4話 遠征訓練にて
朝、暖かくとても心地のよいまどろみ。今僕はベットの上で起きないといけないのに布団が離してくれない、あの現象に悩まされていた。
今日は遠征訓練。健の計略に負け、僕も行くことになってしまったのだが
行きたくねぇ。はぁ、中止にならないかな。
と、考えはじめてしまっている、さすがしばらくぐうたら生活を送っていた僕である。でも最近やることがなくなってきていたのでちょうど良いかな、と、自己暗示をかけ、無理矢理ベットから出る。
顔を洗い、身だしなみを整えて、ご飯を食べて、荷物を持つ。そして再びベッドにもぐrーー
「おはよう俊! ん? 何で二度寝しようとしてるの? 準備は出来てるじゃんか。行くぞほらほら!」
ーーることはできなかった。健がきてベッドに潜ろうとしている僕をひっぱりだす。くそぅ、血も涙もないやつだ!
「はいはい、じゃあ行くぞ! 皆待ってる。」
と、思ったら健が僕を引っ張って最初に僕たちが転移した部屋につれていく。
「いやいや、ちょっと待て! こちとら寝起きだぞ!」
「大丈夫さ、早く来いよ!」
でかい扉が見えてきた。あの奥に俺のことをめっちゃ睨んでくる騎士、魔術師、王様らがいると思うと何だか憂鬱な気持ちになってくる。
けど、逃げることはできない。何故なら加護職業の中でもトップと呼ばれている聖勇者を持つ健が僕の手を離さないからだ。はぁ。もういろいろと諦めよう!
扉の前に着く
「どうも、王様、健です! 俊を連れてきました!」
扉が開く
中には騎士や魔術師、王様、そしてクラスメイト達が僕の方を蔑んだ目で見てくる。
「よくぞ来た! 健殿。」
なぜだ? なぜクラスメイト達まで僕のことを蔑んだ目で見てくるんだ?
「では、遠征訓練に行ってくると良い。予定通り護衛として我の騎士を何人か同行させる。良いな?」
「はい! お気遣いありがとうございます!」
「うむ、これくらいして当然だ。我らの未来はそなたらにかかっているのだからな」
と言って王様が手を叩くと、後ろにいる騎士さん達の中から特に強そうな者達がでてくる。そしてその騎士達の中でも一番偉そうな人が出てきて、
「私は今回、勇者様達の護衛を務めさせて頂きます、近衛騎士団、団長のアロンと申します。どうぞよろしくお願い致します。」
「こちらこそよろしくお願いします。では、早速ですが…」
「あぁ、行って来い。勇者達よ、この遠征訓練でいろんなことを学んでくるのだ!」
「「「「「はい!!」」」」」
って言うか俺完全に空気じゃねぇか! そもそも俺いなくてもよくね? ってマジか。皆行っちゃったじゃん! 着いてかないと!
クラスメイト達を追いかける。すると皆はもうそれぞれ自分の馬車に乗ってる。早っ!
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺はどれに乗れば良い?」
「あ!こっちこっち!」
と、健が僕を明るく呼ぶと、皆が尊敬のこもった目で健を見つめる。しかし、健はそれに不自然なくらい気がついていない。まぁ、あいつは昔から鈍感なところあるからなぁ、と考えながら健の馬車に向かう。馬車に乗っているのは僕達二人だけだった。
「なあ、今回の遠征訓練では何をするんだ? っていうか俺、お前のせいで本当に何も知らないまま来たぞ!」
「今回の遠征訓練での目標は実践に慣れることと、連携力を鍛えることだ。そのために今からEランクモンスターのゴブリンがいる森、正式名称がゴブリンの森って言うところに行くんだ。」
そのまんまだな。
「あぁ、そうだな。でも油断していると隣接している魔の森っていうA、Sランクモンスターの巣窟になってるデンジャラスな所に迷い込むぜぇ?」
「今ので一気に行きたくなくなったな。っていうかナチュラルに人の心読むのはやめろ!」
「はいはい、わかったよ。」
「そういえば、その魔の森とやらのモンスターがゴブリンの森に来たらどうするんだよ!」
「それがな、なぜか魔の森のモンスターはその外に出ることができないらしいんだよ。だから王様もまだ高ランクモンスターには勝てるかどうか微妙な俺たちのことを快く送り出してくれたわけ。」
なるほど。
「ところで、ひとつ良いかな健くん!」
「な、なんだい、俊?」
「何であんなにスピーディーに俺を連れ出した? もう少し説明とかあっても良かったんじゃないか?」
「いやさぁ、説明とかしてる間にやっぱ無理、とか言われそうだったからね。」
お前の予想は正しいよ、健。
「あ、やっぱそうだったか!」
「だから人の心を読むのはやめろぉぉぉぉぉ!」
と、そんなこんなしているうちにゴブリンの森に到着した。よく目を凝らすと奥の方にゴブリンが見える。おおぉ、これぞファンタジー!
他の皆も到着したみたいだ。すると健が大きな声で皆にこう言った。
「よし、では早速だが今日はグループに別れて各自探索してもらう、ではグループを発表する!ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上だ。まずはグループごとに固まれ!」
俺は健と別のグループだった。そしてそのグループの皆が集まっている場所に言っても、相変わらず舌打ちされた。
「よし、皆固まったな。ではそれぞれのグループに近衛騎士さん達は3人ずつ入ってくれ!」
3人の近衛騎士が僕のことを冷たい目で見ながらやってくる。
「では、各グループ、途中で出くわさないよう、別の方角に、出発!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」
こうして遠征訓練は幕を開けた。
そして僕はしばらく進んだところで、勇気を出して、
「なぁなぁ、何で俺のことそんな目で見るんだよ!」
と、聞いてみた。
すると、皆はあり得ない物を見るような目で僕を見る。そして次々に言う。
「チッ、成績下位者が話しかけないでくれない? 穢らわしい!」
「え? なんで分かんないの? 超あり得ないんですけど?」
「うん、確かにこれは分かっててほしかったな」
「え? 逆に何で分からないの?」
何でだよ……僕は本当になにもしていないのに。ん? なにもしてない? そうか! 皆が訓練を受けている間に僕がサボっていたから怒っているんだ!
「ごめん! 訓練に出なかったのは悪かったよ! これからはちゃんと参加するから!」
しかし現実はそう甘くないようで、
「は? この成績下位者は何を言っているのかしら、皆が怒っているのはそこじゃないわ。そんなこともわからないなんて反省する気はまったくないようね!」
「「「そうだそうだ!」」」
じゃあ皆は何に起こっているんだろう、僕は歩きながらゆっくりと考える。すると、
「ふぅ、ここら辺で良いかしら? お願いします。」
と、絵里さんが呟くのが聞こえた。その瞬間、僕の体が近衛騎士に抱えられ、運ばれる。運ばれる先は……
ま、まさか、この先にあるのは、
魔の森?
『あぁ、そうだな。でも油断していると隣接している魔の森っていうA、Sランクモンスターの巣窟になってるデンジャラスな所に迷い込むぜぇ?』
「お前、追放な。」
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