60 肌色が多い
みんなの装備が完成。僕のは部分的に金属板で補強した小手と脛当てだけど、この金属板が実は鎧という設定。信じることが大事らしい。
シャリはいつものワンピースの上にこのあいだの鉄の胸当てだ。前よりちょっと膨らみを盛ってるな。
あかりはまだ検討中だって。鎧があると思うと魔法の邪魔になる気がするそうだ。本当は毎回服を替えたいからな気もするけど。
そしてダンジョンに向かう朝。
あかりの格好は上下セパレートのヘソ出しチュニックだった。というか最早チュニックでもなんでもない。今は僕に背を向けて柔軟体操している……
つい見ちゃうんだけど、あかりは全体的に細いので明確にウェストがくびれてないけど背中がシュッとして綺麗なんだよね。いわゆるモデル体型。柔軟体操で体を捻った時にバストとウェストの境目に浮き出る肋骨の下端が生っぽい。そして角度によってバストの下のほうがちらちら見える。なんか露出が上がる一方じゃない?
「準備出来ましたー」
後ろからメイの声がした。振り返ると、えっと。
プルンと丸い胸を全く隠す気がない青い三角のパーツ。それ以外は艶やかで弾力のある白い肌が全面に露出している。ちょっと弛んだ下腹部のさらに下をちょっとだけ覆う三角の布。着けている衣装はそれだけだ。どう見ても水着だ。
腰回りのところは水着の上から革ひもがボンデージっぽいんだけど、そこから腰の左右にちょっとだけ腰当てのような板が下がっている。膝から下の脚はブーツとニーソ。
これは、ビキニアーマー!実在したのか。
これ12歳のロリ巨乳ビキニアーマーとか絶対事案だと思うんだけど。お腹がぽっこりイカ腹なのが等身大フィギュアみたいだ。足だけ筋肉ないからひょろっと細いけどそんな太腿にガーターリング巻いてダーツを何本も付けてるのちょっといいね。
「それどこが鎧なの?」
「ここが鎧です」
腰の両脇の板を手でフリフリしている。それ水着と別パーツだよね。
「一応胸パーツも装甲です」
「ちょっとポーズ取ってみない?」
「おにいちゃんそろそろ行くよ」
シャリが強引に手を引っ張る。
◇
ダンジョンに向かってるんだけど、どう見てもこれから海水浴だ。前を歩くヘソ出しモデル体型とビキニ巨乳児童。こんなのがウロウロしてて違和感ないとかファンタジーの世界ってすごい。ていうか実際は違和感ありまくりなんですけど。肌色多くない?
「今日はレベル上げ?」
「いや……」
あかりが答える。
「そろそろ飽きてきたし行けるところまでかな」
「まあ引っ張りすぎたよね」
一階はスルー。二階のボス部屋の扉を開けるとそこにはレイラさんのパーティがいた。ボスを倒して宝箱分配したところみたい。
「レイラさんもう帰り?」
「うーん、ここのボスも慣れてきたし先をちょっと見ようかどうしようか」
「それだったら」
誘ってみよう。
「一緒に三階行きませんか」
・・
というわけで三階。僕ら四人とレイラさん達四人。対トロール痺れ薬の瓶を分ける。
「これを武器に塗ってください」
「へー」
感心される。僕らやりこんでるからね。
「トロールを倒したら傷口に塗り込んで」
「焼かないの?」
「焼くとすぐリポップしちゃうんですよ」
「研究してるんだね」
なんか感心される。
それにしても、メイの格好には誰も突っ込まないんだな。そういうもの?
レイラさんのパーティだけど、剣を持ったレイラさんの他は盾槍クロスボウという重装歩兵っぽい戦士が二人と小振の弓を持った斥候風が一人だ。タンク二人だけど遠距離もこなせそう。バグベア戦で研究したっぽい感じ。痺れ薬があればトロール戦もこなせるかもしれない。恩恵はわからないけどみんなレベル3だし。ちなみにレイラさんは普通の恰好。
通路を進む。前からトロールが二体やってきた。この人数なら楽勝だな。
「それじゃ作戦を試してみましょう!」
僕とメイがダーツを投げ、レイラさんのパーティはクロスボウと短弓。どれも痺れ薬付きなのでかなり凶悪だ。隣でダーツを投げまくるメイの恰好が気になる。ダーツを投げるたびに胸が揺れて全然集中できない。みんな気にならないの?あ、トロールが近くに!
トロールの動きが鈍ってきて……止まったところでタコ殴りする。トロールが二体とも倒れる。心臓の辺りにぐりぐりと槍を刺して、傷口に痺れ薬を垂らす。
「どこかに閉じ込めるの?」
レイラさんが言うけどトロールは3メートル以上ある魔物だ。簡単に動かすことはできない。やっぱりやるか。
「刻みます!」
シャリに攻撃力付与してもらい、スコップで刻んで瓶に詰める。これで二体。血はクリーンできれいにした。
・・
挟み撃ちされないようにクロスボウのトラップを通路に仕掛けながら前進。いつもの部屋を開けるとトロールが一体。
「一体だしちょっと倒してみよう」
あかりに後ろを見てもらいながらみんなで攻撃する。僕は槍に炎の恩恵を纏わらせて攻撃。数の暴力で一体のトロールをボコボコにする。メイの作ったエンチャント鎧も有効に機能しているみたいで僕もシャリもダメージを負っていない。
トロールが前のめりに倒れた。傷の様子を見るがやっぱり僕の攻撃跡は再生しないみたいだ。炎の槍で心臓を突きまくるとトロールが溶けて消えた。
「後ろは?」あかりに確認。
「大丈夫!」
いつもやってくるトロールは留守みたいだ。おっと。
チラチラとした光。部屋のトロールがリポップする。
やっぱりだめかということで、リポップ中のトロールを囲んでタコ殴る。シャリのメイスの特殊効果"一定確率で麻痺"が効いたようでトロールの動きが止まる。こいつも刻んで瓶に詰める。
部屋を漁るがめぼしいものはなかった。
結局こっちはハズレのようだ。あちこち探すが先は繋がってないので引き返す。戻る途中にトロールが倒れている。トラップが効いたみたい。こいつも刻んで。
・・
行ける場所は全部行ってみた。他に空き部屋はあったが何もいない。ここまででトロールは四体。犬頭達はどこから来たんだろう。っていうかボス部屋がないぞ。
もう一度くまなく歩きまわっていたら、あかりが隠し扉を見つけた。マッピングの恩恵のおかげだ。壁の一部が開くと通路になる。
新しく見つけた通路を進むと、前方に大きな両開きの扉。
「盛り上がって来たわね!」
扉を背に、先頭のあかりが振り返る。
「ボス部屋よ!」
手を腰に当てていつものポーズ。あかりが今日着ている上下セパレートの服は水着みたいにぴったりしてないので、胸を張ると下側がちょっと浮いて見えてドキッとする。