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僕は聖女じゃありません!  作者: 神内 焔
第一章   異世界生活の始まり。
4/10

神官長の憂鬱と迷子の野営 1

 普段仕事の合間に次の話の構成を練っています。

 書き始めると中々予定通りの展開にならなかったり、予定外の事態を盛り込んでしっちゃかめっちゃかになったり意外と執筆って大変な分楽しいです。


 桃子達が立ち去った後、神官長は即座に周りの兵士達に支持をだす。

 「2名は出て行った勇者様達の動向を監視、絶対に悟られない様に追跡しろ。更に2名は王宮に通達、ガリウス王子が聖女召喚を無断で執行。聖女様と思しき方に狼藉乱暴を働くも失敗。勇者様方が聖女様を連れて逃亡なされたと報告。」



 兵士達の間に動揺が走る。

 「マルコニス神官長、その様な報告をして大丈夫なのでしょうか?」



 無理もない、報告の内容は謂わば国家規模の非常手段の乱用である。本来なら王宮、神殿、ギルド連合の協議の末に国家存亡の危機以上の厄災と判断され無ければ発動不可とされる物である。


 ともなれば、加担したとされる兵士達や神官長も只では済まないはずである。

 自分達の首が飛ぶだけならまだしも、家族や親類にまで類が及べばやり切れないだろう。


 それに、現在国王陛下は病床に着いているとはいえ、別段直ぐにでも死ぬ訳でも無い。公の場にこそ出られはしないが、まだまだ数年は健在であろう。


 ただ、第一王位継承権保持者であるガリウス王子が執務代行を行っているので審議権の一つを行使出来る立場にある。がしかし、第二王子のマルクス王子が書類の精査を行い、ガリウス王子が盲版を押すと言うのが実態である為審議権の行使をさせるのはどうかと言う声が高い。


 また悪い事に、ダグラス枢機卿とガリウス王子の癒着が激しく、ガリウス王子の好き勝手な振る舞いを黙認する代わりに、ダグラス枢機卿にも甘い汁を吸わせると言う腐敗っぷり。


 実態は掴めている筈なのに証拠が一切出て来ない為に未だに捕縛に踏み込めないのが現在の状況である。

 なので、枢機卿もガリウス王子の要請と言えば、二つ返事で中身も確認せずに許可を出したのもこの事態を招いた原因でもある。

 一介の兵士達や神官長に逆らう術は無いだろう。


 「大丈夫だ、全ては枢機卿が責任を取って下さる。我々は枢機卿の指示通りに王子に協力したに過ぎん。例え意に沿わぬ仕事であったとしてもだ。」


 それを聞いた兵士達は安心したのか、テキパキと指示された仕事に移りだす。


 それにしても女性の扱い一つ知らんのか、あの馬鹿王子は。聖女かどうかも確認せずに狼藉を働くとは、もし勇者だったら殺されてもおかしく無いぞ。


 まあ、あの様子だったら聖女で間違いなさそうではあるが、何分女神様の神託が無い状態での召喚だから何が起きても不思議では無い。


 マルコニス神官長はガリウス王子の駄目っぷりと最悪の形で聖女様と勇者様を御迎えしてしまった事態に溜息しか出なかった。






 パチパチと焚き火の火が鳴る音で目が覚めた。

 「お、歩やっと目が覚めたか。」


 少しの間ぼーっとしたまま姉さんと呼ばれていた少女の顔を眺める。


 ヤケに顔が近い気がする。直ぐに膝枕されている事に気付く。


 「うわあ!スイマセンスイマセン!直ぐに退きますから。」


 が、姉さんの手が歩の頭を押さえ付けて逃げようとする歩を膝の上に戻してしまう。


 「遠慮するなよ、いっぱい甘えて良いんだぜ。」


 ニシシと笑う姉さんはとても悪戯好きな様に思えてならない。歩の反応を見て愉しんでいるようだ。


 「離して下さい。話をするにもこのままじゃ話し難いでしょう。」


 「それもそうだな。」


 ぱっと手を離してくれたは良いが、勢い余って起き上がり前につんのめって隣に居た茶髪で派手なパーマのお姉さんの胸にダイブしてしまった。


 「エッチ………。」


 「うわあぁぁぁぁスイマセン!」


 「歩君も男の子ですのね……。」


 今ではマスクも取って自顔を晒しているので、恥ずかしながら胸元を両手で隠す仕草が妙に色っぽい。


 着痩せするのだろうか、中々の弾力だった。と、思考が傾き始めたのを無理矢理元に戻す。


 「あれからどうなったんですか?途中から記憶が無いのですけど……。」


 「単純に気絶してた歩を担いで逃げた。現在絶賛迷子中ってだけだ。」


 「全く解りません。まず、逃げた時の状況から教えて下さい。でも、その前に助けてくれてありがとうございます。」


 深々と御辞儀をした後、姉さん達が狼と戦った事、召喚された場所が森の中にある遺跡らしき建造物だった事、追跡を逃れる為に道を外れて森の中を走った事、段々と森が深くなり迷子になって川に行き着いた事を説明してくれた。



