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伝説の七人  作者: HITOSHI
16/18

『伝説の七人』第16章瀬戸内海のUFOの章

第十六章 瀬戸内海のUFOの章

1,戦闘を終え例のごとく酒盛りが始まっていた。

これが毎回の戦闘の反省会と次の戦闘の準備会議みたくなってきたな、と湯川は思った。

「まさかの水棲恐竜とは想定外だったわね。」

卑弥呼が口火を切った。

「という事は、5機目のUFOは水の上に着陸する事が決まってて、前もって設計されてたってことだよね。」

アルが疑問を呈した。

「やっぱり、弥勒さんの言う通り、あのUFOには魂が宿ってるという事か。」

湯川は弥勒の言葉を思い出しながら言った。

「弥勒さん、時間軸の方はどうだったんですか?」

「湯川の心配通り、ポセイドンが琵琶湖の水を蒸発させた途端歪み始めたんや。ワシの力で抑えれる程度の歪みやったけど、まだ今のところ時間軸は2本のままぶれとる。」

「じゃ、やっぱりらせん状の地球も2重にぶれたままなの?」

「そうや、卑弥呼はん。この時間軸がどっちに集約されるかは、多分最後の1機にかかってると思う。」

弥勒は2機先のUFOの事を想像しようとしていた。

「それは弥勒さんに任すとして、わしらは次のUFOの対応策を考えよう。次はどこに出現するんだ?湯川。」

あの向こう見ずの須佐之男が冷静な判断を口にしたことに湯川は驚いていた。

「あ、瀬戸内海です。」

「内海か、まずいな…、外海へすぐに出て行ってしまう。」

須佐之男は腕組みして考えて言った。

「またポセイドンちゃんに頼んだら?」

アルが軽~く言った。

「アホか、同じ事で2回も連続で呼べるか。ワシのプライドが許さんわ。」

「あ、あほ?このパワハラじじぃ。それにプライドって何?おっちゃん、プライドと一番遠いとこに居てるタイプじゃん。」

「はあぁ、仏さまがプライド持ってなくてどうすんねん。」

「じゃ、もっと仏さまらしくしなさいよ。どう見たってお笑い芸人よ。」

「なんやと~~、どう見たらお笑い芸人に見えるんや。」

「そんなんだから、いい歳こいてM―1の審査員にも呼ばれないんじゃない。」

「はあぁ、お前誰の事言うてんねん?」

「うるさい!」

『ぼこっ』

また弥勒はアルに頭をしばかれた。

そんな様子を見てみんな笑いを堪えていた。

「ちゃん、ちゃん。」

小角が締めてみんな大爆笑した。


「で、どうするんだ?」

須佐之男が話を戻した。

「瀬戸内海全部埋めちゃえば?」

日本武尊がとんでもない事を言い出した。

「湯川、次UFOが現れるのは何日後だっけ?」

「このペースで行くと3日後です、タケルさん。香音、瀬戸内海の地図を出してくれ。」

香音はホログラムに地図を出した。

「ここの山を削って、瀬戸内海に埋めちまえばいいんじゃねえか?」

日本武尊は中国山脈を指さして言った。

「日本の地形大きく変わっちゃいますよ。」

湯川が心配していった。

「別に道路も鉄道も今じゃ大して重要じゃないんだし、別にいいんじゃないの。」

アルは大して気にしていないようだった。

「香音、中国山脈に活火山はあるか?」

