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伝説の七人  作者: HITOSHI
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『伝説の七人』第18章大団円

第十八章 大団円

1,「ほなそろそろ、元の三次元の世界に戻るか。」

ついに戻るのか、みんなの居ない世界に…。

湯川は後ろ髪を引かれる思いで弥勒に訊いた。

「弥勒さんも天上界へ戻られるんですか?」

「いや、もうちょっと湯川と一緒におるわ。」

湯川には意外な答えだった。

このおっちゃんでも、一緒に居てくれたら楽しいか…。

「失敬なやっちゃな、仏さまやで、ワシは。」

「弥勒さん、俺の心読めるんですか?」

「アホか、お前の顔見てたら誰でも分かるわい。」

俺そんな顔してるんだ。

アルが居なくなってから、全然駄目だな、俺は。湯川は落ち込んだ。

「香音、次元の壁超えるのにまたあの苦痛味あわないといけないんだよな。」

「そうよ。」

「行きと帰りで大違いだな。俺、耐えれないかも。」

「死んだらアルに会えるかもね。」

香音が笑いながらそう言った。

「あはは、そうだな。」

湯川も笑った。

「じゃあ、次元転移するわよ。」

香音の声と共に、エスポワール号は猛スピードで機体を震わせながら空間を突き破るように真っ暗な穴に落ちて行った。

湯川は身体が引き裂かれそうになるのを歯を食いしばって耐えていた。

横では弥勒が納豆の糸のように『びよ~~~~ん』と縦に伸びていた。

船は猛烈な振動と共に元の世界に戻った。

「ふぅ~無事戻れたようだな。弥勒さん大丈夫ですか?」

湯川はさっきの様子を見て訊いた。

「ん?ワシは全然大丈夫やで。」

「でもさっき、ねば~る君みたいになってましたよ。」

「なんやねん、そのねば~る君ちゅうのは。」

「なんでもないっす。」

「じゃあ、船を大学の駐機庫に戻すわね。」

香音が操縦パネルを操作しながら言った。

「俺は、金田一長官に報告に行ってくるよ。」

「ワシも一緒に行ったろか?」

「今回は報告だけなんで大丈夫ですよ。弥勒さん。」

このおっちゃん連れて行くと余計話がややこしくなると、湯川は思った。

「ほうか、ほなワシらは湯川の研究室で待っとるわ。」

「はい、すみません。香音、地球連邦前に転送してくれるか。」

「あいよ。」

湯川は転送室に向かった。

「長官聞こえますか?今から報告にあがります。」

「ああ、湯川君か。待ってるよ。」


2,湯川の姿は地球連邦前の転送ポッドにあった。

「あああ~、またパワードスーツのまま来てしまった。」

地球連邦周辺で湯川の姿は異常だった。

異常過ぎて、誰もそれが地球を救った湯川博士だと気付く者は居なかった。

「まあ、いいや。」

湯川は長官室を目指した。

長官室に着くと、タマヨがドアを開け待っていてくれた。

「湯川先生、本当にお疲れさまでした。長官がお待ちです。」

湯川は中に入ると、長官に深々とお辞儀をした。

「まあ、堅苦しい挨拶は抜きにして、掛たまえ。タマヨ、コーヒーを頼む。」

湯川はソファーに座った。

金田一長官もコーヒーを持って腰かけた。

「いや~、未だに信じられないよ。あの何の手出しも出来なかったUFOを全部破壊するとは。」

「大きな犠牲を払いました。」

「アル君の事だね、君らの会話を聞いていたよ。」

金田一長官も俯いて、涙を堪えていた。

「いくら悔やんでも悔やみきれません。」

「その事については私には何の言葉も持ち合わせないよ。ただ人類にとって大きな損失である事には間違いない。」

「アルが居てくれたら、人類の進歩に大きく貢献してくれたと、俺も思います。」

「非常に残念だ。」

金田一は唇を嚙みしめた。

そして目を閉じ首を垂れるように、数十秒黙祷した。


「君たちの活躍はここのモニターでずっと見ていたよ。それは凄まじいものだった。私には現実に起きている事だとは思えなかった。」

常に戦闘の真っ只中に居た湯川は必死だったので、こうして俯瞰で冷静に戦闘を見てくれていた金田一の存在は有難かった。

「私には、最初それぞれ自分の力で戦っていた過去の英雄たちが、戦闘を重ねるごとに協力し合い、その絆が深まってるように感じた。そしてその力は何倍にも膨れ上がったように思えた。

その中心にはいつも君とアル君が居た。

彼らを変えたのは君たち2人だった。

真の英雄は君とアル君だ。」

あのチームではずっとポンコツ扱いだったのに、長官だけは俺の事を評価してくれている。湯川は歓喜で身体が震えた。

「だが、あの映像を公開する事はできない。

日本人はおろか世界中で大騒ぎになる。

宇宙ステーションから俯瞰で撮った映像もあるんだが、それも含め私の独断で、地球連邦のサーバー奥深くに厳重に封印した。

私の網膜認証が無ければ開くことができないようにした。

世界には、君とアル君が新兵器を開発しUFOを殲滅した事になってる、過去の英雄たちの映像は消して公開した。アル君が犠牲になった事も公表していない。

湯川君、大変申し訳ない。」

金田一は湯川にお辞儀をした。

「長官、やめてください。賢明なご判断だと思います。

感謝してるのは俺の方です。それに卑弥呼さんやスサノオさん、みんな自分達の事が民衆に知られなかった事を喜んで過去へ帰ってくれました。」

「そうか、安心したよ。」

「それより、瀬戸内海を埋めてしまった事、最後のUFO破壊に失敗して、九州を失ってしまった事をお詫びします。」

「それについては、もう修復の指示を出したよ。日本が全部消滅した過去に比べたら回復可能な事だよ。」

「いや、九州の住民だった方には本当に申し訳なく思ってます。」

湯川はまたお辞儀した。

「まさか、ミサイルの発射が1日ずつ縮んでいたなんて誰にも想像がつかないよ。私もUFOの出現が1日ずつ早くなってると思っていた。

あの香音君でも気付かなかったんだろう?」

「ええ、最初に気付いてくれたのは弥勒さんだったんで。」

湯川はまたあの時の事を思い出して、泣きそうになるのを堪えていた。

「すまない、辛い事を思い出させてしまったな。」

こういう素直な所が、金田一長官の人格者たる所以なんだろうな、と湯川は思った。

「弥勒さんは、やっぱり救世主だけあって凄い人なんだろうな。」

「まあ、ここぞという時には頼りになるんですが、普段は本当に変な人で、アルともしょっちゅう喧嘩ばかりしてて…、なぜか喋る言葉も関西弁で聞こえてくるし、俺以上にポンコツというか…」