 辺りを見回してみると、川のせせらぎが聴こえる。暗くてあまり分からないが、少しばかり拓けた場所らしい。


 上は星も見えない程の木々に覆われているが、月だけが辛うじて葉の隙間から見える程度だった。


 「あの、あとの二人は?」


 「あぁ、蜜柑は……小さい方な、サバイバル経験があるからって食べられる物を探しに行ったよ。」


 「危なくないですか?」


 「護衛に林檎が着いて行ってる。時期に戻って来るさ。」


 名前が蜜柑に林檎と美味しそうな名前ばかりなので、お腹がグ〜っと鳴ってしまい赤面する。


 「ははは、美味そうな名前だから腹減ってるの思い出したか?そういや、私等も自己紹介してなかったな。」


 ニカッと笑いながら姉さんが自己紹介を始める。


 「先ずは私が"清水桃子"隣が"松林柚子"出掛けてるちっこい方が"甘夏蜜柑"護衛に着いて行ったのが"藤野林檎"だ。」


 「全員果物系の名前なんですね……。」


 「まあ、偶然だけどな。そんな処からレディースのチーム名は"フルーツカルテット"って名乗ってたんだけどな………。」


 桃子の最後の言葉が歯切れが悪くなる。


 「誰も正規のチーム名で呼ばなくなったんですのよ。」


 柚子が頬に手を当てて溜息を吐いた。


 「爆走フルーツ。爆走してるのはお姉様だけですのに……。」


 「仕方ねえだろ!特売に遅れそうになるんだから。」


 桃子が無気になって反論するが、随分所帯染みた理由である。


 「何でまた特売に?」


 「あん?そりゃ弟と妹のめしを作る為に決まってるじゃねぇか。」


 何とも家庭的で見た目からは想像も出来ない理由だ。ギリギリ茶髪と言えなくもないが、ほぼ金髪に近い気がするロングヘアーの今時珍しいヤンキーお姉さんが料理してるのは何とも新鮮な気がする。


 「歩、今変な想像しただろ。別に私の髪は染めてる訳じゃねぇからな!母方の爺さんがイギリス人で、私の髪は覚醒遺伝とか言うやつらしいってだけだ。」


 なるほど、道理で脱色にしては髪が傷んで無い訳だ。あの元気な小さい娘…蜜柑ちゃんだったか、あの子は完全に脱色だったから桃子さんもてっきり。


 「すいません、勘違いしてました。」


 あまり気にした様子も無く桃子はニカッと笑う。


 「いいよ、慣れてっから。学校の先公何か理由も聞かずに明日までに染めろってうるせーからな。」


 酷い話である。地毛であるにも関わらず黒くなければ認めないとは、教育者がそんな者で良い筈が無い。


 話が逸れた。その辺の話は無事に戻れてからで良いだろう。


 「戻ったっすよ〜。いやあ、大量大量。あ、歩っち起きたんだ。」


 「お帰りなさい。大丈夫でしたか?すいません御迷惑掛けて。」


 「あはは、他の三人は兎も角、私はタメだから普通にタメ口でいいよ。名前教えてなかったね。私は蜜柑、蜜柑でもハニーでも好きに呼んで良いよ。って、おぉ〜姉さんが怖い怖い。」


 巫山戯てブルブル震えている蜜柑の反対側で射殺しそうな顔で睨む桃子が居た。


 「あはは、冗談、冗談。適当で良いからね。」


 「じゃあ、蜜柑ちゃんで。」


 「何かこそばゆいっすねぇ。まぁ、それでいいっす。」


 そして、隣に無言で佇んで居たクールなお姉さんこと、林檎さんが自己紹介する。


 「林檎……。」


 「林檎さんですね。宜しくお願いします。」


 「林檎……。さんは要らない。」


 「でも、僕は年下ですし……。」


 「呼び捨てでいい、その代わり私はあなたと呼ぶ……。」


 「い、いやそれは……。」


 「ア・ナ・タ。先ずはお風呂でする?ベットでする?夜伽をする?」


 「何言ってるんですか!」


 またも桃子が睨みつけているが、若干涙目なのは割愛して置こう……。本人の為に。



 「ワタクシは自己紹介も終わってますから、あんなはしたない事は言いませんわよ。歩さん、私の事は柚子お姉様と呼んで下さいまし。あ、やっぱり良いですわ。普通に呼んで下さいまし……。」


 自分で言ってて赤くなる柚子。ちょっとカワイイと思ってしまった。


 けど、いい加減ご飯にしたいなどと思う歩だった。


 あ〜森を抜けるの何時になるのかな?


12月06日  行間修整

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