第四十四話『固有スキル』
「という訳でって……どういうわけですか!?」
自分が研究者であるという話から、何故いきなりステータスを見せろという話になるのか……研究か!?研究目的なのか!?
……研究目的なんだな!?
ということは……私を見てニヤリと笑っていたのは大切な被検体として……!?なんということだ!
私は、ザック先輩の話の流れが急に変な方向へ曲がったことに驚いて、変な考えを膨らませながら思わず声を上げた。
疲労で変な方向にテンションが行ってたというのもあるかもしれない。
「わ、私の魂を見て、どうするつもりですかザック先輩!?
あれですか!?魂解剖ですか!?魂を弄ぶんですか!?」
「オイ、耳元で叫ぶなァ……!」
「あ、すみません……」
「ははは~!ながみ怒られてる~!」
疲労による変なテンションで捲し立てるようにザック先輩に迫ると、それが煩かったようでギロリと睨まれてしまう。
私はその目に確かな殺気を感じ、シュンとなってその場に座った。
因みに滅茶苦茶怖かった。
今までで一番怖かったかもしれない。
しかし、そんなことより、ヌルに笑われてしまうとは……一生の不覚……!
私は隣に居るヌルに肩を叩かれながら、がくりと肩を落とした。
「どうしたもこうしたもねェ……オレがお前らのステータスを確認して、今現在の強さを確認してやろうってことだァ……」
「……なんか研究したいとかそういう事ではなく?」
「オレはそういうのもうやめたんだァ……メンドくせェからなァ!」
ザック先輩はそう言って愉快そうに笑った。
「あー……」
そうだよなぁ……ザック先輩はそんな人じゃないもんなぁ……
私はザック先輩の笑顔を見て、少し落ち着いた。
「ッたくよォ……お前は頭いいのか悪いのかわかんねェなァ?」
「すみません……」
「別に怒ってねェよ……そんなことより、さっさとステータスよこせェ」
「あ、はい……ていうか、ステータスって他人に見せられるんですか?」
「あァ?!ながみお前そんなのも知らねェのかァ……?!」
手を差し出してくるザック先輩に、私は疑問に思っていたことを問いかけた。
すると、ザック先輩は驚いたように目を丸くして私を凝視した。
「すみません……全くもって知らないです……」
私が〘探求〙というスキルを持っているから、それでしか見れないと思っていたが……
そうか。ステータスの開示はそんなに常識的な事だったのか……!
「……はァ。お前ホントにわかんねェ奴だナ……!
じゃあやり方教えてやるから、ちょっとこっち来いやァ……!」
「あ、はい」
ザック先輩に手招きされて、私は黒板みたいなものの方へ行く。
「とりあえず、試しにオレのステータスを渡してやるぜェ……」
ザック先輩はそう言うと、私をギロリと見つめ自分の手を広げた。
すると……そのザック先輩の手には、私のステータスと同じような青い板が出現する。
そこには、ザック先輩の詳細なステータスが書かれていた。
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ザック・フューリー 性別︰男 種族︰人族
レベル︰43 MP︰340
スキル
〘思考︰8〙〘回避︰8〙〘見切り︰5〙〘跳躍︰6〙
〘走術︰5〙〘槍術︰5〙〘剣術︰5〙〘拳術︰5〙
〘追撃︰6〙〘強撃︰3〙〘歩行術︰6〙〘練力︰3〙
〘耐︰3〙〘力︰4〙 〘知︰5〙〘心︰3〙
〘風魔法︰4〙〘土魔法︰3〙
2次スキル
〘狂激︰3〙〘探求︰5〙〘戦技【ナイフ】︰6〙
〘斬首︰8〙〘敵感知︰6〙
固有スキル
〘鉄舐︰9〙
スキルポイント︰ スキル検索︰
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「へぇー……こんな感じで現れるのか……」
レベル43、MP340、スキル沢山……!
やはりザック先輩は強い……見たことないスキルで溢れかえっているよ……!