「誰がポンコツやねん!」

あ、まずいアップルホンを付けたままだった。聞こえちゃったかも…、湯川は慌ててアップルホンをはずした。

「だから、誰がポンコツやねん!って訊いとるやろが。」

あれ、アップルホンを外したのに、なんで弥勒さんの声が聞こえるんだろう。湯川は不思議に思った。

「湯川君,後ろ。」

金田一に言われ、湯川は後ろを振り向いた。そこにはスーツ姿の弥勒が立っていた。

「ぎょぇぇx~、弥勒さん。」

湯川は弥勒に頭をどつかれた。

「金田一はん、黙って入って来てすまんの。」

「これは弥勒菩薩様、お目にかかれて光栄です。」

金田一は反射的にソファーから飛び降り、床に跪いて言った。

「この度は、地球のためのお力添えいただき大変感謝しております。」

「金田一はん、堅苦しい挨拶は抜きや。もう暗なって来たし、酒でも飲みながら話そやないか。」

「弥勒様は何をご所望で。」

「金田一はん、なんかあんた固いな、タメでええんやで。」

金田一は驚いて、頭を掻きむしった。

テーブルにフケがパラパラと落ちた。

「ひゃ~。これやこれ。これが見たかったんや。ひゃ~。」

弥勒が思いっきり引き笑いした。

「ワシはハイボール頼むわ。」

「俺もハイボールで。」

「じゃ、タマヨ、ハイボールを3つと酒の肴を適当に用意してくれ。」

「ワシは、さんまのかば焼きとみりん干しをくれ。」

「弥勒さん、ほんとにサンマ好きですね。」

「あかんのかい。」

弥勒はめんどくさそうに言った。

「さんまか、いいね。私ももらおう。」


金田一はそう言うと姿勢を正して話始めた。

「湯川君、大事な話をするんで呑む前に聞いて欲しい。」

「私は今日、緊急の首脳会議をオンラインで招集した。今回のUFO襲撃の報告だったんだが、そこである提案をして、各州首脳の了承を得た。」

「それは地球連邦主導の宇宙防衛軍の創設だ。」

「ほう。」

弥勒は全て悟ったように頷いた。

「今回のUFO襲来は明らかに地球外知的生命体の攻撃だった。しかも有無を言わせない侵略行為だった。しかし我々には何の対抗手段も持ちえなかった。」

「今後同じような事が起きない保証は何もない。」

「そこで、湯川君の作った宇宙船をベースに宇宙艦隊を作って欲しい。」

「え、俺に作れって事ですか?」

湯川は驚いて尋ねた。

「ああ、湯川君には防衛軍創設の指揮を執ってもらいたい。創設後は防衛省長官として手腕を奮って欲しい。」

湯川は余りの驚きに声も出なかった。

「金田一はん、ほんまにこんな奴に任せて大丈夫でっか?」

「湯川君は今や地球を救った英雄です。彼以外にこの任務を任せられる人物はいませんよ。」

「しゃあない、ワシが顧問として補佐したるわ。」

「げっ、弥勒さんあんた一体いつまでこの世界に居る気なんすか?」

「そんなもん、ワシの勝手やろ。」

「それはなんと心強い。凄すぎる…、でも弥勒様だとはバレない様にしなければ…。」

金田一は興奮して、また頭を搔きむしった。

「湯川、引き受けるやろ?」

弥勒に諭され、湯川は渋々承諾した。

「よっしゃ、ほなみんなで乾杯や~。」

弥勒と湯川はハイボールを一気に飲み干した。

『ぷは~、おかわり。』

2人は声を揃えて言った。

「長官、その宇宙防衛軍はどこに作るんや。」

「それについては、明日から日本州の人民をモンゴル平原から元の家に戻ってもらう計画ですが、その跡地を防衛軍の中心にしようと思ってます。」

「そやな、それでええと思うわ。」

「なに、弥勒さん勝手に決めてんすか。」

「場所なんてどうでもええやないか。」

「なら聞く必要ないじゃないですか。」

「お前はキョムニケーションって言葉知らんのかいな。」

「それ、コミュニケーション。」

「コムニケーション。」

「だから、コミュニケーション。」

「コニュミケーション。」

「ほんと弥勒さん、カタカナ苦手っすね。」

「うるさいわい!」

『ぼこっ。』

湯川は弥勒に頭をどつかれた。

「うっわ、仏さまが暴力振るった。きもっ。」

この2人に防衛軍を任せて大丈夫なんだろうか?金田一はマジで心配し頭を掻きむしった。


「だいたいお前らは、科学力と技術力に頼り過ぎやねん。」

「ほらな、ここから見えるビル群と卑弥呼はんの暮らしてたかやぶき屋根の村と比べたら、このビル群の方が進んでるようにみえるわいな。」

「せやけど、中におる人間は卑弥呼はんの時代とは全く違うわ。」

「湯川、今回UFO壊滅させた過去の英雄で科学力使ってた奴誰かおったか?みんな精神力と人間力のスーパーパワーや。」

「そこをはき違えて、宇宙防衛軍なんか作たって意味あらへん。」

弥勒は少し酒が回ってきたのか、饒舌になった。

金田一には、弥勒の言葉が大きく突き刺さった。

「私は、今の紛争や犯罪の無くなったこの世界が、人類史上最高に幸せな世界だと思っていた。でもそれは科学力と技術力の上に成り立った幻だったのかもしれない。

だから地球外の脅威に対して何の対抗手段も持ち得なかった。

宇宙防衛軍には科学力以上の本来の人間力が必要なのかもしれない。」

「さすがは、地球連邦の長官や、理解力が半端ないなあ。湯川もうちょっと見習えや。」

「科学力と技術力、その2つの色眼鏡外して、もう1回あのミサイル研究してみ。まだ6機残ってるんやろ?」

「弥勒様、まさか湯川君にワームホールを作り出せという事ですか!」

金田一は興奮して、また頭を搔きむしった。

「さすがは長官、飲み込み早いな。」

「ちょ、ちょっと待って下さい。俺にそんな事無理っすよ。あのミサイルは完全に俺達の知識を凌駕してますよ。UFOとの戦闘中ずっと俺研究してたんすから。」

湯川は焦って否定した。

「アホか、あの過去の伝説の英雄たちの戦いぶりずっとそばで見てたお前以外でけへん事や。」

「卑弥呼はんの事思い出して、もう1回ミサイル見直してみ。前とは違った物が見えてくる筈や。知らんけど。ひゃ~。」

「まあ、心配せんでええ。湯川一人に背負わせようとは思っとらへん。」

弥勒は身体をゆらゆらさせながら言った。

「弥勒さん、酔っぱらってきたみたいですね。」

弥勒さんと香音が居るから何とかなるかな…、アルが居てくれたらなぁ、とぼんやり考える湯川であった。


2,湯川はその後の記憶が定かでなく、気付くとベッドに寝ていた。

隣には弥勒が寝ていた。

「ふぁ~。」

弥勒も目覚めたようだった。

「ここはどこや?」

「多分、地球連邦の仮眠室だと思いますよ。」

「そうか、昨日はよう飲んだな。」

「何か、俺も途中から記憶がなくて…。」

「金田一はんはどうしたんや?」

「早朝から会議に出られています。」

タマヨが答えた。

「あの人もタフやな。まあしかし、凄い人や、さすが地球連邦の長官や。」

「俺が唯一尊敬する人ですからね。」

「湯川、1回お前の研究室に戻ろか。ちょっと話があんねん。」

「また説教ですか?もおいい加減にしてくださいよ。」

「アホか、ちゃうわい。もっと大事な話や。」

「わかりました。タマヨさん、長官によろしく伝えてください。また来ます。」

2人は外の転送ポッドへ向かった。


「香音、ただいま。」

「ヒデキ、宇宙防衛軍長官就任おめでとう。」

「バカ、まだ決まった訳じゃねえよ。」

「湯川、ひとっ風呂浴びて、飯食いながら話しよ。」

「そうですね、弥勒さん。酒抜かなきゃっすね。お先にどうぞ。」

「一緒に入ったらええやんけ。」

「やだ、エッチ。」

「アホか、誰がお前の裸見て興奮するかい!」

湯川は弥勒と一緒に風呂に入る事にした。

「やっぱ風呂は最高やの、湯川。」

「俺、結構風呂にはこだわりあって、広めに作ったんすよ。2人でもゆったり入れるでしょ。」

「湯川、2人で背中流しっこしよか?」

「えっ、そんな畏れ多い事できないっすよ。」

「ええねん、遠慮すな。」

先に弥勒が湯川の背中を流し、

「ほんまご苦労さんやったな。よう頑張ってくれた。」

「やめてくださいよ、俺また泣いちゃいますよ。」

「いや、あの時お前らが助けに来てくれんかったら、ワシは何のために降臨して来たか分からんとこやった。」

「弥勒さん、代わります。」

「おお。」

湯川は弥勒の細い背中を流しながら、色々思い出して涙をこぼした。

「弥勒さん、アルを生き返らせる事はできないんですか?あなた仏さまでしょ?」

「ワシが話たかったんもその事や。風呂上がって飯食いながら話しよ。」

「え、マジっすか!」

湯川は慌てて身体を洗うと、とっとと風呂を出て行った。

「ひゃ~、ほんま相変わらず、辛抱の足らん奴ちゃな。」

弥勒は一人呟やき、湯川をじらすようにわざとゆっくり風呂に浸かった。


3,弥勒が研究室に戻ると、湯川はすでに朝食を食べ終わりコーヒーを啜っていた。

「お前何食べたんや。」

「チーズバーガー2つとハッシュドポテト。」

「ワシも同じもん頼むわ。香音。チーズバーガーは1個でええわ。」

「で、弥勒さん、アルを生き返らせることはできるんですか!」

「まあ、そう慌てるな。ほんませわしないやっちゃなあ。」

弥勒は口からポテトを飛ばしながら言った。

湯川は大人しく、弥勒の言葉を待つ事にした。

「ワシは天上界から魂をこの世に降臨させることはできる。きっとアルの魂も天上界に存在してるのは間違いない。」

「でも、死んだ命を蘇らせるスキルはワシにはない。そのスキル天上界で持ってんのは、キリストはんと観世音菩薩はんだけや。しかもそのスキルは今は封印されとる。そんだけ特別なスキルやという事や。」

「そうなんですか…、でも不可能と言う訳じゃないんですね。」

湯川は希望があると感じたようだった。

「ワシは今回のアルのやった事は人類に取ってほんま特別な事やと思っとる。その封印を解いても助けてやりたいと思っとる。」

「え、じゃあ、早くキリスト様か観世音菩薩様を連れて来てくださいよ。」

湯川は跪いて弥勒にすがるように言った。

「わざわざ連れて来んでも目の前におるがな、ひゃ~。」

弥勒は湯川の肩を叩くと笑いながら言った。

「えっ?!」

「観世音菩薩…、観音菩薩…、カンノン…、カノン…。」

香音はホログラム映像から段々実体化し、1人の女性として湯川の目の前に現れた。

「どっひゃぁぁぁ~~~。」

湯川は仰向けに転がると、死んだゴキブリのように手足をピクピクさせた。そしてピクリとも動かなくなった。

「あかん、こいつまた気絶しよった。香音、水持って来て。」

弥勒は湯川に水を飲ませ、頬を叩いた。

「湯川、しっかりせえ。」

湯川は気を取り戻した。

「香音、お前…、いや貴方、ずっと東大の時から観世音菩薩だったの?いやだったんですか?」

「ええ、ヒデキが東大に研究室持った時、天上界から意識体としてヒデキのAIに乗り移ってたの。しかもそれを指示したのは弥勒さんなのよ。」

香音にばらされ弥勒はバツが悪そうだった。

「せやねん、4機目のUFO倒した後に香音から打ち明けられたんやけど、なんせ5億年前の事やろ、そんなん覚えてないちゅうねん。しかも香音はワシに自分の魂を天上界から持って来て自分に戻して、仏の姿に戻して欲しいと言いよった。」

