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僕は聖女じゃありません!  作者: 神内 焔
第一章   異世界生活の始まり。
7/10

神官長の憂鬱と迷子の野営 4

逃げたは良いけど、道も分からない未知の世界で歩達の運命や如何に。

 先ずは蜜柑の弓から作る事にした。

 適当な太さの硬そうな木の枝を数本切り落として貰い、"分離"で水分を飛ばし、"錬成"で弓のパーツを作って行く。

 次に鞄から園芸用に買って置いたシャベルを"錬成"である程度の太さに調整したバネに作り変える。

 現代日本なら専門の業者に注文して数日は待たなくてはならない事を考えれば破格の能力と言えるだろう。

 弦をどうしようか考えたが、調理用タコ糸とシャベルの余りを"融合"させて強度を間に合わせた。

 正直融合するとは思わなかったが、日本の常識じゃ説明出来ない法則でもあるのだろう。

 後は組み立てて完成、矢は余った木の枝と逃げる途中で倒した鳥型の魔物から矢羽を作った。

 鏃は川辺に落ちてる硬そうな石を"錬成"で形を整え取り付けた。

 折角なので、"錬成魔法"で矢を大量に生産しておく。


 「一応完成しましたが、引き具合とかどうかな?」


 「思ったより軽く引けるから大丈夫っすけど、試し打ちして見ても良いっすか?」


 「勿論、使ってみて駄目そうな所は調整しますから。」


 矢を番え河原の大きめの岩に向けて打ち出して見る。

 ヒュン!と静かな音と共に打ち出された矢が岩に深々と刺さった。


 「な、な、な、何スカこれ!普通の金属の鏃でも中々岩には刺さらないっすよ!あり得ない威力っす!」


 「あれ?普通に作っただけなのにおかしいな……。」


 試しに"鑑定"で弓からと矢を調べて見ると、《トレントの弓》《シルフィードの矢》と出た。

 先程枝を切り落とした樹を見てみると、ゆっくりとだが顔の様な部分がこちらを凝視していた。


 「あわわわわ!モンスターだ!」


 指を指した方を全員が注目すると、トレントがエヘッて顔で頭?を枝で掻いてる仕草をしてる。

 一応臨戦態勢を取った物の、一向に襲って来る気配がない。トレントはその場から一歩も動かずジッと此方を見ているだけ。


 「もしかして、傷を癒やせば襲いませんか?」


 「いやいや歩、熱でもでたのか?そんな訳がってえええええ!」


 トレントは肯定する様に幹を前後に揺すっている。


 蜜柑、桃子、林檎、柚子まで全員がマジか!って顔で絶句している。


 「桃子さん、初級でも回復系のスキル何か有りませんか?」

 「あ〜まて、確かそれっぽいのがあった筈、今説明文読むから待ってくれ。」

 「まだ確認してなかったんですのね……。」


 柚子が呆れる。しかし、皆の顔を見ればいつもの事と笑顔で教えてくれる。

 読み終えた桃子が「なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!」と地団駄を踏み出した。

 

 ヒールフィスト

 回復の魔力を拳に纏い、力の限り殴りつける。威力が高い程回復力が高くなる。


 思わず全員が"うわぁ"って顔をしてしまう。


 「何か殺したいのか助けたいのか判らないスキルっすねぇ。」

 「お姉様らしいと言えばらしいのかしら……。」

 「と、取り敢えずやってみましょう。」


 涙目の桃子がトレントの前に仁王立ちする。トレントも心無しか怯んだ様に枝葉を揺らし、左右を見たりオロオロするが所詮は樹動く事も逃げる事も叶わず。

 覚悟を決めたのか、"さぁ、殺すなら殺せ!"と言わんばかりに両の手?枝を広げて待ち構える。

 よく見ると小刻みにカタカタ震えてるのが見て取れる。地味に芸達者だなと思ってしまった。


 「何かアタシが虐めてるみたいな反応するなよ!回復スキルなんだから死にゃしないよ!…………多分。」

 「そこは言い切って上げた方が安心すると思うんですけど。」


 「あぁもぅ!死んでも恨ら「台詞、桃子さん台詞!」ヒールフィストォォォォォ!」


 白く発光した右拳がトレントに当たると、発光していた部分がトレントに吸収された様に吸い込まれて行く。

 次第にトレントの全身から発光が漏れ始め、切り落とした枝の部分が"モコモコボンッ"と以前程では無いが傷が塞がったと思える様に小さな枝が生えてきた。


 「一応回復したと思って良いんですかね?」


 トレントは嬉しそうに頷いている。


 「痛くは無かったですか?他に体調におかしな所は有りませんか?」


 トレントは身体(幹)のあちこちを見て問題無しとジェスチャーで答える。


 「そうですか、良かったです。でも、枝が元に戻らなかったお詫びにアンプルを差し上げますね。この容器の中には植物に必要な栄養素が濃縮されてるので、欲しい時は容器の頭を折って根本に刺して下さいね。」


 10本入りをトレントに渡すと、早速一本折って根本に刺してみる。

 少しすると、栄養素が吸収出来始めたのかトレントが小躍りする様にワサワサと枝葉を揺らし始めた。


 「あぁ、美味しいですか?良かったです。偶々持っていたのでグッドタイミングでしたね。」


 その会話の光景を見ていた全員が白けた様に感想を漏らす。

 「姉さん、歩っちは何で会話を成立させてるんすか?」

 「アタシに聞くなよ、分かる訳無いだろ。」

 「本来なら微笑ましい光景なんでしょうけど…。」

 「歩凄い。」


 トレントが突然力みだしたかと思えば、頭の枝に花を咲かせ始めた。

 満開の綺麗な花を前に誰もが言葉を失い咲き誇る花に魅入られている。

 やがて花が散り始め、たわわに実を付け始める。


 「え?お土産ですか?全部の実を持って行っていい?人間の間では喜ばれている?」

 「いや、だから何で会話が成立してるんすか?」

 「諦めろ、歩だからとしか答えられん。」


 全部の実を取り終えて一同が再び腰を据えてトレントの実を実食していた。

 結果は好評、瑞々しく程良い歯応えで硬過ぎず柔らか過ぎず。仄かな甘味と香りが癖になる程であった。

 残りは歩のストレージに仕舞い、数個を各自のアイテムボックスに非常食として収納する事にした。


 残りの武器、柚子の槍を100円均一で買って来た包丁を槍の先に取り付け、"錬成"でそれらしく固定したもので我慢して貰った。

 薙刀が良いと柚子が頼み込んだが、鋳造と鍛造の違いもあり今回は諦めて貰った。

 林檎の剣も鋳造品であった為に鍛造加工が必要な刀は見送る事になった。


 程良く腹も膨れ各自の武器も行き渡った所で交代で見張りを立てて眠る事にした。一部歩を抱っこして寝ると我儘を言い始めた某お姉さんを諌めるのに時間を掛け過ぎたのはご愛嬌。





 その頃神官長を始めとする神官兵達も再編成を終えて朝を待ち、聖女、勇者の捜索を始める手筈となった。

 王子は既に王城へと護送中であり、戻って来た神官兵達の報告に怒りを禁じ得なかったが、処罰は後でも出来ると再編成を急がせたのだ。


 一部の馬鹿な神官兵のお陰で捜索が遅延してしまった事に神官長は涙しか出て来ないのも無理も無いだろう。



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