ーDominam conturbatusー
「クロさーーーーーーーーーーん!!!!!!!」
シヨこと嵩町有夏はSNSで騒ぎ始める。
彼女はほぼ毎日をーーゲームとSNSを行き来しながら、SNS上で長く繋がっている者達とどんちゃんどんちゃん、宴の様に騒いでいた。
有夏が此処最近取り上げる話題は殆どがとあるゲームの話……厳密には「そのゲームの世界観を下地にした、他人の創作物」の事ばかりだった。
原作を愛する以上に、自分や他人の其の創作物を異常な程愛し、彼女は喜び歌う様に創作物のキャラクターで動画を作った、あの人が投稿サイトに小説を上げた、あの子が■■くんと■■■■ちゃんの絵を上げた、等とよくポンポン打ち上げていた。
「■■くんに関するディベートは楽しい」
有夏はそう呟いた。
討論。敢えて意識の高い文化的表現を以て語る。宛ら博識啓蒙な女傑の様。
当然、彼女は所謂「お嬢様」と扱われるご身分の御方なので、そんじょそこらの平民なんかとお戯れ遊ばせるなんて事は殆ど無い。
最初の方で出たクロさんとやらも、何時もよくくっ付いて乳繰り合っているでんでん、餡子やら何やらやりんやら楡やらミズノやら、彼女達も有夏の身分に相応しい身分や立場にある。
後は投稿サイトで上げた版権の小説の話や今飲んでいる薬が苦い、といった程度だ。
ーー本来、罪深い取引で彼女の難病は完治しており周りにも報告済なのだがーーだが、どういう理由あってか、一応「表向き」は処方された薬を飲んでいた。
其れの苦いこと苦いこと。
出来れば飲みたくなんて無い。けれども訳ありだから飲まなくてはならない。
…兎も角、深夜から明け方でも構わずずーっと活動する有夏は、最高に健康そのものであり、難病である(あった)事が嘘のよう。
………もし嘘だったとしても、彼女の卓越な弁舌っぷりが他者を圧倒して上手く丸め込ませられるだろう。今まで傷付けてきた相手達にやってきた様に。
ーー相手を加害者にするのなんて、ちょちょいのちょい。お嬢様にはそんな事容易いものなのです。
猪口才な手も、細やかな抵抗も、恨みなんかも、ぜーんぶ自分にはどうってことなんか無いの!!
有夏…「侑ちゃん」は心の中でそう言いました。誰へ向けられたのかはさておき。
…♪
有夏は何故かとっても嬉しそう。
彼女の手にはスマートフォン。そしてででんさんやクロさん達のキャラクターを公式にしましょう、と活動している「熱烈なファン」と遣り取りしている様です。
ーーどうやら活動の進捗、公式からの返答、ファンからの内容に対して有夏はフォロワー達へ強く呼び掛け、拡散を願います。公式化の署名を、と。
ーー騒ぐ最中で、一件の通知が彼女に届きます。
其れは彼女にとって吉報であり、悲報でした。
……「有夏」が「シーフォーン」へ変わり、意に従わない人間を屈服させるか、其れでも従わなければ漏れ無く殺して、
そしてあの「ベルトニウム・エクスプロージョン」を世界各地へ落とすという選択をする様になる程に。