「あの時の弥勒さんの驚きようったら、うふふ。」

「今思うと、すでにあの時香音はこうなる事を予想しとったんかなと思うねん。」

弥勒と香音の話は湯川の想像をはるかに超えていた。

「そういや、最初AIを起動したとき、『私の名は香音』って自分で言ったもんな。」

湯川はあまりの驚きでどうでもいい事を思い出してしまった。

「そんなんいらんねん。」

弥勒に怒られた。

「ほんで、どうするよ。香音、アル生き返らすか?」

「本当は使ってはいけない力だけど、私にとっても人類にとってもアルはかけがえのない存在だと思うの。」

「ほうか、まあ香音がそう言うんやったら、ほれこれ。」

弥勒は懐から白い光の塊を香音に差し出した。

「アルの魂ね、ありがとう弥勒さん。」

「アルはミサイルの爆発で身体も粉々に砕け散った。だからまずアルの心臓と脳を私が再生して、治療ポッドの中で骨や内臓、皮膚を再生するわ。全部終わるのに数時間はかかると思うの。」

「アルが生き返るのなら何時間でも待ちます。」

「ワシも待ってるで。」

2人は何時間でも、何日でも、何ヶ月でも待つつもりだった。

「あんた達バカなの?アルは無から生き返るのよ。どういうことか分かってんの?生まれたままの姿で生き返るって事よ。そんなに少女の裸見たいの?この変態ども!」

『げっ!』

弥勒と湯川は同時に声を発した。

「湯川、えらいこっちゃ。ワシらここには居れんわ。」

「弥勒さん外に出ましょう。」

「それやったら、ワシ日本観に行きたいわ。」

「じゃあ、外の転送ポッドから東京に行きましょう。」

「ワシらが救った日本やしな、」

「では、香音様、後はよろしくお願いします。」

湯川は土下座して香音に後を託した。

「あんたねえ、今まで私の事クソAIとかぼろくそ言ってたくせに、その態度の違いは一体何なの?気持ち悪いから今まで通りにして。」

「はい。」

とは言え、今まで通りって無理だよな。

まさかずっと一緒に居たのが観世音菩薩だったなんて…、湯川は思った。

「弥勒さん、行きますよ。」

「ほいほい。」


4,2人は転送ポッドを使って東京へ来た。

「少しずつ日本人も戻って来てるみたいですね。」

湯川は弥勒が喜ぶと思って言った。

「湯川、ワシが見たいのはこんな景色やあらへん。ほれ、あのスサノオとタケルに似てる像見に行ったやろ。あんな場所や。」

「ああ、なるほど。」

湯川はまた転送ポッドに戻ると、行き先を法隆寺に設定した。

「おお、せやせや、この感じや。」

弥勒は駆け出すと、金堂によじ登り顔をへばりつけていた。

そのまま、弥勒はジャンプし五重塔にへばりつき、また顔をくっつけていた。

「ああ、ええ匂いや。」

弥勒の様子は異常だったが、まだこの辺りまで移住は進んでいないようで、人の姿が無くてよかった、と湯川は思った。

「あ、そうだ!弥勒さん、卑弥呼さんとかスサノオさんとかみんなのお墓お参りに行きませんか?」

「湯川のくせに、ええこと言うやんけ。」

弥勒は泣きそうになった。

「じゃ、将門さんから行きますか。」

「湯川、なんか元気そうやな。」

「そら、アルが生き返るかもしれないと思うと嬉しくて。」

「そやな。」

湯川は法隆寺の転送ポッドから、東京の大手町へと転送した。

「将門の墓はこんな街中にあるんかいな?」

「お墓と行っても首塚ですけどね。」

「おお、これか…。」

弥勒は首塚の前で合掌した。

「そうか、将門はここへきて自分の魂成仏させたんやったな。今はとても穏やかな空気が漂っとる。」

湯川も手を合わせた。

「将門さん、ありがとう。どうぞ安らかに。」


「次は小角さんかな、小角さんのお墓ってどこにあるんだろう…。」

湯川はリュックからタブレットを取り出し調べ始めた。

「またえらいとこにあるな。」

湯川は大手町の転送ポッドから大阪の箕面へと向かった。

「弥勒さん、小角さんのお墓はあの山の上ですよ。結構距離ありますけどどうします?」

「湯川、ワシにつかまれ。」

弥勒は湯川をおぶると、金剛杵を空中に投げるとひょいとその上に乗ってあっという間に山頂に着いた。

「これ、小角の銅像かいな、そっくりやんけ、ひゃ~。」

弥勒は笑った。

銅像の周りには小角が使っていたのと同じ縄が巻いてあった。

「弥勒さん、これ見てください。」

湯川の指さした先の碑石にはこう記されていた。

『役行者は葛城からこの箕面山に拠点を移し、前鬼、後鬼を従え、全国を行脚し、多くの神社仏閣を開創し、呪力で悪鬼を退治し衆性を救済した。』

「ほお、あの小角がのお。」

「2人で手を合わせましょう。」

湯川と弥勒は合掌した。

「小角さん、ありがとう。どうぞ安らかに。」


「次は清明さんですね。」

湯川はまたタブレットで調べ始めた。

「清明さんのお墓は、京都の嵐山みたいですね。」

「湯川、どっちの方角や?」

湯川はタブレットと見比べながら、東の右方を指さした。

「湯川、またつかまっときや。」

弥勒は大きく振りかぶって金剛杵を東に向かって投げると、湯川をおぶってひょいと飛び乗った。

「ちょっと寒いけど、空気がうまいやろ。」

「え、このまま嵐山まで飛んで行くんすか?」

「せや、空気の有難みが分かるやろ。」

「なんか桃白白みたいっすね。」

「なんやねんそれ?」

「いや、なんでもないっす。」

ものの数分で弥勒と湯川は渡月橋に着いた。

「いや~気持ちよかったっす。」

湯川は背伸びしながら言った。

「で、どっちや?」

湯川はタブレットを見ながら、川沿いを歩き小道へと入って行った。

「こんな細い道にほんまにあるんかいな?」

「あ、ここですね。」

湯川は門倉稲荷神社に着いた。

「えらいまあ、地味な神社やな。ほんまこんなとこに清明の墓があるんかいな。」

「俺は清明さんらしいと思いますよ。」

湯川はこんな誰も来ないような所に眠ってる清明を少しうらやましく思った。

「墓は新しいな。立て直したんやろな。」

「弥勒さん、合掌しましょう。」

「おお。」

「清明さん、どうぞ安らかに眠ってください。

ありがとうございました。」


「次はスサノオさんんですね。」

湯川はタブレットを操作したが、須佐之男命の墓地についての情報はなかった。

「弥勒さん、スサノオさんの墓は分からないんですが、出雲に須佐神社という神社があります。」

「ほなそこ行ってみよか。」

弥勒と湯川は嵐山から出雲に転送した。


「その頃湯川の研究室では、アルの身体の再生が終わり、香音がアルに患者着を着せ、弥勒から預かったアルの魂を身体に込めた。

「意識が戻るまではもう少しかかりそうね。」

香音は一人呟いた。


弥勒と湯川は出雲に着いた。

「わあ、須佐神社ってあの山奥みたいっすよ。またさっきのあれお願いしますよ、弥勒さん。」

「任しとき。」

弥勒と湯川はまた金剛杵に乗り山を越えた。

「まあまあ立派な神社やな。」

「スサノオさんの御霊を祀ってるそうです。」

「湯川これ見てみ。」

そこにはこの神社の御利益が書いてあった。

【縁結び・良縁成就・夫婦円満・子孫繁栄・諸願成就・諸障退散・農耕・殖産・興業】

「ぷぷっ、あのスサノオさんとは真逆ですね。」

「そんだけ未来から戻ったスサノオが変わったって事やろ。」

「弥勒さん、あれ!天照社もありますよ。」

「そうか、戻ってから姉弟仲良くやってたんやな。」

「何か嬉しいっすね。」

2人は拝殿前で手を合わした。

「スサノオさん、本当にありがとうございました。どうぞ安らかに。」


「次はタケルさんですね。」

湯川はまたタブレットで調べ始めた。

「タケルさんは古墳ですね。能褒野王塚古墳のぼのおうつかこふん、三重県亀山市です。」

2人は山を下りると亀山市田村町へと転送ポッドを使って移動した。

「おお、これか、天皇陵にも引けとらんくらい立派な前方後円墳やないか。」

「弥勒さん、この場所って、タケルさんが本来の時代に大和に戻る途中力尽きて亡くなった場所ですよ。」

湯川はタブレットで確認しながら驚いたように言った。

「きっとタケルがこの場所に自分の墓立てるよう帝に願い出たんやろう。

それほどここはあいつにとって思い入れの強い場所やったんや。

それをタケルに教えたんお前やで、湯川。」

「未来の俺達に向けて、タケルさんのメッセージだったのかも知れないですね。」

湯川の頬を涙がつたった。

2人は能褒野王塚古墳の拝所前で合掌した。

「タケルさんの熱い思いを受け取りました。本当にありがとうございました。どうぞ安らかに。」


その頃湯川の研究室ではアルが意識を取り戻していた。

「え、香音ちゃん。」

「アル、目が覚めた?」

アルは何も言わず、香音に抱きついた。

そして「わぁぁぁ~~、うわぁ~」と号泣した。

「ぼく…、僕…、生き返ったの?」

「そうよ。」

香音はアルの頭を撫ぜながら優しく答えた。

「僕、夢の中でみんなの声が聞こえてた。弥勒さんがアルを生き返らせようって言ってくれた事、それは天上界でも禁断の力だって事、その力を持つのは観世音菩薩様だって事、そして…」

