「見てこようか」

「えー、私も見たいです」

「うんうん」「シャリも」


 見渡すと岸辺の草の中に隠れて小舟があった。


「おにいちゃん、漕いで!」

「よーし!」

おにいちゃん頑張る。力持ちの恩恵があるので割と楽勝。


・・


「宝箱ね」


 ちょっと小ぶりの30㎝角ぐらいの宝箱。なぜ全長数十メートルのドラゴンの宝が人間サイズの箱に入って置いてあるのか。しかも毎回同じような木の箱。


「さすがにおかしくない?」

「いまさら?」

ですよね。トラップを調べたが掛かっていない。


「トラップないとかおかしくない?」

「疑いすぎなのでは?」

いやもう何がおかしくないのかよくわからないんだよね。


「ちょっと鑑定で見てよ」

あかりがじっと見る。

「この箱自体がマジックアイテムだったわ」

あやうく叩き壊すところだったよ。宝箱はメイに箱ごとアイテム化してもらった。


 島には祠があって、両開きの扉がついている。


「これって五階だよね」

戦力は検討するまでもなく使い果たしている。

「ひとまず帰ろうよ」

みんなうなずく。


 というか、ボスはともかくリザードマンを虐殺しちゃったんだけどいいのかな。


・・


 入口のおねえさんに挨拶して王都ダンジョンを出た。まだ午後早い時間だけどくたびれ果てた感じ。ダンジョンを出ると一気に気が緩むんだよな。


「歩くのだるいー」

「エルフなんだから走れよ」

「そのエルフは指輪だけだって。タクシー呼んでよ」

「なんか女子高生っぽくないセリフじゃない?」

「でも今回のボスは強かったですよね」

メイが思い出したように言う。さすがにビキニアーマーは出る前に着替えた。


「魔法全部使っちゃって気力が尽きたわよ」

ぐったりしたあかりが言う。


「でも、一番疲れたのはシャリじゃない?」

「ううん、大丈夫!」

シャリは疲れた顔で大丈夫というけど、さっき隠ぺい切ったらレベルが下がってたんだよな。僕またやっちゃったみたいだ。


 四人でのたくらと道を歩いていると後ろから馬車がやってきた。


「あの馬車が載せてくれればいいのに」

「そんな事言ってないで邪魔だから道をどいて」

僕らが道を空けると、馬車はちょうど横で停まった。前に見たことがある高そうな馬車。扉が開く。


「乗っていくかい?」

パウル司教が顔を出した。


・・


「いい馬車ですね」

よくわからないので適当に褒める。


 僕の向かいはパウル司教。その隣に以前来たシスターも。この人は前に教会ダンジョンから出てきた時も送ってくれたし、パウル司教の秘書なのかな。

 僕の左右はあかりとメイで、膝の上にシャリ。本来は四人乗りみたいだけど僕たちは子供だから半分ということで。


「今さっきなんだけど、ダンジョン四階のリザードマンが皆殺しになっててね」

毎度だけどいきなりぶっこんできますねこの司教。


「酷いことする奴がいますね」

とりあえず無難な返事をしておく。

「いやまあ、私は別にいいんだけど」

「それじゃあよかったです」

あかりが横で僕の足をつねった。


 しばらく無言で馬車が進む。僕の膝の上でシャリがこっくりこっくり。そっと抱きかかえる。なんか微笑ましいな。目の前に司教とかいなければね。


「シャリさん、お疲れのようだ」

「今日は大変だったんですよ」

「レベルが下がっているね」

えーと。

「大変だったんですよ」

「君のレベルが二つも上がってるんだからさぞ大変だったんだろうね」

疲れてて隠ぺい掛け直すの忘れてた。


「司教様はどこに行かれるんですか」

雰囲気に耐え切れずメイが話しかけた。この子、割と空気読むところがある。

「君の家に行こうとしてたんだ」

この道は王都から王都ダンジョンと教会総本山の両方につながっている。

「新しい服のご用命ですか」

「そういう名目でね」


 この雰囲気どうにかならない?


「とはいえ、途中で会えたのだからちょうどよかった」

「偶然ですね」

「君たちがダンジョンを出たと聞いて追いかけてきたからね」

「えーと、どういう用件でしょう?」

シャリを膝に抱えたまま僕が話しかけた。大きいぬいぐるみを抱いてるみたいな感がある。

「業務連絡かな」

僕たちは業務委託されてないんですけど。


「今のところ教会は大騒ぎだ」

「なんでですか」

「リザードマンとの交易は大きな収益源だったんだ」

「続ければいいんじゃないですか?」

「いきなり皆殺しだ。何事もなかったというわけにはいかないだろう」

ちょっと沈黙。


「皆殺しと言っても十人ですよね」

あかりが咳払いをした。

「よく考えたら十三人でした」

「それ言う必要あります?」

メイが小声で言うけど聞こえてるよ。

「君たち結構詳しいね」


「あの階は教会以外の人間は入ってこないはずだったんだよ」

「でも既に三人、先に入ってましたよ」

あかりが足を突っつく。


「封印の魔獣が倒されたからだろうな」

「困ったもんですね」

「さっきも言ったが、私は別に困らないんだ」

「ならよかったです」

あかりがまた咳払い。


「それじゃ誰が困るんですか」

「大司教様かな」


 無言の中、馬車は進む。


「で、業務連絡って何ですか」

「しばらく王都ダンジョンには近寄らない方がいいかもしれない」

「そうかもしれないですね」


挿絵(By みてみん)

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