「この2カ所だけみたい。」

香音は島根の三瓶山と山口の阿武火山群を指さした。

「その2カ所くらいなら残しても問題ないんじゃねえ?」

「わしとタケルで一日でやっちまおう。」

須佐之男が言った。

「小角も行ってき。」

弥勒が言った。

「え、オラ言って何すんだ?」

「スサノオとタケルが切り取った山を瀬戸内海まで瞬間移動させるんや。」

「そんな重てえ物オラ持てねえぞ。」

「馬鹿、持って瞬間移動するんちゃう、山だけ瞬間移動させるんや。」

「そんな事やった事ねえ。」

「小角やったらできる筈や、まあやってみ。」

「うまい事行ったら1時間くらいで終わるんちゃうか。」

弥勒は簡単に言ってのけた。

「何かできそうな気がする。」

小角は顎を鳴らし、「ぽっ」「ぽっ」と口から息を吐いた。


2,須佐之男、日本武尊、小角、将門の4人は中国山脈のふもとに立っていた。

「将門までなんで来たんだ?」

須佐之男が訊いた。

「弥勒さんが、山を海に沈めた後、槍で整地しろと。」

「それは助かる平地の方が戦いやすい。早速はじめるぞ。できるだけ建物の少ない山から切り取って行く、いいなタケル。」

「わかった、父ちゃん。」

須佐之男と日本武尊は草薙の剣に念を込め、山をふもとから横に切り裂きだした。

「小角、やってみろ。」

小角が山に手を添え、山だけ瞬間移動させた。

山が消え、遠い海で津波の音のような轟音が響いた。

神戸の街を大津波が襲った。

「これはまずいな。沿岸の町が沈んでしまう。」

「清明来てくれ。」

須佐之男が船に連絡した。

清明が転送されてきた。

「小角、清明を連れて、沿岸部を瞬間移動してくれ。」

「清明は結界を張って、海水を外海に流してくれ。」

須佐之男が指示した。

清明は大きな五芒星を描くと大きな結界を張った。

「清明すごいな、なんてでかい結界だ。」

日本武尊が感嘆の声を上げた。

結界の先がはるか遠くまで続いていた。

「私も戦いを重ね能力が上がった。」

清明はどや顔で答えた。

そして小角は、清明を抱えて姿を消した。

数分で2人は戻ってきた。

「瀬戸内海の沿岸部全体に結界を張ってきた。海水は全て太平洋に流れて行くだろう。」

清明の言葉も終わらぬ内に、須佐之男と日本武尊は山を切り裂き始めた。

小角は瞬間移動しながら、切り裂かれた山を次から次へと瀬戸内海に放り込んでいた。

凄まじい轟音と共に津波が発生したが、清明の結界に阻まれ太平洋へと流されて言った。


3,その様子を船の上から見ていた、アルはその凄さに驚いていた。

「なんかみんな、阿吽の呼吸で動いてるね。スサノオちゃんの指示も的確で、まるで卑弥呼姉ちゃんみたい。」

「ほんとみんな変わったよな、俺なんか最初スサノオさんにもタケルさんにも殺される寸前だったんだからな。」

あの時の須佐之男の恐怖に満ち溢れた表情と今の表情はまるで別人のようだった。

日本武尊からも、あの時の恨みに満ちた孤独さは全く感じられなく、常に温和な表情だった。

「あの時のわらわ達は、自分の力や権力を誇示する事しか考えていなかった。民衆はそれを支えるのが当たり前だと思っていた。この時代に最初やって来た時に感じたふがいなさも今では全く感じられなくなった。

