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異世界ふとん至上主義!  作者: 一人記
第一章

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第五十二話『生まれ落ちた地にて』


「いや〜、ボクこっち方面に来るのはじめてだよ~!」


 グリム大陸中心部に位置するアシエーラ共和国と、遥か南端に位置するアルハデス帝国の境い目。

 

 沢山の生物が生息するグリム大陸随一の森林『グリム大森林』にて、シン、ヌル、アーレ君、ルフ……そして私の計五名で構成されたパーティーが、ゆっくりとその歩みを進めていた。


「冒険者でも、こっちに来るのは珍しいのか?」


「うーん……あんまり来ないよね~?アーレくん?」


「ふん……大森林側に用があるものなど、帝国へ亡命する犯罪者か死にたがりだけだ」


 私の質問に、さも当然と言うような態度でアーレ君が答える。


 どうやら、話を聞く限り私が生まれ落ちた場所は相当危険な所だったらしい。

もし気まぐれにシーアシラと逆の方向に歩いていたら、帝国とかいう犯罪者しか用が無いやばめな場所にたどり着いていたようである。よくやった昔の私……!


そんなことを思いながら、故郷?の森を南の道にそって歩いていく私たち。


「しかし……五人なんて大人数のパーティーは初めてで緊張しますね……!」


「そうかな~?ボクは人が多いほうが楽しくていいなぁ~!」


「わたしもなぎゃみといっしょでうれしい」


「あ〜、その点は良いですよね……!特に後ろ姿が……」


「わかる。ながみのうしろはいいもの」


「うんうん!首とかきれいだよね~!」


 シンの発した言葉を皮切りに、女子特有テンション高め内容薄めのトークが突如として始まる。

前衛三人が女性で固まっているからというのもあるかも知れないが、それにしても……陽である。


 全く、女三人寄れば姦しいと言うが、あのことわざは本当のことだったらしい。

内容が何処となくおかしい気がするが……


まぁ、私の知ったことではない。

というか、むしろ関わりたくない事この上ない。


「……」


 しかし、パーティーの大半が女性だとこんな風になるんだな……

あの毒舌のアーレ君が、女子三人の話を聞きながら何も言わず気まずそうに歩いているよ。


───シンが攻撃特化の前衛攻撃、ルフが速度重視の遊撃、ヌルが先頭でのタンク兼火力担当。

そしてある程度何でもこなせる私が中衛で、最後にアーレ君が魔法で攻撃する完全な後衛。


 ということで、シン、ルフ、ヌル前衛、その後ろに私とアーレ君といった配置になっている訳だが……


うん、私としても気まずいんだよなぁ……アーレ君は良い子だってことはわかってるんだけど、あんまり話すタイプじゃないし……


「……おい、ながみ。こっちをちらちらと見るんじゃない」


───やばっ……声をかけるタイミング探してたら、こっそり見てたのがバレてしまった!

くそう……なんか恥ずかしいし、早急に誤魔化さなければ……!


「……い、いや?見てないよ?……気のせいじゃないか?」


 そう言って、私は誤魔化すために咄嗟に口笛を吹く。


……が、私の口からは、掠れた何とも言えない音が出ていくだけだった。

そういえば私、口笛吹けないんだった……


「お前……なんだその音……呪いか?」


「し、失礼な!これは口笛だっ!呪いなんかじゃないぞ!」


 この私が必死になって吹いているというのに……!

呪いとは何だ呪いとは……!


アーレ君の言葉を受けて非常に憤慨した私は、若干引いたような顔をしているアーレ君に迫っていく。


あ、めちゃくちゃ嫌そうな顔された……悲しい……


「はぁ……口笛というのはな、こういうやつのことだ」


 そうやって肩を落としている私を引き離すと、アーレ君はため息を吐いて私に声をかける。


そして……すぅ……と息を吸って。


『・:*ೄ·*♪︎ •*¨*︎︎ᕷ♩︎.¸¸ *¨*•.♪ .•*#¨*•.¸¸♬』


滅茶苦茶綺麗な口笛を吹き始めた。


 こちらの世界の音楽は知らないので、なんの曲かまでは分からないが……それでも完璧に再現されているとわかる綺麗な音色。

キレのある抑揚からゆったりとした息遣い、踊るように切り替わる音階、そして途切れることの無い音……


口笛素人の私でもわかる……これは、プロだ……!


