表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は聖女じゃありません!  作者: 神内 焔
第一章   異世界生活の始まり。
2/10

異世界に拉致されました。

やっと第一話

 眩しい光が消えて目を開けると、其処には10人程の人達が居た。着ている服が妙に古臭いデザインに見えるけど、歴史上にもこんな模様の入った服は無いのではないだろうか。


 周りを確認すると立っているのは石造りに材質の分からない物で造られた魔法陣らしき物の上だった。

 そこ迄確認して気付いたけど、さっき迄一緒に居たレディースのお姉さん達が僕にしがみついて居た。

 道理で動き難かったはずだ。地味に色々な所が当たってるので、平静を保つのに苦労する。ポヨンポヨンと中々の弾力……イヤイヤ今はそんな事より何が起きたのか自体の把握に務めなければ。


 改めて周りを見渡す。どうやら講堂のような場所ですり鉢状に席が設けられた広間の中心に居る様だ。

 広さは学校の体育館程の大きさにみえる。左右に出入り口と主しき両開きの扉があり、何方もしっかりと閉じている。


 後ろから抱き着いているお姉さん、確か姉さんと呼ばれていた人の鼻息が段々と荒くなって来ているのに気付いた。

 「あの〜そろそろ離れて貰えませんか?動き難いので。」

 両腕と前から腰に抱き付いているお姉さん方からも、ハァハァとかグヘヘとか事態に恐怖しているのとは明らかに違う声が聞こえて来てる。

 腰に抱き付いているお姉さんなんかは、微妙にスリスリしてるように感じる。駄目です、其処は刺激しちゃ!


 多分周りの10人程の人達が何も喋らないのは、この状況に唖然としているからなのではないだろうか?


 「グヘヘ、もうちょっと。もうちょっとだけたから……ね。」

 「もうちょっとじゃないですよ!状況を確認しなきゃならないんですから。見て下さい、周りの人も唖然として誰一人一言も喋らないじゃないですか!」


 不機嫌そうに顔を上げて周りを見回した姉さんが【もう面倒だから姉さんで通す】今更に状況を理解したようだ。

 「あん?何だお前等。見せもんじゃねぇぞ。」

 「ちょ…まだ安全かも分からないんですから、もうちょっと穏便に。」

 「いやぁ、外国人みたいだし言葉通じないだろ。」


 にひひと悪戯っぼく笑って見せる姉さん。

 取り敢えず離れて欲しいと言う願いはスルーされた模様。


 突然バン!と言う音とあげて扉を開き、ズカズカと入って来た18歳前後の金髪碧眼の男ががなり立てた。

 とはいえ、服装から高位の人物であろうとは伺えるが、その顔付きが如何にも悪ガキ然とした我儘そうに見える。

 「聖女の召喚に成功したと言うのは本当か!?」

 「ガリウス様、まだ誰が聖女か確認が出来ておりませんので……。」

 「何、問題無い。聖女とは見た目麗しいと文献に有った。ならば、彼女が聖女に違いあるまい。」

 意気揚々と得意気にビシッと指を指した人物は事もあろう事か僕だった。

 はい?


 ガリウスとか言う人がツカツカと僕の前まで歩いて来ると、いきなり腕を乱暴に掴む。

 「来い!」

 「イタッ!痛いです。先ずは状況の……。」

 姉さん以下3名から乱暴に引き剥がした僕を、引き剃る様に連れて歩き出す。

 「黙れ!お前は俺の言う通りにしてれば良いのだ。」


 さっき召喚とか言ってた。まさか異世界召喚?イヤイヤまさかでしょ?混乱する頭で考えられたのはそこ迄だった。

 兎に角凄い力で腕を掴まれている為に痛みの方が先立ち何も考えられない。あ、いかん涙が出てきた。


 「てめぇ!うちの天使に何してくれてんだ!」

 姉さん以下3名が殺気立つ。天使って何ですかぁぁぁぁ!

 走り出そうとする姉さん達の前に、剣を持った人達が立ちはだかる。もしかして、兵士なのだろうか?

 射殺しそうな顔で睨み付ける姉さん達に、心無しか怯えた様に見える兵士達。

 すると、兵士達とは異彩を放つ人物が前に進み出た。

 「お待ちください、勇者様方。」

 「勇者ぁ?寝ぼけてるのかオッサン!」

 「はっ!もしやこれは……。異世界召喚?」

 お姉さんズの一人が、私気付きました!とでも言うように声をあげる。

 「何だ、林檎思い当たる事でもあるのか?」

 林檎と呼ばれたお姉さんが、人差し指と親指だけを開いた手を顎に当ててしたり顔で解説する。

 「これは今流行りのラノベや漫画等にある異世界召喚に違いない。」

 「あたしはそう言うのは見ないから分からんけど、間違いないのか?」

 「うん、多分だけど間違いない。」

 「何やらハッキリしないけど、お前が言うならそうなんだろうな。」


 信頼関係が半端無い。其処はやはり仲間と言う物のなせる業なのだろうか?

