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101 第三王女シャルロット(登場人物紹介イラストといままでのあらすじ付き)

下に登場人物紹介(イラスト付き)があります

 石畳の中庭にオークの喚き声が響いた。


 一体のオークが木柱に縛り付けられた王宮の中庭。オークがさっきほどからなにやら喚き散らしているがその言葉が分かるものはここにはいない。


 オークを囲むように近衛兵がずらりと並んでいる。なにしろ王家の一族が臨席しているのだ。何かあったらそれこそ不始末では済まない。とはいえ縛り付けられたオークに何かができるわけではないのだが。それでも近衛兵達は緊張を緩めない。


・・


「して、シャルロットがあのオークを倒せればよいのか」

王は隣に立つ教会司教に訊ねる。司教は少々困った顔。


「残念ながらそれだけでは不十分です。先ほども申し上げました通りダンジョンでオークを倒さねばならないのです」

「このオークはダンジョンでとらえてきたばかりだが」

王は、喚き疲れて静かになったオークをちらりと見る。


「いえ、オークの問題ではなく、縛り付けられた状態では駄目なのです。戦って倒す必要があるのです」

「では、なんのためにわざわざこのオークを用意したのだ?」

「まずは慣れて頂かないと。動けないオークを殺せないものが、ダンジョンで戦うなど不可能ですから」

「動けないのなら槍で刺せばよいであろう」

「おっしゃる通りなのですが……」

司教はもう一度困った顔をした。横の少女の方を向く。


「シャルロット様、準備はよろしいでしょうか」


 シャルロットと呼ばれた少女は青ざめた表情で立ちすくんでいる。金髪、細い体、10歳ぐらいに見えるが実際はもう13歳だ。騎士隊長から渡された槍に縋りつくように立っているが、足が震えていて動くこともできない。


「シャルロット、そのオークを殺せないとお前が死んでしまうのだよ」

王はなるべく優しく娘に話しかける。


 少女はよろよろと槍を持ってオークに近づく。5メートルほどの距離になった時、オークが再び大声で喚き始めた。


 少女は槍を手から落とし、その場にうずくまる。

「私にはできません……」


 王は娘の横にしゃがみ込むと一度優しく話しかけた。


「シャルロット、その槍を持ちなさい。危なくはないから」

シャルロットはうずくまったまま動かない。


 喚き散らしていたオークが唾を吐いた。シャルロットの細い金色の髪に唾が飛ぶ。


 王は仕方ないという様子で立ち上がった。騎士隊長に向かって一言。

「その汚らしいオークを処分しておけ」


 王は司教の方に向き直る。

「司教殿、なにか他の方法を考えてはくれないか」

「それでは少々お時間を、陛下」


 パウル司教は心の中で策を巡らせる。

『仕方がない、ここはプランBか』


挿絵(By みてみん)



――――

■登場人物紹介■


フィン

 主人公。兄。転生者で14歳(日本でいう12歳)。日本の18歳の知識を持つが前世の個人の記憶はない。自分のレベルをキスで他人に渡す恩恵(能力)を持つ。装備は伸び縮みする魔法の槍。レベル4。

(画像はありません)


シャリ

 妹。実際は従兄弟の子。14歳(日本でいう12歳)。見た目的にはあと2歳ぐらい下。体が弱く大人になる前に死にそうなところをフィンに助けてもらった。おにいちゃん依存症。メイスで殴る癒し手。レベル6。

挿絵(By みてみん)


あかり

 妹。転生者。エルフ。日本での主人公の妹と主張しているがこの世界では年上。だがエルフなので見た目若い。お兄ちゃん大好きだがショタコン。拗らせ系オタク。自称女子高生。斥候系魔法使い。レベル6。

挿絵(By みてみん)


メイ

 転生者で13歳。転生前は中国で核物理学専攻の大学院生。現在は錬金術師かつ式神を操る。黒髪巨乳。年下だが姉的な感じ。自称フィンの婚約者。レベル7.

挿絵(By みてみん)


パウル司教

 レベルが上がらないメイを救おうとしていたために巻き込まれた人と恩恵の神教会司教。偽悪的だけどいい人。

(画像はありません)


■いままでのあらすじ■


 主人公のフィンは日本の大学生の知識を持った13歳。転生者だが転生前の記憶はない。


 この世界では人はレベルが上がるごとに恩恵という名の特殊能力を獲得できる。しかしレベルが上がらないままの子供は死んでしまう。


 フィンの恩恵は他の人のレベルがわかるというものだったが、レベルが上がらない妹シャリを助けようとする戦いで、自分のレベルをキスによって他人に譲渡できる恩恵「レベル譲渡」を獲得した。


 地元のダンジョンを攻略中、あかりとメイを加えた一行はメイの実家である王都に来た。そこのダンジョンで一行は人と恩恵の神教会のごたごたに巻き込まれたが、現れた天使に大司教が殺されてしまったためうやむやに。


――――

第三部は完結編となります。よろしくお願いします。

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