ーInsanis insanus de viris qui de mulieribus et mulieribus,ー
ーーあれから暫くして、とあるゲームの周年記念が迫って少しずつ活動を見せ始めた高村侑花についてある程度纏めつつ彼女が居るとされている大阪府八尾市青山町の地理を調べながら彼女に関する記録を大小問わず取り続けていた。
まだ、もっと取れる。明らかに彼女は難病じゃない。永く生き過ぎている。
今も生きているのは生への異常な程の執念が根底にあるからなせる事かもしれないのか、と思いつつもこの程度ではまだ足りないと沙和は仕事の傍ら記録取りを続けていた。
ただ仕事をして日々を過ごす中、リアルタイムという訳にはいかない。其の為二見を始めとした従兄弟の一を含めた数人の協力してくれる人物は心強かった。
そんな中、端末の通知音が彼を呼び寄せた。
「LEINの通知か…二見さんからだ」
通話の可否を求める画面。相手はどうやら二見らしい。侑花に関して近況か新しい情報でも得たのだろうか。
内容はともあれ、二見からの着信に応える。
『おっ、もっし?忙しかったら悪いね、奴さんのアカウントの最近の状況直接話して伝えようと思ってさ。元気にしてるか~』
特徴的なもしもしからの彼らしい緩い話し方から始まる。ああ確かに二見さんだ。
「近況?どんな感じにしている?」
二見の言葉に記録を取っていた手を一旦止め、彼の言葉に耳を傾ける事にした。
『いやぁ~一通り見てみたけど大体ジャンヌちゃんジャンヌちゃんジャンヌちゃんジャンヌちゃんだよ。もうバカの一つ覚えみたいに狂ってるのが見ていて面白くってさ、あ~ついでに魚拓は取ったし奴さんが上げてるもののURLも一通り。あとは…何か…?そのジャンヌちゃんってのが出てくるソシャゲの絵をひたすらリツイートばっかりしてるよ』
二見は呆れと笑いを堪えながら高村侑花の近況について話す。
『んでそっちどうなの?動きとかある?』
「あるな、周年記念が近いらしいからか昨日は深夜0時か1時頃にログインしていたらしい。先程見たけど5時頃に再度ログインしたみたいだ。周年近くで勢いと調子に乗ると思ってるから活発になるんじゃないかと見越してる」
『ああ~あとそういえば14日辺りに『小話載せてたサイト、だいぶ話増えてごちゃごちゃしてきたから明日辺りに消します 読んでくれた人ありがとうございました!』って呟きがあったからサイトの運営してたみたいだぜ、ただ消しちゃったぽいけど。あとエンジニア自称していた。最近はシステム系の仕事してないとか続けて呟いてたけど』
すると今度は通知音が鳴る。
『ほら、スクショにして送っといたから見てくれ』
二見から送られた幾つかのスクリーンショットは
『新ミニジャンヌちゃんがダークジャンヌだった場合、「これが大人の力だ」っつって預金下ろす準備は出来てる』
『ドレスジャンヌだったら下手しぃイラストレーターさん100人くらいに依頼してジャンヌちゃんオンリーイラスト本作成プロジェクト立ち上げたいまである』
新しいものだと『■■先生がジャンヌちゃんに指輪あげててにっこり(*^_^*)(*^_^*)(*^_^*) お父様にも愛されてるジャンヌちゃん!』
…と、高村侑花がジャンヌちゃんジャンヌちゃんと狂った様に呟いているものが多かったが『仮にもエンジニアのくせして未だにデスコットの使い方がわからん』や『最近ほぼシステム系の仕事してないけど』といった内容のものもちゃんと載っていた。
『まあとりあえずは送ったからさ近況、あ!ちょっと思い出した事あったんだった!!悪い!!この辺にしとくわ!またな!!』
一方的ではあったが二見からの通話は終わる。彼が送ってくれた彼女の近況を再度見ながら、沙和は再び記録を取り始めた。
ーー同刻、二見のオフィス内
「ふ~ん…………」
顎に手を添えながら、彼はパソコンの画面で彼女達のアカウントを見ていた。
鍵を掛けずに開けたままである為、ログインの必要無く彼女達の様子を好きなだけ見る事が可能になっているのだ。