「香音ちゃんが観世音菩薩だったって事。」

「そう、それが実現したのよ。」

香音はまた優しく答えた。

「僕、最後のミサイル破壊するのは僕の責任であり、必然だと思ってた。

でも、香音ちゃんにとってはずっとずっと前から、こうなる事が必然だったのね。」

「そうよ、それは弥勒さんがずっと前から予想してたことなの。本人は完全に忘れちゃってるけどね。」

香音は笑って答えた。

「私も最初はなぜヒデキのAIにならないといけないのか、全く分からなかったわ。

でも、アルが私に色んな事を頼んできた頃から、アルが自分の命を懸けてる事に気付いた。

そして、アルを生き返らせるという禁断の力を使う事を決めていたの。」

「ありがとう、香音ちゃん。」

アルは涙をこぼしながら言葉を続けた。

「卑弥呼姉ちゃんや他のみんなは元の時代に戻ちゃったの?」

「ええ、そうよ。ちゃんとアルの手紙はみんなに渡したわ。みんな大事そうに持って帰ったわ。」

香音はアルの目をしっかり見ながらそう言った。

「ありがとう。」

「もう身体の方は大丈夫だから、着替えてらっしゃい。」

「ヒデキとおっちゃんはどっか行ったの?」

「最初は観光目的で日本に行ったけど、今は卑弥呼さんやスサノオさんみんなのお墓参りをしてるわ。」

「へえ、あの2人にしてはいい事してるじゃん。僕も行きたかったなぁ~。」

「いつでも行けるわよ。」

「じゃ、その時は香音ちゃん一緒に行ってね。」

「もちろんよ。」

アルは着替えに自分の部屋に戻った。


「へっくしょい、あほんだらぼけ。」

「なんちゅうくしゃみですか、弥勒さん。」

「誰か噂しとるな。」

「最後は卑弥呼さんですね。」

湯川は弥勒を無視して、タブレットでまた調べ始めた。

「ここみたいですね、徳島県国府町、阿波國一宮天石門別八倉比賣神社。」

「卑弥呼さんの墓所については諸説あるみたいですが、卑弥呼さんと天照大御神両方の墓があるとされてるのはこの神社です。」

「よっしゃ、そこ行ってみよ。」

2人は転送ポッドで八倉比賣神社へ向かった。

「ほお、これもまた立派な神社やな。」

「弥勒さん、これ。」

湯川が見つけた先には、五角形の祭壇の上に同じく五角形の祠が建っていた。

その一面に天照大御神との名が記されていた。

「すう~、はあ~。」

弥勒が深呼吸を始めた。

「卑弥呼はんの匂いがするわ。」

湯川もやってみた。

「すう~、はあ~。」

「あ,ほんとだ。卑弥呼さんの匂いだ。スゲ~いい匂い。」

「湯川にも分かるか、お前も人間力、精神力上がったんやな。その能力を大事にせえ。」

「弥勒さん、なんか俺ちょっとだけ分かったような気がします。

人の本当のあり方というか、自分の役割にとって何が大事なのかとか…」

「何言うとんねん、今更。」

弥勒は笑顔で言った。

「卑弥呼さん、本当にありがとうございました。卑弥呼さんからは沢山の事を教わりました。それを今後地球のために使って行こうと思います。どうぞ安らかにお眠りください。感謝申し上げます。」

2人は深々と合掌した。

「なんや、よかったの墓参り来て。」

「はい、俺も理想の防衛軍作ります。」

「2人共戻って来て。アルが生き返ったわ。」

香音からの通信だった。

「まあ、ええタイミングやのう。」

「転送お願いします。香音様。」

「だから、様はやめろって。バカヒデキ。」

弥勒と湯川の姿は消えた。


5,弥勒と湯川は研究室に戻った。

目の前には、あの時と全然変わらないアルの姿があった。

「アルぅ…」

「アルぅ…」

「ヒデキ…、弥勒のおっちゃん…」

湯川は涙を溜めながら、両手を広げアルを抱きしめようアルに向かって走って行った。

が、アルは湯川の両手をかわすと、後ろに回り込み、思いっきり湯川のケツを蹴り上げた。

「このバカ、どスケベ!キスでもしようと思ったか!」

「痛っ!何すんだよ!」

湯川はケツを抱えてへたり込んだ。

アルに再会できた嬉しさの涙を、ケツの痛さの涙が覆いかぶさった。

「ワシやったらええやろ。おじいちゃんと孫みたいなもんや。」

弥勒も両手を広げて、口を尖らせて、アルを抱きしめようとした。

がまた、アルは弥勒の両手をかわすと、後ろに回り込み、思いっきり弥勒のケツを蹴り上がた。

「このクソじじぃ、ど変態!」

「痛っ!なにすんねん、このあほんだらボケ!」

弥勒もケツを抱えへたり込んだ。

「きゃはは、久しぶりで超気持ちいいぃ~。」

アルはきゃっきゃっと喜んでいた。

「お前、誰のおかげで生き返れたと思っとんねん。」

弥勒はケツを押さえながら言った。

「うん!香音ちゃんのおかげ!」

アルは元気いっぱいで答えた。

「生まれ変わってもお前は変わらんのう。」

「も1回死んでこい。」

弥勒の陰から湯川の声がした。

「クソヒデキ~、お前こそ殺してやる。」

アルの目は狂気に満ちていた。

「ひぇぇぇ~~。」

湯川は逃げ出した。

その様子を見て、香音はケタケタ笑っていた。


「ねえ、弥勒のおっちゃん、みんなに会いに行きたい。みんな僕の事死んだと思ってるんでしょう?」

アルの願いに弥勒は考え込んだ。

「う~ん、それはあかん。」

「ケチ。」

「ケチって言うとる訳やない。せっかく安定した時間軸に変な影響与えたないだけや。」

「じゃ、見に行くだけでもダメ?」

弥勒は腕を組んで考え込んだ。

「アルが絶対船から降りん、という条件が飲めるんやったら考えてもええけど…。」

「飲む飲む、絶対船から降りないから、ね、お願いおっちゃん。」

「しゃあないな。どう思う?香音。」

「あの船なら誰からも見えないからいいんじゃない。ただ、卑弥呼さんは気付くかもしれないけどね。」

香音の読みは正しかった。

「そやねん、ワシもそこが心配やねん。」

「そんなの簡単じゃん、卑弥呼さんだけ会いに行かなければいいだけじゃん。

部屋の奥の方から湯川の声が聞こえた。

「バカじゃないの、卑弥呼姉ちゃんに会うのが一番の目的なのに。」

「わがままばっかり言うんじゃねえ。」

湯川は奥から叫んだ。

「あいつ殴っていい?香音ちゃん。」

アルは拳を握りしめた。

「もう、せっかく帰ってこれたのに喧嘩ばっかり、いい加減にしなさい。」

香音に怒られ、アルはしょぼんとした。

「まあ、見るだけという事で、また過去に戻るか?」

弥勒が認めた。

「え~、またあの次元を超える苦痛に耐えなきゃいけないんですか?」

湯川がもう大丈夫と思ったのか、出て来た。

「あれやったら、もう香音に指示して直しといたわ。なんで1次元超えるだけであんな船に負担かかるんや。あほちゃうか。」

「いいっ、弥勒さんそんな事も出来るんですか?」

「ワシがやった訳やない、香音に指示しただけや。」

「ええ、弥勒さんに言われてみれば簡単な事だったわ。」

香音は湯川を見て言った。

「ちょ、ちょっと待って、それが可能ならワームホールの仕組みも、弥勒さんわかるんじゃないんですか?」

湯川は驚いて尋ねた。

「アホ、それはお前の役目や。まあ、ワシ顧問やから多少の助言くらいはしたってもええけどな。ひゃ~。」

弥勒は完全に上から目線で湯川に言った。

「え、何、それ何の話?」

アルは弥勒の顧問という言葉に引っかかった。

「金田一長官から宇宙防衛軍を作るよう頼まれたんだ。今回の件から、エスポワール号をベースに艦隊を作って地球外知的生命体からの脅威に備えるようって、でそれにはあのミサイルのワームホールの解明が必須だと。」