「見れたようだなァ……ククッ……!」
私の驚いた表情を確認して、ザック先輩はにやりと嗤う。
その笑顔は残忍ではあるが……どことなく自慢げな感じもするので、もしかしたら自分のステータスを見せられて嬉しいのかもしれない。
ザック先輩は少しだけ子供っぽいところがあるよなぁ……
「さて、肝心のステータスの渡し方だが……
相手に見せたいと【魂】に願うだけだァ!」
ザック先輩は私の視線に気づくと、こほんと息をつきステータスの渡し方についての説明を始める。
だが、あまり具体的ではないその内容に私は小首を傾げた。
「【魂】に願うとは……?」
そもそも自分の魂に願うということがまず分からない。
だって、魂というのは元々自分のものだろう?
それならば意識せずともやりたいことが伝わるものでは……
「そのままの意味だよ!こう、なんというか、神様に願う様な感じでェ……あァッ、もう!
とりあえず、疑わずに一回やってみろォ!」
私の問い掛けについて説明しようとするが、途中で面倒くさくなったのか自分の頭をぐしゃぐしゃとして怒りだしてしまった。
ステータスを見せるというのはどうやら感覚的なもののようである。
「うーん、神に願う……」
あいにく無信教者なので、寄り縋ったことがあるのはふとんぐらいなのだが……
寝る時とかにこう、ぎゅっと抱きついたり……
「ふむ……こうか?」
私は少し目をつぶり、心の中で手を合わせるイメージをしてザック先輩にステータスを見せて欲しいと願った。
ちなみに願った対象は自分自身である。
だって自分の魂だからな!私が司っているに決まっている!
「お、来たぜェ……!やれば出来んじゃねェか!」
ザック先輩は私の手元に現れた青い板をサッと取ると、それをゆっくりと眺める。
少しだけ楽しそうにしているのは、研究者だったからだろうか?
「えー、なになにィ……スキル7、二次4。
……へェ〘探求〙持ってんのか。もしかしてお前研究職だったのか?」
「まぁ、故郷で少し……」
ふとんとか、ふとんとか、ふとんとかの研究してたな……
「そうかァ、ならあの体力なのも頷けるな……で、あとは……」
ザック先輩はステータスに視線を下げたまま少し固まった。
そして、ハッとして動き出すと、大きくにやけて感嘆したような声をあげた。
「ほゥ……固有持ちかァ……!」
「えっと、固有スキルを持っていると何かあるんですか……?」
固有持ち……おそらく固有スキルのことだろう。
私はそう思い問いかけると、ザック先輩は私に言い聞かせるように話し出した。何やら重要な話のようだな。
「いいかァ……固有スキルってのはなァ。
魂に刻まれた、その者の核となる願い……もしくは種族としての誓い、願いの結晶のようなもの……」
「それは、古来から受け継がれてきた種族の伝統であったり、輪廻の輪を廻って再びこの世に生を受けた"転生者"だったり、何らかの理由で神に授けられたものだったり……」
───転生者……。
「そういうことで、これを持つ者は稀でなァ……
表すならば、生まれるより前から与えられた、宿命とでもいうような力な訳だァ!……まぁ、オレも持ってるんだがなァ!」
ザック先輩は高揚したように話す。握り拳に力が入っている辺り、相当嬉しいのだろう。残忍な笑顔がより深まって、残残忍ぐらいになっているのが見て分かる。
しかし、魂に刻まれた願い、生まれながらの宿命……
つまり、日本で死んで、この世界にやってきた……いや、転生した私に与えられた、宿命か。
───ということは、やはり私は一度死んでいる判定なのだろう。
ふむ、まだ向こうでも生きている可能性を少しだけ考えていたから、少々心にくるな。流石に病むほどではないが……
「へ〜そんなにすごいんだね!」
「あァ。これを持ってる奴は、数十年に一人しか居ないと言われるぐらいだぜェ!」
ヌルはザック先輩から返ってきた答えに、わざとらしく驚いた様子で口を開く。
「え〜?!でもボクももってるよ~?」
「は?お前も?」
それを聞いて、目を丸くして驚くザック先輩。
どうやら相当驚いているようだ。
しかし……驚くのはまだ早かった。
「わたしももってる」
ヌルの発言に追従するように、ルフがそう呟く。
「我も持ってるな」
それに続いて、アーレ君。
「えっと……拙者も、一応……」
最後に、シンが何故か申し訳なさそうに手を挙げてそう言った。
「……ザック先輩、ここにいる全員持ってるけど、固有スキルは本当に珍しいのか?」
驚いて言葉も出ない様子のザック先輩に、私はそう問いかける。
すると、ザック先輩はようやく正気を取り戻して口を開いた。
「えェ……何お前ら……怖……固有スキルって、マジで珍しいんだが……」
しばらく動揺して何やら考える素振りを見せるザック先輩。
しかし、考えた末に面倒くさくなったのだろう……
「まぁいい、あることに超したことはねェからなァ!」
そう言って、ククッと笑い私たちにグッドポーズをした。
「そうだよ~!ボクこの【半魔力体】で困ったことあんまりないし!