もし全て見る事が出来なくとも、非公開リストに入れるなりしてフォローさえしてなければ、向こうには到底気付かれない。ヲチと言えば良い響きでは無いが、相手の様々な個人情報がいとも容易く得られるのは青い鳥ならではだろう。
「ほ~、大体予想は付くけど表向きのdendenとの遣り取りが確認されてなかったから繋がりを隠してるものかと思ってたがリツイートしてるからしっかり癒着してるんだな…」
彼のパソコンのウィンドウは複数の画面を表示している。片方は高村侑花、もう片方は彼女のリツイートを経由してdendenのアカウントを。
「C0_AYNにdenden_kntn……」
高村侑花は朝から深夜までほぼ呟き続けており、此処最近は殆どリツイートとジャンヌ狂いに染まっている。
またdendenは相変わらず「ソフィアちゃん」と■■の二次創作を描き続けているらしい。
…一応高村侑花だけで無くdendenについても彼は其れなりに情報を得たり考えはしている殆どは侑花を中心にしている。理由は簡単、高村侑花があらゆる人物の情報源となるから。自分自身すらも。
彼女の普段の趣味等も相俟って、二見はこの様に彼女を考えている。
『彼女が描く「ソフィアちゃん」は「denden本人を■■■■■■■■という原作に落とし込んだ存在」なのだろう』と。
以前に沙和の口から「この人物の描くソフィアちゃんというキャラクターは自分が最も可愛いと思うものを全て詰め込んだ存在だと書かれていたんだ」と聞いていた。
自分に結び付くものが多い程、大体の場合は自分自身となる。始めこのソフィアというキャラクターはこの原作のキャラクターなのかと二見も勘違いした。
然し幾ら調べても必ずこの在日中国人のアカウントに辿り着く為、彼女が作り出したものだと粗方把握するに至ったのである。
其れはさておき、頻度の多いーー寧ろアカウントが本拠地な高村侑花とは違い、複数アカウントではあるだろうがdendenの方は殆ど稼働している様には見えなかった。侑花とDMでもしているだろうし、見えないだけリプライ等はかなり多いのかもしれない。
文章らしいものは確認されているが2月の内容。
『■■■■■二人ともお酒飲めるけどソフィアちが酔ったらうざくなる話 ■■君が飲もうとしたグラスをひったくって「ちょっ、それ僕のだよ」って笑う■■君に、空中をふよふよくるくる回りながら「えへへ〜天使の取り分〜!」って笑顔で飲んで速攻で潰れるソフィアち、かわいいね』
『ひったくられた■■君に自分の空きグラス渡して「天使の取り分〜」ってそのグラスと小さく乾杯して元気に潰れるんだろうな かわいい 天使の取り分:ワインやブランデーを始めとする蒸留酒の熟成中に水分/アルコール分が蒸発して製造量が減る現象 天使(比喩ではない)の自身とかけた高度(?)なギャグ』
後は画像形式にした彼女の多少の吟遊も交ざったメルヘンな考察や解釈。公式の周年記念に向けられた二つ程のファンアート、固定は2月19日のソフィアちゃん。心無しか少しだけだが、恥じらいを見せるソフィアちゃんの中に妙に淫らなイヤらしさを感じる。白だからか。
「……………………」
一通り見た後アーカイブ化の為にページを保存し、再び高村侑花のアカウントに切り替える。スクリーンショットにして送った部分以降は侑花ちゃんのリツイートターイム!とでも例えられる程の狂ったリツイートの嵐だった。懲りた様子は全く無い様子に小さな笑いが溢れる。
(この感じだと…あれか、沙和や前に虐めた数人の奴が最近大人しい様子なのを見て仲間達と調子に乗って公式さん味方に付けもっと弱らせてからトドメ刺すつもりだろうなあ、女って恐ろしいね…特に高村侑花とdendenって奴は)
電子煙草を一吹かし。
「んー、さて…と、エンジニアねぇ」
彼の手がスマートフォンを取る。慣れた手付きで誰かに掛け始めた様だ。
もしかしたらエンジニア関係で彼女を割れるのでは、と二見は思い立ってエンジニアの知り合いに掛け合ってみる事にしたのだった。




