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僕は聖女じゃありません!  作者: 神内 焔
第一章   異世界生活の始まり。
5/10

神官長の憂鬱と迷子の野営 2

 事の事態を他所に魔物の出る森で騒ぎまくる歩とかしましカルテット。

 所詮はぬるま湯日本の学生集団、警戒は必要と頭では理解しながらも騒ぐ事を止められないのは何故か?

 神官長の焦りも知らず、何をやっているのか……。

 「なるほど、つまりそのスキルと言う物を見つけたお陰で狼を倒す事が出来た訳ですね。」


 実は今現在も森の中で野営中である。狼との戦闘の詳細を確認していた。


 「それにしても、剣の勇者、槍の勇者、弓の勇者ですか、まるでライトノベルの様な展開ですね。」


 「あ、歩っちもそう思う?だからだから歩っちのジョブも気になって起きたら聞いてみようって話てたんよ。」


 「あのクソ野郎に力づくで引っ張って行かれたから戦闘職じゃねぇとは予想はしているんだが、魔法職の勇者とかなら力が無くてもおかしくないって意見もあってな。」


 意見は最もたが、"案ずるより一見に如かず"って言葉もある。先ずは確認が先だろう。確認の仕方は先程聞いている。


 「ステータスオープン。」


 「どう?どう?やっぱり聖女?あいつ等は聖女召喚って言ってたから聖女様は絶対に居るはずなんすよ!」 


 待ちきれないと言うように蜜柑がまくし立てる。


 「いえ、"女神に寵愛されし双月の錬金術師"とあります。」


 「「「「!」」」」


 皆の顔が驚きの表情のまま固まっている。謎の称号である事には違いない。唯一分かるのは錬金術師の所だけだ。


 日本でも錬金術師と言う職業は漫画やラノベではお馴染みなので何となくは理解出来るのではあるが、実際にその職業になってみると何が出来るのか皆目検討も付かない。


 「歩っち、ボードをスライドさせるとスキル欄が出るっすよ。」


 言うままにボードをスライドさせて見る。


 スキル一覧


   錬成    Lv 1

精製    Lv 1

分離    Lv 1

融合    Lv 1

鑑定    Lv 1

ストレージ 


魔法一覧


   錬成魔法  Lv 1

探査魔法  Lv 1





「何かうちらとは違って随分と色々な能力があるっすね。寧ろ何か贔屓を感じるっす。」


 「感じるではなくて、しっかり贔屓にされてるのでしょうね……。称号の欄を思い出してみて下さいまし。」


 "女神に寵愛されし双月の錬金術師"


 「つまりあれっすか?歩っちはこの世界の女神様に好き好き大好きって可愛がられて、この過剰なスキルや魔法を与えられてるって事っすか?」


 蜜柑が目を丸くして聞き返すのも無理も無いだろう。当事者の歩ですら信じられないと言う顔をして言葉を失っているのだから。


 「信じられませんが、そうとしか思えませんわ。多分だけど、今現在で与えられる能力がそれで精一杯なのではないでしょうか?」


 つまり今後レベルアップする毎に能力が増える可能性があると言う事だ。誰もが言葉を失っている中、蜜柑がある事に気付く。


 「あれ?歩っちが聖女じゃないって事は、聖女様はまさか……?」


 全員の視線が一斉に桃子に集中する。が、いつの間にか桃子の姿が消えていた。


 辺りを見回すと桃子の姿は直ぐに見つかった。離れた木の陰に蹲って顔を真っ赤にしている。


 「お姉様、聖女様だったのてすか?何故か自分の職業を言いたがらなかったのか解りましたわ。」


 "ふぅ"と溜息にも似た仕草で納得している柚子。


 「ぷっ」とあまり喋らない林檎ですら笑いを堪えている。


 「皆さん酷いです!桃子さんが聖女で何が可笑しいんですか?!」


 「いや、だって歩っち、拳で語る聖女様ってどんな絵面っすか?流石に意外過ぎて想像も付かなかったっすよ。」


 憤慨する歩に蜜柑が飄々と返すが、それでも歩は譲らない。このままじゃ桃子が可哀相と言う気持ちもあるが、歩には桃子が聖女に選ばれた理由も何となくは理解出来ていたのだ。