 「オッサン、事情くらいは説明してくれるんだろうな?」







 僕が連れて行かれたのは、通路を只管歩いた先に一つだけあった部屋だった。

 中には今時見ない天蓋付きのベッドと部屋の壁際に置かれている家具が一つだけと、テーブルに椅子が三脚のみ。

 想像したくは無いが、これから起こる事に嫌な予感しかしないのは気のせいではないだろう。

 乱暴にベッドに放り投げられた僕はバウンドしながらベッドの中央に着地した。

 いや、転がったと言う方が正解だろう。正直脂汗が止まらない。


 「お前には俺の妃になって貰う、異論は認めん。」

 身体の奥から湧き出るような震えが全身を支配する。何を思ったのか、この男は僕を嫁にすると言い出した。脳味噌が湧いているのだろうか?男の僕に向かって妃とか正気の沙汰とは思えない。


 「本来なら風呂に入って貰ってから事に及びたい処ではあるが、時間もない上に余計な邪魔者が来ないとも限らんのでこのままで許せ。」


 理解したくもない事を宣いながらベッドの上に変態野郎がジワジワと上がり込んで来た。

 一歩変態が進むと、僕も一歩後退る。涙で視界が歪み始めた。

 あぁ、コイツサドっ気もあるんだなと現実逃避気味な事を考えながら後退るのも限界に来た事を悟る。

 背中に当たる壁が恨めしい。

 変態がニヤリと笑いながら一気に飛び掛かる体制に移る。

 「観念しろ。時間が無いとはいえ、流石に兵士達に周囲を見張らせて居るから早々邪魔者が来る事は無い。」

 何を得意気に言っているのか。要は集団で誘拐、強姦などの犯罪をしてるって事じゃないか。

 身形は良いけど、犯罪グループなのではないのか?お巡りさん呼ぶぞ!お巡りさ〜んこの変態が犯人です。


 「あ、あの〜。実は僕は男の子なんですけど……。」

 変態始めて近付くのを止め、さも可笑しそうに笑い出した。

 「はっはっはっ、まさかこんな見た目麗しい者が男な訳あるか。嘘を付くならもう少しマシな嘘を考えたらどうだ?」

 ですよね〜。日本でも知ってる人以外は、必ずと言って良い程お嬢さん扱いだったし。

 以前なんか市民プールの男性更衣室に入ろうとしたら、係員が飛んで来て有無を言わさず女性更衣室に放り込もうとしたくらいだし。

 

 溜息付くと同時に右側にコロコロと転がって自分の容姿に泣きそうになっていると、今まで居た場所からゴン!と物凄い音がした。

 振り向いてみると、壁にヒビが入る程盛大に顔面アタックを決めた変態が気絶していた。ラッキー♪


漫画みたいなオチだけど、危機を脱する事が出来たので良しとする。





 「その勇者様ってのは何だ?キビキビ答えねえとしばくぞコラ。」

 オッサンと呼ばれた人物は気分を害した様子もなく恭しく頭を下げ説明を始めた。

 「先ずはステータスオーブンと唱えて頂けますかな。」

 姉さんを始め四人全員が顔を見合わせ、一斉にステータスオーブンと唱える。

 自分の前に少し離れて出現したステータスボードに驚愕の顔を顕にする。


 「ステータスボードは自分にしか見えませんし、他にステータスを他人が確認出来る物は名前と年齢、賞罰等の確認しか出来ませぬ。なので申し訳有りませんが、職業若しくは称号の欄を御教え願えませんか?」


 お姉さんズの一人が頷き正直に職業と称号を教える。

 「職業は勇者、称号は"異世界に拉致された弓の勇者

"になってるっす。」

 すると、オッサンは苦虫を噛み潰した様な顔で謝罪をした。

 「誠に申し訳有りません。やはり本来の神託による聖女召喚で無ければ称号に差異が出るようでありますね。」

 「何だよ、その差異ってのは。」

 「女神様の神託に従って執り行う聖女召喚ならば、称号に"女神の祝福に召喚された○○の○○"となる筈なのです。」


 「蜜柑、その弓の勇者ってのは何だよ。」

 蜜柑と呼ばれたお姉さんズの一人一番背の小さかったお姉さんが、ん〜と口の下に人差し指を押し付けながら言う。

 「多分だけど昔から祖父の弓道道場に通ってたから弓の適正があったんじゃないっすかね?祖父が亡くなってからは道場も閉めちゃったから今は行ってないっすけど。」


 オッサンに向き直ると一層厳しい目付きで聞き返す姉さん。

 「で?それが何だって言うんだ?それよりうちの天使様を返すのが先じゃねえのか?話はそれからだろうがよ!」

 最早視線だけで殺せるのではないかと言う程にオッサンを睨み付ける。

 何も言えないオッサンからはもう情報は引き出せないと考えた姉さんは、オッサンから視線を外すと歩が連れて行かれた通路へと歩き始める。


 道を塞いでいた兵士達も姉さん達の剣幕に怯えた表情で見送るしか出来なかった。

 兵士達もオッサンも知っていた。戦闘職の最高峰である勇者は、一般の兵士達など歯牙にも掛けない程の力を有している事を。

 そして、連れ去られた天使と呼ばれていた少女が勇者では無いと言う保証も無い以上、下手に手出しすると先程乱暴に連れ去った王子の身の安全も保証されないと言う事も。

 だが、第一王位継承権を持った王子と言えども、ここ迄の暴挙に出る事を誰が想像出来ただろうか。

 

 そして、暴挙に出た王子は民衆からも兵士達からも嫌われていた。勿論さっきからオッサン呼ばわりされていた神殿の神官長ですらも。

 だから巻き添えを覚悟で王子を助けに行く者は皆無であった。

 自業自得である。いざとなれば何とでも言い訳が出来る状況でもある。だから兵士達や神官長に類が及ぶ事もあるまいと………。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