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6話 修行の始まり

それから少し経って、今、師匠と僕は師匠の家(魔の森の中心部)に向かって歩きながら自己紹介をしていた。襲いかかってくる魔物は全部師匠が瞬殺してくれるので、久しぶりに堂々と歩ける。


「では、貴方様の名前をうかがってもよろしいでしょうか?」


あぁ、そういえば師匠とか弟子とかそれ以前にまだ名乗っていなかったな。


「僕の名前は影川俊です。これからよろしくお願いします。」


「はい、よろしくお願いします。では、シュン様、とお呼びすればよろしいでしょうか?」


師匠はとても丁寧に僕に接してくれる。それは嬉しいことだ。だけど、何か違う感じがする。


「いえいえ、俊でいいですよ。僕は師匠の弟子になったわけですし。」


「でも……」


「いえいえ、師匠っていうのはこういうところで威厳を保たなくてはいけないものなんですよ、多分。というわけで、はい、せーの!」


僕がそう言うと師匠は少しあわあわしながら、


「シュン、君?」


と、戸惑いげに呟く。師匠のリアクションが可愛すぎてキュン死しそうだ。


「はい。師匠の弟子の俊です。よろしくお願いしますね。」


ここで僕は師匠最大の謎について聞く事にした。


「ところで成長途中とはいえ勇者パーティーですら倒せるかどうか危うい魔物をゴミのようにあしらっている師匠は何者なんですか?」


すると師匠は少し考えて、


「世界で一番偉大な方の弟子です。」


と言った。


その言葉からはとてつもない重みを感じた。でも、師匠よりすごい人ってどれだけすごい人なんだろう。想像もつかない。


「僕がその方と会う事って出来ますか?」


「ええ、出来ます。」


「おぉ!じゃあ後で会わせてくださいよ!」


「違いますよ、シュンくん。貴方が師匠と会えるのはただ一回だけ。それは貴方が………………た時。時が来るのを待ってください。そうすれば貴方は…………………ます。」


師匠が意味の分からないことを言い出した。


「師匠!よく聞こえなかったんですけ………」


「着きました!ここが私と、シュンくんのお家です!」


はぐらかされた………と思いながら顔を見上げると、そこには魔の森のあの禍禍しい雰囲気とは似ても似つかないような屋敷があった。


「うわぁ!す、すごいですね!これ、でもこんなに大きいのに何で魔物が寄ってこないんですか?」


「魔物避けの結界を張ってるからです。」


師匠は何でも出来るんだな。と、師匠の師匠の話を忘れてはしゃぐ。それにしても師匠の師匠って分かりづらいな。


「まぁ、こんなに大きくても私一人しか住んでいなかったので、意味がなかったのですが。」


「なるほど。」


それで僕を連れてきたってとこか。


師匠に連れられて屋敷にはいると、


「じゃあ、とりあえず部屋に案内しますから、休んでおいてください。」


と、師匠。


「ちょっと待ってください、僕、少しでも早く強くなりたいんです!だから訓練をさせてください!」


「………では、シュンくんは何のために力を求めるのですか?」


僕が何のために力を求めるか、そんなの決まってる。


()クラスメイトともう一度話し合ためです。あいつらは僕の話に聞く耳も持ってくれなかった。だけどあいつらは少しの間とはいえクラスメイトだった連中です。何らかの誤解を解けるなら解いておきたいんです!」


「……分かりました。では、私はシュンくんを全力で鍛えると誓いましょう。早速ですが、シュンくんには訓練をしてもらいます。その訓練はすべての訓練の基本となるものです。」


おぉ!すべての訓練の基本!何か凄そうだ。


「その訓練とは、」


その訓練とは?


「睡眠です!」


睡眠?


「と、いうわけでシュンくん、部屋に案内しますのでーーーー」


「待ってください!それじゃあさっきと変わらないじゃないですか!」


「では、シュンくんは今の自分の状態を考えても、同じことが言えますか?今の貴方の状態で訓練をしたとして、それが効率的なものになると本気で思いますか?」


そう言われてはっとする。今の僕の状態は睡眠不足、過労、空腹と三拍子そろっているくらい酷いものだった。


「分かりました。師匠の言うとうりにします。」


「はい!シュンくんがわかってくれて、嬉しいです!では、着いてきてください。」


師匠が上機嫌で僕を先導する。屋敷の中は静まり返っていて、しつこいようだけどマジでこの屋敷には僕と師匠しかいないって再確認した。あれ?これ、ちょっとアブない状況なんじゃ!?


「シュンくん、それ以上破廉恥なことを考えるようなら私にも考えがありますよ?」


気づいたら師匠の満面の笑みが息のかかかるような距離にあった。笑顔こえぇぇぇ!


って、そういえば師匠、読心術使えるんだっけ。すっかり忘れていた。


「す、すみません、」


「シュンくんだから一回は許しますよ!でも次は…………


ということなので気を付けること!」


「は、はぃぃぃぃぃぃッッ!!」


師匠こわっ!


師匠から殺気が飛んでくる。


くない!くない!師匠マジ天使!


今度は師匠が光悦とした表情でくねくねし始めた。


「シュンくん!ここがシュンくんのお部屋です!」


そうこうしている間に部屋についたようだ。さてさて、どんな部屋だろうな。


と、すこし期待して中を覗くと、皇城にいたときの僕の部屋とは比べ物にならないくらいゴージャスな部屋が広がっていた。


「こ、これは……凄いですね。ありがとうございます。」


「いえいえ、これくらいの部屋なら有り余ってますから。でもここは、その部屋の中で一番いい部屋なんですよ。」


「ありがとうございます!では、ここを使わせていただきます。」


「気に入っていただけて何よりです。では、朝食までゆっくり寝ていてください。時間になったら起こしに来ますね」


「何から何まですみません。」


「いえいえ、大丈夫ですよ。シュンくんは私の唯一の弟子ですから。」


「改めて言われると、何だか実感が湧かないですね。」


「大丈夫。時間はあるんです。ゆっくりと慣れていきましょう。」


「分かりました。」


師匠は満足げに頷くと、


「では。」


と、言い残して去っていった。


そして僕は早速ふかふかのベッドに潜り込むと、久しぶりのしっかりとした眠りへと誘われて行った。


この後地獄を見るとも知らずに。





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