アルの質問に湯川が答えた。

「ほんで湯川はその防衛省の長官を任されたんや。ワシは最高顧問や。」

「え、ちょっと待って。今の金田一ちゃんはどっちの金田一ちゃんなの?」

アルが尋ねた。

「金田一長官だけは2つの世界の記憶が混在している唯一の存在だ。

その他の人類は全て、過去の英雄達の存在を知らない。

俺とアル2人でUFOを破壊したと思っている。

アルが一度死んだ事を知ってるのも俺達と長官だけだ。」

湯川の話はアルにとっては想像外だった。

「そうなんだ、だから弥勒のおっちゃんは僕がみんなに会いに行くことを反対したんだ。」

「そうなんや、アル。考えなおしたか?」

弥勒の言葉にアルは首を振った。

「ううん、全然。」

全員ずっこけた。

「卑弥呼姉ちゃんの事とか秘密にしたのは、金田一ちゃんが決めた事なの?」

アルが不思議そうに尋ねた。

「うん、長官はずっと戦闘の様子を見ていて、あまりの凄さに公開を控えたんだ。

弥勒さんもその方が時間軸に与える影響も少ないだろうって賛成してくれたし。」

湯川が答えた。

「長官は、湯川とアルをヒーローにしといた方が、お前らが防衛軍創成しやすいと考えたんやろ。」

弥勒もフォローした。

「じゃあ、湯川が長官で、僕が副長官って事?」

アルが訊いた。

「まだ正式に発表された訳じゃないが、長官はまだお前が生き返った事は知らねえよ。」

湯川の答えはアルには気に入らないものだった。

「僕が生き返った事を金田一ちゃんが知ったら、僕が長官で湯川を副長官にしてあげてもいいわ。」

アルはわざと湯川を怒らそうとして言った。

「それもありかもな…、俺なんかよりお前の方が長官に向いてるかもな。」

湯川の答えは意外だった。

「やだ、冗談よ。」

アルは否定したが、湯川が何か悩んでるんじゃないかと気になった。


6、4人はエスポワール号に乗り込むとまた時間軸へと移動した。

「ほんとに船揺れませんでしたね。大気圏突破の時も、次元突破の時も。」

湯川は驚いて弥勒に尋ねた。

「船は揺れてた。船の揺れに同調してお前らを揺らしただけや。」

「ほえ~、そっかみんなが一緒に揺れれば、誰も揺れを感じないんだ。」

湯川の頭の中で何かが弾けた。

「何言うとんねん、お前。ひゃ~。」

弥勒は笑ったが、何かを悟ったようだった。

「で、アル誰から見に行くの?」

香音がアルに尋ねた。

「ええと、小角ちゃん。」

「わかったわ。どの時代に行くかは私に任せてね。」

香音は小角が元の時代に戻った約10年後の吉野山に船を向けた。

そこには相変わらず人食い鬼を捕まえては吊るしてる小角の姿があった。

以前と違ったのは、鬼を山奥深く吊るさず、森が開けた日の当たる気に吊るしている事だった。

日が当たる事で鬼達は朝を迎えると、太陽の紫外線で溶けていった。

「小角ちゃん、昔とは違って鬼を消滅させてるみたいね。香音ちゃん、外の音拾えるかしら?」

香音はスクリーンパネルを操作した。

小角の声がスピーカーを通して聞こえてきた。

「オラがいくらおにをつかまえてもきりがない。おにのかしらをやっつけないとだめだ。だが、かしらはかんぜんににおいをけしている。オラにはみつけられない。」

「小角さんは、各地に鬼から民衆を守るための神社や仏閣を開かれました。それでも鬼の数は減らなかった。生涯鬼のかしらを見つける事は出来なかったわ。でも小角さんのおかげで多くの民衆は救われたわ。」