 「そもそも聖女の定義って何だか分かりますか?」


 「そりゃ、包容力があって。」


 「献身的……。」


 「無償の慈愛に満ちた人物像ですわね。」


 歩の問い掛けに蜜柑、林檎、柚子が答える。


 「貴方方を受け入れ面倒を見てくれる桃子さんに包容力が無いと言えますか?妹さんや弟さん達と一緒に貴方方も美味しい御飯を食べさせて貰って、今日だって僕を護る為にずっと背負い逃げ続けてくれた桃子さんは献身的で慈愛に満ちているとは思いませんか?」


 言われてみると三人とも思い当たる節があり、申し訳なさそうに俯いてしまう。


 隠れていた桃子も木陰から顔を赤くして擁護してくれた歩の顔を感動したような思わぬ援軍を得たような表情で見ていた。


 歩はゆっくりと歩み寄り桃子の頭を自分の胸に優しく押し付ける様に抱え、ヨシヨシと撫でながら慰めた。


 「大丈夫ですよ。僕達は知り合ったばかりですが、桃子さんがとても優しい人だって分かってます。そうで無ければ、僕はあのまま見捨てて置いて行かれたでしょう。狼との戦闘だって意識の無い僕を囮にして逃げる事だって出来た筈です。それをしなかったのは、桃子さんが優しい人だからではないですか?聖女になるべくしてなったと僕は思いますよ。」


 「納得はしたっすけど、こうして見るとやっぱ歩っちの方が聖女様っぽいっすねぇ。」


 「包容力が半端ない……。」


 「この中の誰より女性らしいって何か自信を無くしそうですわ……。」


 「皆さん台無しですよ。何より僕が聖女様な理由無いでしょう?男なんですから。」


 「「「!」」」


 何故か蜜柑、林檎、柚子の三人が驚いた顔をする。あれ?そんなに驚く所?僕、何も変な事言ってないよね?


 「全く違和感無いから忘れてたっす。」


 「言われて見れば確かに……。」


 「も、盲点でしたわ……。」


 何で皆戦慄した様な顔で見るかな。桃子さん貴方もですか……。

 今まで歩の胸に顔を埋めて愚図っていた桃子ですら歩の顔を見て驚きの表情を浮かべている。皆酷いです……。

ちょっと傷付いた歩だった。






 マルニコス神官長はけして楽観視していた訳ではないが、まさかのガリウス王子の暴挙には焦りを感じていた。しかし、兵士達の前で狼狽える様な無様を見せる訳には行かない。


 兵士達の指揮にも関わるだけでなく、そのまま逃亡を図る兵士が出ないとも限らない。


 如何に頭の足りない枢機卿の指示であろうと、王宮に報告もせずに事に及んだ責任は免れないかも知れないからだ。


 如何に現国王が温厚な人物であろうと、良くて王子の廃嫡と現場責任者である自分と枢機卿は国外追放だろう。


 枢機卿の指示での王子への協力、ましてや王子の事前打ち合わせとはまるで違う行動は何処まで言い訳を信じて貰えるか分かったものではない。


 王子の性急な行動のせいで報告の機会も無かったのは痛恨の極みであった。


 「報告します。聖女様、勇者様を見失いました。」


 戻って来た兵士の報告にマルニコス神官長は戦慄する。逃げた聖女様が落ち着いてから面通りを願い、事情の説明と謝罪の受け入れを願う計画が台無しになってしまう。


 もし聖女様がこの国を敵視し、勇者様が充分な実力を身に着けて攻め入ればこの国は終わりだ。周辺諸国もそっぽを向くだろう。その前に私と枢機卿、もしかしたら王子も首を飛ばされる事は間違い無い。比喩では無く物理的に。


 これ以上の兵士を動かすには王宮へ赴き事情の説明、下手をすれば軍を用いて国境の監視をしなければならない。そこに私が参加する事は無いだろう。牢屋に入れられるか、即座に首を切られるか、どうしてこうなった。


 

今年も遂に最後の月、忙しいですね。

なるべく早く更新しますが、まだまだ話数が少ないので皆さんの目に入るのは当分先になりそうです。

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