民衆の幸せを願う事が世を治めるものの務めだと感じた。

強力な敵に都度向かう事で、みんな一つにまとまってきた。

その力はあのように大きな力となって不可能を可能にしている。素晴らしい事だと思う。」

卑弥呼は今までの事を振り返りながらしみじみと語った。

「ワシも釈迦の生まれ変わりとして未来に下界に下り衆生を救済する筈やった。それがこんな事に巻き込まれてもうて、正直めんどくさいなと思とった。

でもみんなと協力して戦ってる内に、これがワシの運命やったんやなと考えを変えた。

なんかアルともいつも喧嘩ばっかりしとるけど、それも楽しかったんや。

頭しばかれても、アルの事が愛おしゅうてしゃあない。」

アルは下を向き涙を堪えていた。

「ごめんなさい。」

アルは泣かずになんとか言葉をつむぎ出した。

「いや、ええねん、ええねん、あれでみんな楽しそうに笑とったやないか。

ワシがどつかれるまでは湯川がようケツ蹴られとったがな、ひゃ~。」

「人の事をパワハラ暴れん坊みたいに言いやがって。」

アルもつい笑ってしまった。

「お前、人には暴力振るうくせに、誰からも叩かれた事もないよな。」

湯川が考えながら言った。

「誰がこんなか弱い少女に暴力振るうっていうのよ、バカじゃない!」

「誰がバカだよ。俺は本当の事を言ってるだけじゃねえか。」

「うるさい、バカヒデキ。」

アルは久しぶりに湯川のケツを蹴った。

「うっ…」

湯川はうずくまった。

「ひゃ~。これやこれ。」

弥勒は大笑いした。

「おっちゃんもぶつわよ。」

「仏だけにぶつってか?ひゃ~。」

「くっだらねえ。」

アルの一言に卑弥呼はお腹を抱えて笑った。

そんな事を言ってる間に、瀬戸内海は全て埋められた。

それを将門がロンギヌスの槍で、平地にしているところだった。

「完全に日本列島の形変わちまったな。」

湯川は呟いた。

「仕方ないよ、地球守るためなんだから。」

「アルは日本列島の綺麗さを知らないからそんな風に簡単に言うんだよ。」

「なによ、偉そうに。」

「ドイツとは違うんだよ。あんな鳥の巣から小鳥が『えさくれ~』って鳴いてるような形の国と一緒にすんな。」

湯川はまたアルにケツ蹴られると思い、床にしゃがみこんだ。

『ぼこっ』

湯川は頭をグーで叩かれた。

「僕の祖国を馬鹿にするんじゃねえ!」

「終わったみたいよ。みんな戻ってもらいますね。」

香音が告げた事でいざこざも収まった。


4,「みんなお疲れさま。お腹空いたでしょ?」

卑弥呼がみんなを労った。

「先に汗を流してくる。」

須佐之男は自室にもどった。

「俺も。」

「オラも。」

「私も。」

みんなシャワーを浴びに行った。

「結構、体力使わせちゃったみたいね。」

「ほんまやな、みんな頑張ってくれたんやな。あんな大仕事、大林組でも5年はかかるで、それをあいつら1時間ちょっとで終わらすとは、ほんまみな化け物や。」

「おっちゃん、なんでそんな事知ってんのよ。」

自分だって大林組なんて知らないのにと思いながら、アルが言った。

「仏さまは何でも知ってるんや。」

「でも、小角さんの物だけ瞬間移動させる能力は今後使えるんじゃないかな…」

湯川は腕組みし考えながら言った。

「UFO丸ごと移動させちゃうとか…」

「アホか、湯川。そんな移動したって危険な場所が変わるだけやんけ。」

弥勒に否定された。

「まあそやな、お前の持ってる反物質弾丸を飛ばして敵にぶつけるくらいかな…、そやけどあいつ大ざっぱやから余計危ないかもな、ひゃ~。」

「まあでも、なんか使えそうなときは、ワシか卑弥呼はんから指示出すわ。」

「そうですね、それを弥勒さんと卑弥呼さんがいざという時に使える事が、一番の武器かもしれないですね。」

湯川も納得した。

「お、超大林組が帰って来たで。みんなご苦労さんやったな。」

「誰が超大林組やねん。」

定番化している日本武尊の突込みだった。

みんな自動調理器の扱いにも慣れ、それぞれ好きな食べ物と酒を注文し、美味そうに食っていた。

「オラ凄かっただろう。もうなんでも吹き飛ばせるようになったぞ。次の戦では全部オラが吹き飛ばしてやる。」

「お前は、張り切るな、小角。余計危険度が増す。」

弥勒に諭された。

「ちぇ。」

「弥勒さん、姉ちゃん、これで備えは万全だと思うか?」

須佐之男が訊いた。

「わからないわ、あいつらいつもわらわ達の裏をかいてくるから何が起きるかわからないわ。」

「まあ、でもできるだけの事はやったやろ。後はUFO出現までゆっくり身体休めた方がええ。それが一番の備えや。」

「湯川、次のUFOが現れるのは2日後やな?」

「あ、はい1月9日だと思います。」

「まあ、2日間ゆっくりしようや。」