香音が時間軸から見た小角の活躍を説明した。

「小角ちゃん、ありがとう。僕の遺言を守ってくれてたのね。」

アルは小角に向けて手を合わせて目を閉じ、一筋の涙を流した。


しばらくその様子を見て、弥勒が言った。

「そろそろ次行こか。次は誰やアル。」

「次は将門ちゃん。」

香音は将門が生き延びて関東へ帰った10年後くらいに船を向けた。

スクリーンには将門の首塚のあった場所が映し出された。

そこには将門自身が建てた墓標があった。

「あれ、もう将門ちゃん死んじゃったの?」

「ちゃうちゃう、将門は自分が生きてる内に墓標を建てて、東京の鬼門を抑えとるんや。香音、将門の姿探してみ。」

香音は将門の生体反応を探して、筑波方面に船を向けた。

そこには家臣に荷車を引かせている将門の姿があった。

荷車には地蔵が乗せてあり、将門は1対ずつ念を込めながら一定の間隔で配置していた。

「香音、将門が置いた地蔵を地図にできるか?」

弥勒が何か確かめようとしていた。

「お安い御用よ。」

スクリーンに俯瞰で見た関東の地図と将門の置いた地蔵の場所が映し出された。

弥勒はその地図を見ながら腕組みして言った。

「そうかなるほど。」

「何か分かったんですか?」

湯川が弥勒に訊いた。

「この大地には龍脈言うて気が流れるルートがあるんや。将門は富士から流れる龍脈を自分の墓標に集めて、それを地蔵を使って関東中に散らしとるんや。

それで、この地域を悪い気から守っとる。」

「この時代関東にだけは、人食い鬼は現れていないわ。この気のおかげね。」

香音がパネルを見ながら言った。

「将門ちゃんも戦をせずに、民衆を救ってくれてたんだね。」

アルがしみじみと言った。

「未来の東京の繁栄はやっぱり将門さんのおかげだったんだな。」

湯川もしみじみと言った。

「どや、アル満足したか?」

「うん。将門ちゃんありがとう。」


「ほな次はどうする?」

「次は清明ちゃん。」

香音は清明が元の時代に戻った5年後の、奈良県安倍文殊院に船を向けた。

そこでは清明を主に護摩法要が境内で取り行われていた。

「香音ちゃん、また外の音拾える。」

清明は呪文を唱えながら火の中に護摩木を投げ込んでいた。

ひと通り呪文を唱え終え、

「仏よ、鬼のかしらの名と居場所を我に教えよ。」

と言い、1本の縄を火の中に投げ入れた。

「あ、あれは小角ちゃんが鬼を縛ってた縄だよ。」

アルが言った。

縄が燃える煙から、清明は答えを導き出した。

「鬼のかしらは酒吞童子か、居場所は丹波の国大江山だ。」

清明は立ち上がると、九字を切り、朱雀と青龍を召喚した。

「行け、朱雀、青龍、鬼のかしらの首を刎ねよ。」

朱雀と青龍は飛び去った。

「香音ちゃん、追いかけれる?」

「あいよ。」

朱雀と青龍は、丹波とは違う方向、東へと飛んで行った。

「あ、将門ちゃんだ。」

アルの予想通り、朱雀と青龍は将門の墓の上で止まった。

そして朱雀と青龍は一つにまとまり、将門の念を受け大きな火球へと姿を変え、西へと飛び去った。

火球は大江山の大きな屋敷前で止まり、巨大な円盤に姿を変え、猛烈な勢いで回転しだした。

「将門ちゃんの火球円盤だあ。」

アルが手を叩いて喜んだ。

「しかし、でかいな。」

湯川も驚いていた。

円盤は屋敷ごと真っ二つに切り裂いた。

酒吞童子にもあまりの一瞬の出来事で、かわす事もできず、首を刎ねられた。

円盤は火球へと戻り、そして朱雀と青龍に姿を変え、清明の元へと戻った。

「小角殿、将門殿、2人の志は私の代でやっと遂げる事ができた。感謝いたします。」

「すご~~い、3人の力合わせて人食い鬼のかしら倒しちゃったよ。」

アルは深々とお辞儀をした。

「ありがとう、清明ちゃん。」


「次は誰にするの?アル。」

「タケルちゃん。」

この時アルは気付いた。

香音がわざと自分に感動させるような瞬間を狙って時間移動してくれてる事に。

こりゃ、次のタケルちゃんも期待できるな、とアルは1人ほくそ笑んだ。

香音は日本武尊が戻った1年後の倭に船をつけた。

大和盆地の広大な田園を多くの民衆が鍬を持ち耕していた。

その中に混じって一緒に田んぼを耕す日本武尊の姿があった。

「香音ちゃん、タケルちゃんの声を拾える?で、船を近くまで寄せれる?」

「あいよ。」

香音は船を地上近くまで近づけた。

勿論ステルス機能のおかげで民衆からは何も見えてなかった。

「あれって、もしかして…。」

スクリーンに映し出されたのは、日本武尊と一緒に鍬を振るう、年老いた男女の姿であった。

「やっぱり、スサノオちゃんと卑弥呼姉ちゃんだ!」

アルはスクリーンの前を離れ、扉の方へ走った。

「こら!あかん、姿見せるな言うとるやろが!」

弥勒の制止も聞かずアルはコックピットの扉を開けた。

「おお~い、タケルちゃん、スサノオちゃん、卑弥呼姉ちゃん。」

アルは大声で叫びながら、両手を大きく振った。

「父ちゃん、あれアルじゃねえか?」

日本武尊と須佐之男命には天に穴が開いて、そこからアルが手を振ってるように見えた。

「アル、あの世から挨拶に来たのか…。」

須佐之男命はそう言ったが、卑弥呼だけはアルの意識を読み、アルが生き返った事を理解した。

アルの頭に卑弥呼の声が響いた。

「アル…、生き返れたのね。」

「うん、香音ちゃんと弥勒のおっちゃんが生き返らせてくれた。」

「香音にそんな力があったの?」

「香音ちゃんは観世音菩薩の生まれ変わりだったの。」

「そう、香音はずっと最初からアルにもしもの事が会った時には、その力を使うつもりだったのね。

いろいろ納得できたわ。」

「会いたかった。卑弥呼姉ちゃんに。」

「わらわも会いたかった。こんな形でも会えて本当によかった。」

「俺も会いたかったっす。卑弥呼しゃん。」

アルの股下から湯川が顔を覗かせ手を振っていた。

「どっから覗いてんのよ、このばかヒデキ。」

アルは思いっきり両膝を閉じた。アルの両膝が湯川の両頬を捉え、湯川は昏倒した。

卑弥呼は須佐之男と日本武尊にアルが生き返った事を説明した。

「そうか、よかったなあ。」

日本武尊はそう言うとアルに向かって大きく両手を振った。

須佐之男と卑弥呼も大きく両手を振った。

アルも大きく両手を振り返した。

「ありがとう、タケルちゃん、スサノオちゃん、卑弥呼ねえちゃん。本当にありがとう。」

「もうこのぐらいでええやろ。アル。」

弥勒が扉を閉めた。

「うん、僕の我まま聞いてくれてありがとう。」

アルは目に涙をいっぱい溜め素直に応じた。

「卑弥呼もスサノオも元気そうやったけど、何歳ぐらいになるんやろ?」

弥勒は誰にともなく訊いた。

「多分300歳は超えてるかな…。」

香音が答えた。

突然、湯川が鼻血を流しながら立ち上がって「歳の差300歳でも俺は結婚できると思う。」と言った。

『ぶぅぅぅぅ。』

全員が噴き出した。

「じゃあ、元の時代に戻るわよ。」

香音が笑いを堪えながら言った。


7,4人は湯川の研究室に戻った。

「なんやもう、丸1日くらい寝てない気がするわ。早よ帰って寝よ。」

「弥勒のおっちゃんって家あるの?」

「ああ、長官に地球連邦本部近くのマンション手配してもろた。」

「ちゃっかりしてるわね。僕も自分の研究室に戻ろっと。」

アルがそう言って研究室を出ようとした時、湯川が声をかけた。

「みんなに相談があるんだけど、明日、いや明日は休みにして、明後日またここへ来てくれないかな?」

「おお、ええで。」

「うん、わかった。」

弥勒とアルはそう言いながら出て行った。


研究室に一人になった湯川に香音が声をかけてきた。

「ヒデキが何を考えてるかはだいたい分かってるわ。でも私を伝説にはしないで。」

「え、どういう意味ですか?」

「だから、その敬語はやめて、普通に話してちょうだい。」

「うん。」

湯川は渋々頷いた。

「あんたとアルが会うより先に私はアルと会ってるの。あんたの居場所教えたのも私だし、あんたより先にアルの次元転移装置の事も聞いていた。

ヒデキの理論に従って船を作ったのも私。

過去の英雄の人選したのも、ヒデキとアルと私よ。」

「そうだよ、香音は一番の功労者だと思ってるよ。だからこそ伝説の一人なんじゃないのか。しかもその正体は観世音菩薩様だったなんて伝説中の伝説じゃないか。」

「あんた、ほんとバカよね。私はあの伝説チーム側じゃなく、ヒデキとアル側なのよ。

アルを生き返らせるために弥勒さんに頼んで観世音菩薩の魂を入れてもらったけど、やっぱり、この魂は天上界へ返すつもり。

そして元のAIに戻って、これからもヒデキとアルを支えて行くと決めたの。

防衛軍創設に私の力は欠かせないでしょう?

宇宙には私達天上界に居た仏にも分からない事がいっぱいある。

今後どんな予想だにしない事が起こっても地球を守りましょ。」

「うぅぅっっ…」

湯川はぼろぼろ涙をこぼしながらへたり込んだ。

「香音、そこまで俺達の事を思ってくれてたんだ。」

香音はホログラムの状態から、だんだん実体化して、湯川を立たせると頬に手を当て、唇を湯川の唇に重ねた。

「なんて軟らかい慈愛に溢れた唇なんだ。それにこのいい匂い。」

湯川は幸せに包まれた。

「これが最後の実体化よ。明日からはまたホログラムに戻るわ。」

湯川は余りの幸福感で、後ろにゆっくり倒れ、「この歳でモテ期来た。」

と訳の分からない事を言いながら、ピクリとも動かなくなった。

「また気絶したの?ほんとあんたってポンコツね。」

香音は笑いながら姿を消した。

湯川もそのまま眠ってしまった。


翌日朝、金田一長官からの通信で、湯川は目覚めた。

ホログラム映像に映し出された金田一長官は緊張の面持ちだった。

「湯川君、顔色があまりよくないが大丈夫かね?」

「すみません、色々あったもんで。」

「実は宇宙防衛軍の事なんだが、軍に入りたい人間を内々で公募したんだが、とんでもない希望者が殺到して、このままだと地球連邦の全職員が防衛軍に入りそうな勢いなんだよ。」

金田一は苦笑した。

「そこで、いち早く防衛軍の創設を公表しようと思うんだ。1週間後に全世界に向け会見を開くことに決定した。湯川君にも防衛省長官としてスピーチをお願いしたい。」

湯川はこれは千載一遇のチャンスだと思った。

「長官、スピーチの内容は俺に任せてもらえませんか?」

「う~~ん。」

金田一は頭を掻きむしりながらしばらく考えて、言葉を続けた。

「わかった、全て湯川君に任せよう。舞台設定など手伝える事があれば、何でも言ってくれたまえ。」

「ありがとうございます。長官。」

湯川は金田一長官は全て悟ってくれたと思い、深々と礼をした。

「もう一つお願いがあります。長官。」

「なんだね?」

「アルを防衛省副長官にしてください。」

「アル君を?それは名誉総裁みたいな意味かね?」

「いや、違うんです。アルは生き返ったんです。」

湯川は、香音が観世音菩薩の現世での生まれ変わりだった事、弥勒と観音の力でアルが生き返った事、観世音菩薩が魂を天上界に戻しAIに戻った事を金田一に説明した。

「信じられない、本当なのか!」

金田一は先程にも増して、頭を搔きむしりまくった。

「全く君には驚かせっぱなしだ。」

「では、宇宙防衛省長官は君、副長官はアル君、最高顧問が弥勒さん、AI統括が香音君でいいかな?」

「はい、ありがとうございます。長官。」

「アルは自分が長官だ~、なんて言ってますし、弥勒さんはあまのじゃくだからいつ天上界へ帰るって言いだすかわかりませんけどね。」

湯川は苦笑した。

「じゃあ、1週間後よろしく頼む。」

そう言い残して、長官は通信を切った。


翌日、湯川の研究室に弥勒がやって来た。

湯川はアルにすぐに来るよう連絡した。

アルはすぐにやって来て、香音も現れ、4人が揃った。

湯川はうっとりした目で香音を見つめたまま固まっていた。

「おい、湯川。お前が話あるちゅうから集まったのに、何ぼーっとしとんねん。」

「そうよ、僕だってワームホールの研究で忙しいだからね・」

弥勒とアルにそう言われ湯川は我に返った。

「あ、ごめん。」

「実は昨日、金田一長官から連絡があって、宇宙防衛軍創設のための会見を開く事になりました。俺にもスピーチをしろって。」

その後湯川が語り出した話は、驚くべきものだったが、3人はあらかじめ予想してたかのように頷いた。

「ワシはええで。」

「僕も。」

「勿論、私もよ。」

3人は同意してくれた。

「よっしゃ、どっか~~んと盛大な花火打ち上げたろやないか!」

「と言うても、ほんまに花火打ち上げる訳ちゃうで。」

「そんなんいらんねん、おっちゃん。」

「ひゃ~。アル、お前が突っ込むな。」

弥勒は受けまくっていた。

「長官から、会見場の舞台設計を任されてるんだけどどうする?ヒデキ。」

香音が訊いてきた。

「エスポワール号を会見場に設置するのは勿論だけど、俺は舞台の中心に卑弥呼さんの神棚と同じものを作って、祀りたいと思ってるんだ。」

「うん、いい案ね。僕は賛成。」

「ほな、1週間かけて完璧な会見にしよやないか。」

弥勒の一言で、ミーティングは散会となり、それぞれ会見への熱き思いを胸に秘めながら帰って行った。

湯川と香音は、舞台設定やホログラム映像の準備に1週間を費やした。

アルと弥勒は、ワームホールの分析、研究に1週間を費やした。

あっという間に、会見の日を迎えた。


8,地球連邦前の大広場には会見場が設置され世界中からのメディア関係者席と地球連邦職員の席が設置されていた。

「へえ~、思てたよりシンプルでええやんけ。」

会見場の舞台は半円形で中央に卑弥呼の神棚を模した大きな祭壇を配置、右側にはシルバーに輝くエスポワール号が駐機され、左側には地球連邦の旗と長官や湯川、アル、弥勒の座る椅子とテーブルだけが置かれた、全世界に向けての会見にしては質素なものだった。

