「ぼくよりダメなやつ」を連れてこい!
『ドラえもん』はほとんど毎回、同じ流れで話が進みます。
のび太がいじめられる→「ドラえも~ん」→未来の道具を使って調子に乗る
テンプレ?お約束?いいえ、伝統芸能と呼んでいただきたい。
この1年2年で流行り出した「ざまあ」「もう遅い」「追放」「婚約破棄」と構造は同じです。しかし厚みが桁違いです。
『ドラえもん』は全45巻のコミックス。そして大長編は17巻までがF先生の作品です。アニメを加えるのならば40年、つまり160クール。その物語の貯蔵量を舐めてはいけません。のび太が反省しなかった回、ドラえもんが一緒に暴走してしまった回、よく考えると何も解決していなかった回、エトセトラ・・・様々なパターンがそこにはあるのです。
そう、前述した「ざまあ系」が抱えがちな「育成に失敗したのび太」問題。その解決への道もまた『ドラえもん』が持っているのです。
しかしながら、固有スキル「ドラえもんと四次元ポケット」の存在は強力ですね。さすがに助っ人が必要です。デウス・エクス・マキナは極力使いたくありません。ドラミ、タイムパトロール、スペアポケットあたりには下がってもらいましょう。有能過ぎて劇場版に出してもらえない出木杉君。彼も悪くはないのですが、今回は適性に難ありです。
ここは多目君。彼が適任でしょう。
多目君って誰?という方も多いですよね。なんせ登場したのが一度だけですから。
「ぼくよりダメなやつがきた」という名作回があります。
のび太のクラスに転校してきた多目君。彼はのび太より勉強も運動もできない子でした。初めて自分未満の人間に出会ったのび太は大喜びです。多目君を誘い勉強会やかけっこなどをして思う存分優越感に浸ります。
そんなある日、のび太はジャイアンから野球に誘われます。エラーや凡打でチームが負ければ怒りの鉄拳確定でしょう。ここでのび太は代わりとして多目君を差し出します。無事に難から逃れたのび太の台詞がすごいです。「どんなゲームになるやら。想像するだけで笑っちゃうよ」
これを聞いたドラえもん、流石に看過できません。四次元ポケットから「配役いれかえビデオ」を取り出します。多目君をのび太に、のび太をスネ夫に加工した映像をのび太に見せつけるのです。この映像で、のび太は自分の醜態を恥じます。そして家を飛び出し、多目君の元へと走るのです。続きは漫画の方をチェックしてください。
そう、必要なもの。「ざまあ系」に足りないもの。それは良心の呵責です。
「こうするべきだったのではないか?」という葛藤。
これまで底辺として活動してきたものだから、自分が上の立場になったときに有頂天になってしまいがちです。それは仕方がない。自然とそうならざるを得ない。しかし、「もう遅い!」だなんてことはドヤって言うことでもありません。
「育成に失敗したのび太」には多目君をぶつけて、以前の自分を省みせることが有効だと思われます。
ただ多目君単体では難しいものがあります。今回、補助として起用した「配役いれかえビデオ」。その代わりとなるものが欲しいところです。そこについては、作者の皆さんの腕の見せ所とさせてください。
「ざまあ系」書いていて、何かが足りないと思っている方、是非とも多目君の起用を!