「くっ……負けたッ……!」


 私はがくりと肩を落とし、歩きながら平然と口笛を吹いているアーレ君に賞賛の拍手を送る。

今も尚私の耳に心地よく響いている音色は、本当に素晴らしいとしかいいようがない……


どう見ても、いや、どう聞いても私の完全敗北である。


「ふん……」


 アーレ君はそんな私を見て、軽く鼻を鳴らす。

そして、少しだけにやっと笑ったあと何も言わずに歩き出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 シーアシラ港町から青狼族の村へ向かう街道の中腹あたり。

グリム大森林と面しているそこから鬱蒼とした森の中へ入っていき、しばらく歩いたその場所で私たちは身を隠し周囲を伺っていた。


「……ルフ、対象は見つかったか?」


 目をつぶり、すんすんと鼻を鳴らして集中していたルフに声をかける。


「……もうちょっと」


 少し目を開いたので終わったと思ったが、まだだったようだ。

次は、その頭部についている空色の狼耳をぴくぴくと揺らして周囲を探り始めた。大変可愛らしい。


ルフは【気力纏い】の力を足に集め敵を翻弄する圧倒的速度力の遊撃手。


……そんな位置付けとしてこのパーティーに入っているのだが、その能力を応用し、力を鼻や耳に集めることで周囲の状況を把握するといった索敵のようなこともできるのだ。


 というか、昔から主にその使い方で【気力纏い】を使っていたらしく、いちばん得意なのが索敵らしい。なんとも優秀である!


「うん……だいたいわかった」


「そうか、じゃあ数と配置を教えてくれ」


「ちゅうおうにつよそうなのがいっぴき、それをかこむようにじゅっぴき。ばしょは、あるいてごふん」


しかし、距離までしっかりとわかるのか……ルフ、凄まじいな……


───いや、ルフいな!


 特訓終わりの休憩時にザック先輩との組み手を見ていたが、ルフは【気力纏い】による凄まじい速度でザック先輩を翻弄していた。

それが攻撃だけではなく、索敵にもここまで正確に使えるとは……


「そうか、ありがとう。

じゃあ、今回の依頼の概要を説明するぞ……と言っても事前に説明したもののおさらいになるのだが……」


 少しだけ疲れた様子のルフの頭を撫でながら、私はひとつこほんと息をつく。

そして、私に視線を集めているパーティーのみんなに説明を始めた。


「グリム大陸全域に生息し、特にこのグリム大森林、街道とその奥地にある渓谷との間辺りに多くの集落を形成しているゴブリン」


 正直、こうやってまとめ役として話すのは苦手なのだが……

なぜか、私がリーダーとして任命されてしまったからな……仕方ない。


そんなことを考えながら、平然とした顔を取り繕って話を続ける。


「行商人の馬車やその積荷を襲う害獣に指定されている魔物で、その性格は残忍で凶暴。

周辺にいる自然動物を狩り尽くしたり、食用の植物を食い荒らしたり……自然を崩壊させる非常に厄介な魔物だ」


 特訓初めの授業で習ったゴブリンについての解説を挟みながら、概要を説明していく。

こういう役回りはやったことがないので、何を説明すればいいか分からない。


 そのため、とりあえず適当に話を進めているが……ちゃんとできているだろうか?


「しかも、繁殖能力が高く定期的に間引かなければいけないと来ている。

そんなわけで、冒険者ギルドでは常に討伐依頼が張り出されているらしい」


しかし……私があいつと戦うことになるとはなぁ……


「……そして、そんなゴブリンたちの暮らす集落の長ともいえる存在」


 私は自分で説明しながら、その存在の威圧感を思い出し少しだけ憂鬱な気持ちを心に抱く。


私がこの異世界に来て初めて得た、安心して暮らせる場所。


それを脅かし、この森を脱出せざるおえない状況を作り出した張本人。


「『ゴブリンロード』……それが、私たちの今回の討伐対象だ」


そう……私が倒さずに逃げてしまった、因縁の相手である。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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