「香音、ホログラム映像を映し出してみてくれ。」

湯川は香音に命じた。

香音は、テーブル横の操作パネルをタッチした。

会見場のバックに巨大なホログラムスクリーンが映し出された。

そこに映し出されたのは、白目を剥いて、口を開けたアルの巨大な寝顔だった。

「アッハッハッハ。」

湯川はホログラムを指さし腹を抱えて笑った。

「クソヒデキ~~、覚悟ぉ~。」

湯川は全力で逃げ出した。

アルは全力で追いかけた。

「はぁ、はぁ~。」

アルは肩で呼吸をし、アップルホンをはずした。

「あんたもはずしなさい。」

「はぁ、はぁ~。」

湯川も肩で息をしながら、アップルホンをはずした。

「あんた、まさか僕が富士山吹っ飛ばしたのも映像に組み入れたんじゃないでしょうね?」

アルは湯川を睨みつけながら言った。

「ああ、勿論入れてやったよ。ばっちしそのままな。」

湯川はアルにあっかんべーをしながら言った。

「ころす!」

アルは鬼のような形相で、湯川に迫ってきた。

「うそうそ、嘘に決まってんじゃん。なに本気になってんだよ。」

「あんた誰にも言ってないでしょうね?」

「うん、うん、言ってない。」

「ならいいわ。戻るわよ。」

「はい。」

この変な上下関係はずっと続くんだろうか、湯川は心配になった。

「全く、こんな奴が防衛軍長官なんて、ほんと情けないわ。」

アルは吐き捨てるように言った。


2人が戻るとテーブルの上に3着の服が置かれてあった。

「防衛軍のユニフォームよ。みんな着替えて来て。」

香音がデザインした服のようだった。

「え~、この3人で同じ格好するの、やだ~きも~い。」

「アル、気持ちは分かるけど、着替えてから言ってくれる?」

香音に諭され、アルは自宅へ着替えに戻った。

実際着替えてみると、カッコいいとアルは思った。

シルバーのタートルネックに、赤茶色の上着は襟なしで右の肩元で留めるようになっていて、留め具が階級章になっていた。

左胸にはカノンがデザインしたであろう、清明の五芒星とⅦを組み合わせたバッチがついていた。

下は黒のスポーツタイツ風のパンツだった。

着替えを済まし会見場に帰って来た3人はそれぞれの姿を見て、

「僕、かっこいいよね。」

「いや、俺の方がカッコいい。」

「ワシが一番似合とる。」

3人はそれぞれ自画自賛していた。

「さすが香音ちゃんセンス抜群ね。」

「ふふ、スタートレックのパクリだけどね。上着の赤茶色は海水が消えた大地の色、パンツの黒はあのUFOの色、シルバーはエスポワール号の色よ。」

香音がデザインの説明をした。

「うわっ、なんか暗~ぁ、呪われた制服か。」

「お前は何も分かっとらんの、海が消えたあの大地の色、UFOの色、それをこれからもずっと心に刻み込んでおかなあかんという、香音の気持ちがわからんか?」

弥勒の言う通りだと湯川も思った。

「こんな奴が長官で大丈夫なの?弥勒のおっちゃん。」

「その為にワシとアルと香音がおるんやないか。」

「そだね。」

「ぎょえ。」

湯川は自分の存在感がどんどん薄れていると感じた。

もうこいつらの前ではもう本音を言わない様にしようと心に決めた。


9,会見開始30分前すでに会見会場は地球連邦職員、メディア関係者でいっぱいになっていた。

さらに、会見を生で見ようとする一般客がぞくぞくと押しかけていた。

この会見の様子は全世界に配信され、あの巨大UFOを壊滅させた湯川の話を今か今かと待ち望んでいた。

そこへ、金田一長官が姿を現した。

「さすがに今日は正装ですね、長官。」

湯川が声をかけた。

「いや~、こんな格好、長官に任命された時以来2年ぶりだよ。」

金田一は苦笑した。

「湯川君達のその恰好はもしかして防衛軍の制服なのか?なかなかいいじゃないか。」

「はい、香音がデザインしてくれました。上着は前の歴史で干上がった海の大地の色、パンツはあのUFOの色、あの悲惨な過去を忘れないよう心に刻む色です。」

湯川は胸を張って答えたが、後ろで聞いていたアルにケツを蹴られた。

「痛ぇ、何すんだよ。」

「バカが、何しれっと言い切ってんだよ。おめえは。」

アルが怒っていた。

「湯川君、この神殿は一体なんだね?」

金田一は神殿の前に立って言った。

「これは卑弥呼さんが使ってた神棚を大きく模したものです。」

湯川の答えを聞いて、金田一は考え込んだ。

「君の決意は変わらないようだな。」

「はい、申し訳ありません。長官。」

「湯川、スピーチの原稿は用意してあるんかいな?」

弥勒が訊いてきた。

「いえ、原稿に頼らず自分の思いと言葉で語ろうと思ってます。」

「ワシにも一言喋らせてくれや。」

「絶対ダメです。弥勒さんはずっと黙っていてください。」

「なんでやねん。」

「話が余計ややこしくなります。」

「そうね、おっちゃんは喋らない方がいいわね。僕はそういうの苦手だから黙ってるわ。」

アルが珍しく湯川に同意した。


そして全世界が注目する会見の時を迎えた。

最初は金田一長官の演説から始まった。

「本日はお集まりいただきありがとうございます。またこの様子をライブでご覧の皆さまご視聴ありがとうございます。

皆さんご承知の通り、人類がこの地球に生を受けた長い歴史の中で、初めて我々人類は地球外知性生命体より侵略の危機を迎えました。

私は今の地球、紛争もなく、貧困もなく、差別もなく、環境破壊もなく、犯罪もないこの状態が地球にとって最良の状態だと確信しておりました。

しかしその平和は一瞬にして砕かれそうになりました。

軍隊も兵器も持たない我々にとって、日本に現れた7機のUFOに対するすべを私達は何ひとつ持ち得ませんでした。

そんな中、地球連邦はUFO対策の責任者として、ここに居る湯川教授とアインシュタイン教授を任命し、2人は見事UFOの破壊を成し遂げてくれました。

これを教訓に、地球連邦は宇宙防衛軍の創設を決めました。

今回の件で地球以外にも知的生命体が宇宙には存在する事、決してそれは友好関係を持つ存在であるとは限らない事が証明されました。

そんな存在に対し有効な防衛手段を持つ防衛軍が必要だと決意しました。

創設には引き続き湯川君とアインシュタイン君にお任せし、創設後は湯川君を防衛軍長官にアインシュタイン君を副長官に任命する事に決定いたしました。

この後湯川君に決意を語ってもらおうと思う。湯川君よろしく頼む。」

湯川とアルは立ち上がると観客に向かい一礼をした。

「この度、宇宙防衛軍長官の任を拝命した湯川秀紀と申します。

彼女はアルフォンジーヌ・アインシュタイン副長官、共にハーバード大学で教鞭を取っております。

彼女が何故この若さで副長官かというと、皆さんご承知の通り彼女は人類最高の物理学者と言われる、アルベルト・アインシュタイン博士の末裔であり、しかもアインシュタイン博士の生まれ変わりでもあります。

彼女は前世のアインシュタイン博士の記憶を持ったままこの世に生まれてきました。」

会場がざわめいた。「生まれ変わり?」「そんな事があり得るのか?」

「その証拠があのシルバーに輝くエスポワール号です。」

湯川は手でエスポワール号を刺した。

「あの船には、アルが前世の記憶を元に開発した次元転移装置が組み込まれています。

つまりわかりやすく言うとタイムマシンです。」

メディア関係者がタブレットで、エスポワール号の写真を撮りだした。

「ここで一つ皆さんの間違いを正さなくてはいけません。

俺とアルが出合ったのは今のこの地球の歴史ではありません。別の地球の歴史なんです。」

湯川は遠くを見つめるように一息ついた。

「本当の地球の歴史では、あのUFOに対し何の手立ても我々は持ち得ませんでした。

日本に出現したUFOは月に向けミサイルを発射し大爆発を起こしました。

それからきっかり1週間おきに出現、ミサイル発射、大爆発を繰り返しました。

7機目のUFOを最後にUFOの出現はとまりました。

UFOの大爆発で日本は壊滅しました。」

香音はホログラムにその時の日本の映像を映し出した。

全ての建物が崩壊し、大地は真っ黒に焼け焦げていた。

多くの観客がこの光景に衝撃を受けた。

「UFOの侵略はこれだけでは済みませんでした。UFOから放たれたミサイルは月の軌道上に留まり、光点となりました。

その光点はワームホールの出口だったんです。

約半年後その光点から球体が出現し、大気圏に突入し、わずか半日で地球のすべての海水を吸引してしまいました。」

ホログラム映像には小さな球体が海水を猛烈な勢いで吸い上げどんどん巨大化する様子が映し出された。

「地球から海は無くなり、雨も降らなくなり、多くの動植物が死に絶えました。

それまでに可能な限り、水と食料を備蓄していましたが、よく持って3年で人類は死滅するという研究結果が導き出されました。

地球連邦は地球を3分割し、人と動物、植物を北と南に集中させ、真ん中部分を放棄しました。その映像がこちらです。」

そこに映し出された地球は3等分され、上下は緑、真ん中は赤茶の砂漠が広がる光景だった。

「こうなるまでに俺はUFOの欠片から新たな強固な金属を作り出し、あの船を作りましたが、時すでに遅く地球から海は消失しました。」

湯川は一息つくと、水をごくりと飲みその水を眺めながら言葉を続けた。

「そんな時に俺と香音は、アルと出会いました。」

湯川は指で3を作り、

「俺達3人は、あの船エスポワール号で、過去の世界へ行き、あの手も足も出なかったUFOに対し、科学力、技術力ではない対抗できる力を持った日本の神々、神と同等の力を持った英雄達に助けてもらう為、旅立ちました。」

「その旅は苦難の連続でした。何の見返りも無いのに、2000年後の地球を救うために力を貸して欲しいなんて、そんな都合のいい話、聞いてもらうだけで大変でした。」

「でも、1人、2人とチームに加わってくれた事で、チームの力は何倍にも膨れ上がってきました。」

「そして俺達は、7人の英雄達の協力を得て、UFOが現れる前の地球へと戻って来ました。」


「1機目のUFOは北海道に現れました。

我々が手も足も出なかったあのUFOのシールドを、過去の英雄達はいとも簡単に切り裂きました。

そして、UFOの船体を引きはがし、内部に入りました。その時の映像がこちらです。」

ホログラム映像に映し出されたのは、須佐之男と日本武尊がシールドを切り裂き、UFO内部でレーザー光線を草薙の剣で跳ね返しながら、レーザー発射管を破壊する映像、清明がバリアを張った映像や内部に出現したティラノサウルス風ドロイドを叩き壊す映像が映し出された。

