ーscamー
ーー嵩町有夏は、相変わらず元気らしい。
難病だと自称していると情報には載っていた筈なのに、どうやら今は動画制作にお熱を上げているらしく、自分の二次オリジナルキャラクターや他所様のキャラクターを使って踊らせていたりする様だ。
深夜まで熱に浮かされる様に活動していたらしい。
そう言えば最近はこちらでもおかしな時間帯に出没してきたりかなり長く居座っていたりしていた事もあった。
こういう様子が数年続いているので、恐らく彼女は難病なんかじゃないのだろう。
……まあ、口の達者な彼女の事だから「闘病、治療もあって奇跡的に治りました!」なんて言えるかもしれないが。
そして周りの人間も、最初からそんな筈無かったなんて疑いもせずに、彼女の言葉を全てだと信じ込んでしまうのだろう。
ーー所で此の物語では素性も知れぬ実体の影響で「有夏」という女は奇跡的に難病から回復している。
そう語られた。
だが、本当の彼女は?
……本当の彼女は最初から難病なんかでは無く、周囲の気を引き中心である為に、世を生きる為に、惨めな己を慰める為に、嘯いているのではないか?
……。
今日も彼女は深夜までオトモダチとやらとの遣り取りに熱を上げ、個人の欲求を最大に活かした動画制作に熱を上げ、寂しい欲を、溺れそうな程甘い承認を、満たし続けるのだろう。
其の為に過去も先も誰かを傷付けたり苦しめ、其の相手の人生の破壊にまで及ぶ程の事をし続けながら。
勿論彼女自身に其の意図も、自覚も無いだろうが。
ーー今日は昴星が一際輝きながらぼく達の為に信号を送ってくれている。