「う~ん。」

須佐之男は腕組みをし、考えていた。

「今回は最初から、変身してUFOを真っ二つに叩き斬る、いいなタケル。」

「ああ、わかった父ちゃん。」

なんか卑弥呼さんと須佐之男さんの姉弟関係、須佐之男さんと日本武尊さんの親子関係、3人共気にしなくなったよな。

細かいところが気になる湯川ならではの感想であった。

「もうそんな事気にしてる場合じゃないのよ。」

「げっ、」久しぶりに卑弥呼さんに頭の中読まれた。

「ヒデキは大体細かい事気にしすぎなのよ。」

わ、卑弥呼さんが初めてヒデキって呼んでくれた。親近感感じるなあ。

「ヒデキって呼ばれただけで喜んでるし、わざとよ。」

「あんた完全に卑弥呼姉ちゃんの手の上で踊らせてるわね。」

アルが突っ込んだ。

「うるさい、お前は口を挟むな。」

湯川は思わず反応して余計な事を言ってしまった。

またアルの蹴りかこぶしが飛んでくると思って逃げ出した。

「あのバカクソ逃げやがった。」

みんな笑っていた。

「あの細かさで、もっと戦の分析してくれたら、湯川らしさも出てくんのにな、もったいない。」

弥勒にとっては日本きっての天才科学者も物足りないようだった。

が、この弥勒の一言がこの後大きな意味を持つ事を誰も想像つかなかった。


5,みんなそれぞれ2日間身体を休め迎えた朝、全員装備を整えUFO出現に備えていた。

「あれ、アルその首からさげてる巾着袋みたいなのは何だ?」

「お守りよ。」

「なんだよ、今更。そんなのずっとぶら下げてなかったじゃないか。」

「いちいちうるさいわね、そんなの僕の勝手だろ。」

「なんだよ、その言い方は。ちょっと気になっただけじゃねえかよ。」

「だから、あんたは細かいって言われんのよ。」

「緊張感ないのお、お前ら。」

弥勒がぼやくように言った。

「この中でいつも一番緊張感ないのは、あんたじゃん。」

「はあぁ、誰に向かってもの言うてんねん。」

アルがこぶしを振り上げようとしたその時、金田一長官から連絡が入った。

「たった今、カナダ州のトロントからUFOが現れたと連絡があった。例によって日本に向かってるようだ。目撃者によるととんでもない大きさだったらしい。湯川君気をつけてくれたまえ。」

「長官、ありがとうございます。」

「みなさん、お聞きの通りです。心してかかりましょう。」

「よし、行くぞ。」

須佐之男の声を合図に8人は転送された。


『ぐおぉぉぉ』今までにない轟音を響かせながらUFOが現れた。

「なんだあのでかさは、5機目の倍以上あるんじゃないか。」

将門が目を見開き言った。

「大きさなど関係ない!」

UFO着陸と同時に須佐之男と日本武尊は変身しUFO目掛けて大ジャンプした。

「あああ~、えらいこっちゃ。忘れてた。」

弥勒が突然大声で叫んだ。

「どうしたんですか?弥勒さん。」

湯川が慌てて訊いた。

「円陣組むの忘れてた。」

弥勒の答えに、その場にいた全員がずっこけた。

その時まさに須佐之男と日本武尊が草薙の剣を突き刺す寸前だった。

草薙の剣がシールドにかかった瞬間、UFOは横に縦に斜めに不規則に回転を始めた。

2人は回転に引きずられ、そのまま地面に叩きつけられた。

地面が大きく割れた。

「もう1回行くぞ。」

だが、不規則に回転するUFOのシールドに2人は力を込める事ができず、また地面に叩きつけられた。

「もう1回だ。ありったけの力を込めろ、タケル。」

しかし、結果は同じで、2人は地面に叩きつけられた。

湯川とアルも反物質同士で中和できないか、アンマシを撃ちこんだが、全て回転力で跳ね返された。

「あの回転を止めないと無理だ。シールドが切り裂けない。」

日本武尊が地面を踏みつけて言った。

「弥勒さん、何とかならぬか?」

須佐之男が訊いた。

「わしが時間止めると、回転も止まる筈や。その間に金剛杵で雷落としてみる。」

「お願いします。」

弥勒は時間を止めた。

回転は止まった。

弥勒は金剛杵を空に掲げると幾本もの雷を落とした。

時間が止まった静寂の中、幾本もの雷がシールドを直撃したが、全て跳ね返された。

シールド自体も厚くなっていた。

弥勒は諦め時間を進めた。

「はあぁ、はあぁ。」

弥勒は肩で息をしていた。

「弥勒さんの力でも無理だったんですか?」

先程と変わらぬUFOの姿を見て、須佐之男命が言った。

「時間止めてる間は息も止めてなあかん。ワシにはこれが限界や。」

「じじいめ。」

アルが小さく呟いた。

「弥勒さん、もう一度だけ時間を止めてもらえませんか?わしとタケルが剣を突き刺す瞬間に時間を止めて回転も止めてもらえませんか?回転が止まってる間に少しでも剣を食い込ませることができれば、なんとかなるかもしれません。」