観客からは、「なんだあれはフェイクじゃないのか?」「あれは人間なのか。」「なんていうパワーだ。」等様々な驚きの声を発した。

世界中の誰もが、さらには日本人でさえその英雄達が誰なのか、全く分からなかった。

「そして英雄達はミサイル発射管を引き抜き完全に1機目のUFOを沈黙させました。2機目のUFOは本来1機目の出現後8日に現れる筈が1日早く7日後に現れました。

大きさもひと回り大きくなり、内部の防衛機能も格段に上がっていました。

ドロイドも大きくなり、プテラノドンのような空を飛ぶドロイドも現れました。」

その時の映像がホログラム映像に映し出された。

将門が小角と共に次から次へと翼竜ドロイドをロンギヌスの槍で突き刺し溶かしながら、須佐之男と日本武尊が地上のドロイドを2人で破壊する映像だった。

「この強力なUFOに対いてもみんなの力を結束する事で撃破する事ができました。」

湯川は水を口にし一息ついた。


「3機目のUFOも当然のごとく2機目より強力になっていました。そして驚くべきことに我々に攻撃を止めるよう恐喝してきました。その時の映像がこちらです。」

そこには異様な人間もどきのドロイドがリモコンを持って、この船を爆発する。

それでも抵抗する場合はイギリスの地下の4機目のUFOも爆発させ、ヨーロッパを壊滅させると脅していた。

「さすがにこれには我々も成すすべがありませんでした。

それを防いでくれたのも一人の英雄でした。なんと彼は時間を止めて、ドロイドからリモコンを奪い破壊し、縛り付けました。

彼は時間を操る能力を持った神いや仏、『弥勒菩薩様』でした。

こちらがその弥勒菩薩様です。宇宙防衛軍の最高顧問です。」

湯川に促され、弥勒は立ち上がった。

「釈迦入滅後、5億6700万年後地球を救いにこの世に降臨すると言われとる、ワシが弥勒菩薩でおま。呼びにくかったら〝みーちゃん〟と呼んでおくれやす。」

弥勒は右足を上げ、両手を広げ挨拶し、言葉を続けようとしたが、湯川に肩を押さえつけらられ椅子に座らせられた。

「弥勒のおっちゃん、喋っちゃダメ。」

アルにもたしなめられた。

「ふん、けち臭いのお。」

会見場は大きくざわついた。「あの方が弥勒菩薩様。」「あれは伝説じゃなかったのか。」「そんな偉大な方には見えないな。」等々いろんな声が聞こえた。

「そんな3機目のUFO行動から、弥勒さんは2つの結論を導き出しました。

ひとつはUFO自体に知性がある事、知性があるという事は魂が籠ってるという事、もうひとつは4機目のUFOを自爆させてミサイルを発射できなくなっても、1機だけでもミサイル発射できれば、奴らの目的は達成できるという事でした。」

「弥勒さんはこれを『時間の呪縛』と呼び、何があろうが結果は同じという歴史の改変を許さない力が働いていると言いました。

しかし、このチームならその時間の呪縛さえ凌駕できるパワーを発揮できるかもしれないとも言ってくれました。

だから最後まで絶対あきらめるな、己の能力を最大限引き出すよう指示してくれました。」

「そして、4機目5機目6機目と格段に強く狡猾になるUFOを英雄達は時には協力しながら、時には己の力を超える能力を発揮し、時には伝説の剣や槍を駆使し、敵を倒し続けました。」

その時の映像がこちらです。


ホログラムには。将門がロンギヌスの槍を突き刺しドロイドを溶かす映像、小角が瞬間移動でドロイド同士をぶつけ壊す映像、清明が召喚した式神に弥勒ががポセイドンを降ろし琵琶湖の水を一瞬で干上がらせる映像、泳げなくなった水棲ドロイドを英雄達が倒す映像、須佐之男と日本武尊が仁王像のように変身し敵を倒す映像、そして変身した須佐之男と日本武尊でさえ手も足も出なかったUFOのシールドを1撃でゼウスの雷霆で打ち破った卑弥呼の映像等が映し出された。

会見場は騒然とした。

とても実際の映像だとは思えなかった。


過去の英雄達の力でなんとか6機のUFOを壊滅した俺達は、ついに最後のUFOと対峙しました。

このUFOを破壊できれば、地球の歴史は一気に元に戻ると弥勒さんも保証してくれました。

「せや、2つの重なった歴史を一つにまとめれるんはワシだけやさかいにな。

ここは気張らなあかんと思た。気張る言うてもうんこちゃうで…」

弥勒は湯川に口を押さえられた。

「俺達は希望から力が沸々と湧いてくるように感じました。と同時に今までで最強のUFOが現れるんじゃないかと、緊張で身体が震えました。全員死ぬんじゃないかと不安にもなりました。」

「しかし現れたUFOは1機目のUFOと同じ大きさでどう見ても強そうな感じではありませんでした。

それは返って俺達の不安を掻き立てました。」

「そしてUFOは着陸と同時にミサイルを発射しました。

そうなんです、俺達もUFOは過去と違って1日早く現れていたと思ってましたが、早まっていたのは出現ではなく、ミサイルの発射だったのです。」

「余りに一瞬の出来事で俺達は成すすべがなかった。船に転送して戻るのがやっとでした。」

「その時、その一瞬をまるで予想してたかのように、アルが命を賭けてそのミサイルを爆破してくれました。その時の映像です。」

ミサイル発射と同時に小角がアルを抱えミサイルに瞬間移動する映像だった。

「ミサイルはアルが用意していた反物質爆弾で破壊されました。

幸いにもアルは強化スーツのおかげで身体はバラバラになりましたが、こうして再生する事ができました。

この瞬間歴史は変わりました。

ミサイル発射後のUFOの爆発で日本州の九州は焦土となりましたが、それ以外の日本は無事でした。

勿論海も干上がる事なく無事でした。」

「以上見ていただいたように、地球の科学力を遥かに凌駕する相手に対し俺達は過去の英雄達の神の力で勝利する事ができました。

それは決して技術や科学ではなく人間力、精神力、神通力でした。

そして彼らは逆に俺に礼を言いながら自分達の時代へと戻って行きました。

この事を教訓に俺は、科学力に頼らない宇宙防衛軍を創設したいと思っています。

学力優秀な学者、運動神経抜群なアスリート、武器の扱いに慣れた警察官、そんな人材は一切必要としません。

困ってる人を放っておけない人、自分より弱い人間に自然と手を差し伸べる人、『何かお困りごとはないですか?私でお役に立てる事はありませんか?』この一言を掛けれる優しさを持った人、誰にでも『ありがとう』と感謝の言葉を掛ける事ができる人、民衆を守るためには平然と自分の命を賭けれる人、そんな人に防衛軍のメンバーになって欲しい。」

湯川は立ち上がり、涙を堪え拳を握りしめ、言葉を続けた。

「最後に過去の英雄を紹介します。」

湯川は香音に目配せした。


ホログラムには、UFOにゼウスの雷霆を突き立てる卑弥呼の映像と、【HIMIKO】の大きな文字。

「邪馬台国の女王『卑弥呼』さんです。手に持ってる槍はゼウスの雷霆です。」


次に映し出されたのは、赤く光り巨大化していく須佐之男命の姿と、草薙の剣でドロイドを切り刻む姿、【SUSANOHNOMIKOTO】の大きな文字。

「天照大御神の弟『須佐之男命』さんです。」


次に映し出されたのは、青く光り巨大化していく日本武尊の姿と、草薙の剣でドロイドを次から次へと突き刺していく姿、【YAMATOTAKERU】の大きな文字。

「日本の天皇家の伝説的英雄『日本武尊』さんです。

2人が持ってる剣は、日本の皇室に伝わる3種の神器のひとつ草薙の剣です。」


次に映し出されたのは、宙に九字を切り結界を張る安倍晴明の姿、【ABENOSEIMEI】の大きな文字。

「卓越した陰陽師『安倍晴明』さんです。」


次に映し出したのは、空間を消えたり、現れたり瞬間移動する小角の姿だった、【ENNOODUNU】の大きな文字。

「修験道の開祖『役小角』さんです。」


次に映し出したのは、ロンギヌスの槍でドロイドを突き刺し溶かす平将門の姿と【TAIRANOMASAKADO】の大きな文字。

「日本州の首都、東京の守り神『平将門』さんです。手に持っているのはキリストのロンギヌスの槍です。」


最後に映し出されたのは、金剛杵から雷をドロイドに落とす弥勒菩薩の姿【MIROKUBOSATHU】の大きな文字。

「そして『弥勒菩薩』様です。」

弥勒はいつの間にか演壇の中央に立っていた。


日本人ならば誰もが知っている過去の偉人達の名を聞いて、世界中の日本人、世界中の人類が万歳をし、ガッツポーズをした。


ホログラムには7人の英雄全員が横に並ぶ姿が映し出されていた。

湯川とアル、弥勒はその中心に立ち、

「これが地球を崩壊の歴史から救った『伝説の7人』です。」

世界中の人が立ち上がり、拍手が鳴りやまなかった。


                 完

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