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47 催眠術

 納屋でシャリと二人きり。こうやって面と向かって立つと無茶恥ずかしいんですけど。

「おにいちゃん」

シャリは僕に抱きついてきた。

「シャリ」

僕は抱き返す。

「おにいちゃん、久しぶりね」

そうだっけ?


 僕はシャリを干し草の上にゆっくりと横たえる。そのまま一緒に横になる。


 仰向けのシャリに顔を寄せそっとキスをする。シャリが僕に抱きついてきて僕を押し倒すと、小さな体がそのまま乗っかってくる。シャリの舌が僕の口の中に入り込んできた。

 僕はシャリを下からぎゅっと抱きしめる。細い体。抱きしめても皮下脂肪を感じない。でも皮膚はグニャっと柔らかい。


 僕の上のシャリを抱きしめたまま干し草の上で転がる。シャリは軽いので力は全くいらない。小さな体が僕の下ですっぽりと干し草に埋まってしまい身動きが取れない状態。

「んっ」

シャリの喉が鳴る。

 ぐるぐるとシャリの舌を回すように舐めると僕の唾液がシャリの口の中に入り込んでいく。そして。

レベル接続(コンタクト)!』


 シャリが僕を受け入れ、僕との間にレベル回路が形成される。


レベル譲渡(トランスファー)!』


「横でじっくり見ると、子供にしていいキスじゃないわね」

隠密を掛けて隣で見ていたあかりが言う。

「じっくり見るなよ」

「シャリ子供じゃないもん」

「はいはい」


「それでシャリの恩恵は今度はどうしたの?」

気になっていたことを聞いてみる。


「えっとね、催眠術」

「なんでまた催眠術?」

「えへへ」

なんだか嬉しそう。



 夜。いつものように五人で並んで寝ている。もう寒くないんだけどシャリがくっついてくる。

「おにいちゃん、起きてる?」

シャリが耳元で囁く。僕は天井を向いて目を閉じている。最近は妹の攻撃が過激化していて、おにいちゃん耐えられそうにないんですけど。とにかく寝たふり。


「おにいちゃんはだんだん眠くなる」

『だから寝てるって!』寝たふり。


 シャリは構わず耳元で囁く。

「おにいちゃんはシャリが大好きになります」

『とっくにもう大好きだって』

返事しようかと思ったけど寝たふりしてるんだった。


「あかりおねえちゃんより好きだよね」

『えっと、まあそうかな』

すごくそういう気がしてきたぞ。


 突然右腕に痛み。あかりが爪を立てている。

『えっと、何だっけ。そうだ』

精神耐性を発動して強化する。


『とにかく寝よう』


 あかりの手が僕の右腕を掴んだ。肘が柔らかいものに当たる感触。僕の右腕はお手上げ状態であかりの胸に押しつけられて固定されている。


 右側に気を取られていたら左の腕にシャリが抱きついてきた。皮下脂肪の少ない子供っぽい感触と、でも柔らかい胸の矛盾した感触。シャリが左の耳元で囁く。

「おにいちゃんはシャリなしでは生きられないんだよ」

シャリの声が脳に染み込んできた。精神耐性の恩恵をシャリがレベルに任せて蹂躙している。レベル差が大きすぎて意識が飛びそう。

『!』

右の指が噛みつかれた。意識がちょっと戻る。


「 おねえちゃん約束したでしょ。邪魔しないでよ 」

シャリがあかりに言ってる。なんの約束?

「 寝てる時にそういうのは駄目よ」

「おにいちゃん起きてるよ」

「寝てるわよ」

「寝たふりよねおにいちゃん」


 シャリが耳元で囁く。耳に息がかかってくすぐったい感じ。そしてゾワゾワという音と湿った感触。耳をそっと舐められる感触。反応しないように耐える。


「反応ないな」

「こっちもやってみようか?」

突然右の耳の穴にも湿った音。あかりが耳に舌を突っ込んできた。必死で反応を耐える。


「ほら寝てるじゃない」

あかりが小声で言う。


『君たち遊んでるだけでしょ!』



「お兄ちゃん、ちょっと催眠術かかって欲しいんだけど」

「またなんかするの?」

ジト目であかりをみる。昨晩みたいなのはちょっと。


「今回は真面目だから。シャリ、ちょっとお願い」

あかりがシャリに言う。やっぱりあれは真面目じゃなかったのか。


「じゃあ、おにいちゃん」

シャリが僕の前に来て向き合い、ぺたんと座り込む。

「シャリの目を見て」


 僕はシャリの目を見る。前から思ってたんだけどシャリの目の色って不思議なんだよな。光の加減でか青っぽいこともあれば灰色に見えることもある。今はなぜか金色に見える。その瞳に意識が吸い込まれて……


 パン!


 手をたたく音がした。一瞬意識を失っていたかな?

「あれ、どうした?」

妹たちを見るが、二人とも黙っている。


「何かあった?」

「昨日あったことをおにいちゃんに聞いたの」

「昨日あったこと?」

そんなの聞かなくてもわかるのでは。


「やっぱりおにいちゃんは昨日、トロールに食べられたのよ」

「えっと」

「正確に言うと、食べられたことが、なかったことになった、かな」

やっぱりそうか。どうりでトロールを見た時にゾワゾワっとしたわけだ。トロールアレルギーになりそう。


「トロールがわらわら出てきて囲まれたって言ってたよ」

シャリが説明する。

「なんか大変そう」

「問題はそれだけじゃないのよ」

あかりが顔をしかめている。トロールがわらわらより問題とは。


「どうもね、トロールを倒して焼いたらすぐリポップしたみたいなのよ」

「そんなの無理ゲーじゃん」


 再生能力のあるトロールを焼いたらすぐリポップとか無限ループだよ。どうしたらいいんだろう。


「トロールは焼かなきゃ死なないから倒すだけならリポップしないよね」

「そうね、でも焼かなきゃ再生しちゃうわよ」

「焼いたらリポップしちゃうんだよね」

「そうみたいね」


 うーん、どうしたらいいんだろう。


「ところで、トロールを二つに切るとどっちが再生するのかな?」

「大きい方じゃない?」

なんとなくプラナリアを思い出すけどあれは二つにすると二匹にはなるんだよな。


「トロールを二つに切って、再生が始まった大きいほうをさらに二つにするとどうなる?」

「そのうちの大きい方が再生するのかな?」

「それを繰り返すとどうなるんだろう?」

なんかこういうのを前にも考えてた気がするんだけど。


「変な話になってきたけど、話はトロール以外にもあるのよ」

「まだあるの?」

「犬頭の話」

「あ、それか」


「おにいちゃんの話だと、身長2mぐらいで、ちゃんとした装備をして、剣を持っていて、犬頭だって」

シャリが説明するが、心当たりがない。


「あかりは分かる?」

「うーん、見たことも聞いたこともないけど知ってるような」

「知ってる?」

「でも現物を見ないと何ともね」


――


フィン:レベル2(down)(人間:転生者)

・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ


シャリ:レベル5(up)(人間)

・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術(new)


あかり:レベル6(エルフ:転生者)

・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング


挿絵(By みてみん)

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