須佐之男最後の作戦だった。

「わかった、やってみよ。」

弥勒は言ったが、もしもの時は最後の手段を使うしかないと思っていた。卑弥呼に預けてあるゼウスの雷霆だった。

あの武器の力に自分が耐えられる自信が弥勒にはなかった。自分の命を懸けてもやるしかないと思っていた。

須佐之男と日本武尊がジャンプした、草薙の剣がシールドにかかった瞬間、弥勒は時間を止めた。

シールドの回転と、2人の動作が止まった。

シールドに剣が刺さったのを確認して、弥勒は時を進めた。

須佐之男と日本武尊は踏ん張って、シールドを切り裂きかけたが、剣が通り抜けることなくまた地面に叩きつけられた。

「くそが!」

「湯川、ありったけの反物質の弾丸をよこせ。弾丸ごとあのシールドに突撃をかける。」

須佐之男が玉砕覚悟で言った。

「そんな事したら、スサノオさんまで粉々に吹っ飛んじゃいますよ。」

湯川も思わず大声をあげた。

「そうか。」

弥勒はゼウスの雷霆を自分が使うより、須佐之男が使った方が、確実性は上がると気付いた。

でも我が身を投げ出す覚悟は必要だ。

「スサノオ、命投げ出す覚悟はあるか?ほなら試せることがある。」

「弥勒さん、まだ何か秘密兵器があるのか?」

「ゼウスの雷霆や、あの世から借りて来たんやけど、あまりに危険すぎて世界を滅ぼす程の力が籠められてる。その力で使った者をも滅ぼすかもしれん。今は卑弥呼はんに預けてある。」


6,弥勒がそう言ったまさにその瞬間、空中にジグザグの形をした大きな槍とそれを操り宙返りしながらUFOに向かっていく人の姿があった。

「あ、ゼウスの雷霆、ケラウノスや。」

雷霆はUFO頭頂部に刺さり、あの変身した須佐之男と日本武尊でも全く歯が立たなかったシールドを一瞬で溶かした。

「え、卑弥呼はんか?」

その姿は黄金色に輝いていた。

「卑弥呼姉ちゃん、死なないで!」

アルが大声で叫んだ。

卑弥呼は雷霆を突き刺したまま、UFOの上で黄金色に輝き仁王立ちしていた。

「わらわは大丈夫だ。スサノオ、タケル、UFOを切り裂け。」

『卑弥呼さん』

みんな口をあんぐり開けて驚いていた。

須佐之男と日本武尊はジャンプし、卑弥呼の足元からUFOの船体を真っ二つに斬り裂いた。

「卑弥呼さんいつの間にあんな力を。」

湯川は呻いた。

卑弥呼はUFOからジャンプしてみんなの前に降り立った。

「お姉ちゃん…」

アルは卑弥呼に抱きつき、泣きべそを搔いていた。

卑弥呼はアルの頭をポンポンし、

「黙っていてごめんね。」と言った。

「おい、何か出て来るぞ!」

須佐之男が気付いた。

「なんだあれは。」

前回出て来たモササウルスに手足が生えているように見えた。

「4本足で歩きながら水中も移動できるってことか。香音数はいくら居る?」

湯川が言った。

「千を超えてるわ。あんなのが全部外海に出たら世界は終わるわ。」

「くそ、瀬戸内海を埋めても意味なかったのか…」

日本武尊が悔しそうに言った。

「そんな事ないわ、この状態なら敵の姿を捉える事ができるわ。」

卑弥呼はそういうと両手で雷霆を握り、空にかかげた。

雷霆の先から巨大な1本の雷が放たれ、遥か上空で幾重にも分裂、矢印のような形になり、それぞれ1本ずつモササウルスを串刺しにしていった。

「奴らはまだ生きている、わらわが固定している間にみんなでとどめを刺せ。」

須佐之男と日本武尊は猛烈な勢いでモササウルスもどきを切り裂いて行った。

将門もロンギヌスの槍で敵を突き刺し、溶かしながら火球円盤で敵を切り裂いて行った。

清明は湯川とアルの周りに結界を張り、12天将を召喚、それを一つにまとめ仁王像のような神を作り出した。

須佐之男、日本武尊と同じ仁王像がもう1体増えたように見えた。

湯川とアルは結界の狭間からアンマシを撃ちまくった。

小角はアルのリュックから反物質弾丸を引ったくり、モササウルスもどきに向け物質瞬間移動させ破壊しまくった。

弥勒は時間軸の歪みを抑えているようだった。

「えげつない歪みや。」

弥勒はぼやきながらも、なんとか堪えていた。

ものの十数分でモササウルスもどきは数十体まで減っていた。

「後は俺達でやる、父ちゃんはミサイル発射管を引き抜いてくれ。」

日本武尊が須佐之男に向け言った。

須佐之男は発射管をねじ切ると、根元からあっさり引き抜いた。

これでUFOは完全に沈黙した。

そして、最後の1体のドロイドを将門の円盤が縦に斬り裂いた。


「ふぅ、なんとか終わったなあ…」

弥勒がため息をついた。

「弥勒さん、時間軸は?」

「なんとか、まだ並行を維持しとる。そやけど、今回の歪み力は凄かったわ。」

全員今回は汗だくになっていた。

「戻って一っ風呂浴びよう。」

須佐之男の一言で、全員の姿は消えた。

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