あるに超したことないよ~!」
ザック先輩のその言葉を肯定して、自分の身体をぷるぷるさせながらヌルそう言い放った。
「馬鹿、それはお前が気にしてないだけだっ!普通は困るんだよ!」
「そうなの~?!便利なのに~」
ヌルの体は固有スキルのせいだったのか……
ヌルはいつも楽しそうだけど、生活に支障でそうだよなぁ……
「まぁ……こういう風に、普通のスキルとは違って影響力が強いのも特徴の一つだからなァ。覚えておくといいぜェ……!」
「あ、あぁ……わかったザック先輩。肝に銘じておくよ」
目の前でヌルにぬるぬるぐちゃぐちゃにされているアーレ君を見ながらそう答えた。
「さて……じゃあ他の奴らも、ステータスを見せろォ!」
「ぐぅ……我はパスだ。誰であっても戦い方を知られるのは嫌だからな」
「すみません……拙者もちょっと……」
ヌルの体から抜け出しながら、いつものトゲのある口調でそう答えるアーレ君と、いつものように謝りながらステータス開示を拒否するシン。
一見すると二人ともいつもと同じような感じであるのだが……
私は二人の返答が、いつもより少しだけ強い感情だったような気がした。
「そうかァ……まぁ強制じゃねェから別にいいが、高ランクの冒険者になれば戦略の為に見せ合うことも多くなるぜェ。
もし意地でも見せたくねェんなら、その時どうするか考えておくんだなァ……」
「ボクは全然いいよ~!たくさんみて〜!」
「わたしもいい。へるものじゃない」
「おう。じゃあついでに見せられる奴全員見せあっとけ。
オレはお前らのステータス見て特訓メニュー考えるから……」
そう言って、ザック先輩は中庭からギルド内部の方へ歩いていく。酒場にでも行くつもりなのだろうか?
しかし、そんなことを考えている私に向かって、ヌルとルフが突撃してくる。そして、ぎゅっと抱きつかれてしまった。
「ながみ~!ボクのたましい見て~!」
「わたしのもあげる」
「ちょ、二人とも抱きつくな!」
二人に抱きつかれた私は、もみくちゃ状態になり地面に倒れ込む。
そのせいで固い土の地面と私の後頭部がぶつかって、軽く脳が揺れ痛みで目に涙を溜める私。
くっ……疲れていなければ、こんなことには……!
「───あ!
あと、見せられねェ奴らは自分で何したいか考えて、あとでオレに言えよォ?!わかったかァ!?」
そんな私たちの元へ、ギルドへ帰っていたザック先輩が戻ってきてアーレ君達に声をかけた。
きっと歩いている最中に、言いたかったことを思い出したのだろう。
「ふん……そのくらいわかっている!」
「承知致した……かたじけない……」
「ッたく……
じゃあ、今日はとりあえず解散だ。明日またここに集まれよォ……」
ザック先輩は二人の返答を聞いて頭を軽くかきながら、今度こそギルドの中へ戻って行った。
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