ーTak_Yuka Chan:Spiritus conversationemー
『侑ちゃんは呼び水なんだよ』
或る小さな誰かは語る。
『例えば私達が彼女にとって害悪であるのだとするなら、自分が害を呼び寄せている原因である自覚は持っていない』
『自分が私達からしたらとっても美味しいモノであるという事が分からなくて、いや「理解したくないものには理解なんかしてやらない」って彼女はさもまとめ役もする指導者…いや、ええと』
『カリスマなんちゃらってやつでしょ?』
言葉に詰まる者に対して、別の誰かが口を出した。
『ああそうそう………そういうやつ。そんな感じで声高高に主張しちゃう程でしょ侑ちゃんは。私達が出てこないのを何処かで見てから、ほっと安心して出てくる。でも私達にはーー』
…身振り手振りを添えて「侑ちゃん」という者について話しているらしい。
『侑ちゃんが其処に出てくるというのだけははっきり分かってるし、何なら侑ちゃんがよく居る所も、侑ちゃんが消し忘れたものも知ってる。私達には侑ちゃんに傷付けられた人の遺してくれた記録の数々があるんだ。だから粗方分かっちゃう』
『そう。彼女は今も「汐屋」って名前を名乗って、其処に必ず出てくる。私達の存在がまるで羽虫みたいだと馬鹿に見下していても。私達は其れでも彼女が何してるのか分かる程じゃないか』
語る者は拳をぐっと握り、「侑ちゃん」と呼称する者の本意を探る。
『…侑ちゃんは、どうしてそう相手を傷付ける行為を平気で出来てしまうのか、そして侑ちゃんは自分が傷付けてきた者やその近親者達ですら羽虫だと見下せちゃうのか、そして傷付けられて死んでしまった彼が何度も自傷行為や自殺をして、とうとう死んだって知った時、侑ちゃんの本当の心はどう思ったのだろう、って』
語る者は「彼女は心の底でほっと安堵して喜んだ、其れが彼女の本心じゃないかと思ってるけど」と後に話した。
ーー一通り聞いていたもう一人は、ふと語る者の言葉が気になって、今度は訊ねる。
『…君はそう思ってるけど、じゃあ如何してそうだとは結論付けられないの?』
ーー訊ねてきた其の言葉に、語る者は悩んだ。
『そうだと結論付けられれば確かに良いさ。でも直接聞けるとして聞いてみたらさ、きっと「あなた方にそういう風に言わされました」って答えて、明らかに自分が悪者じゃないんですぅって出来ちゃうじゃん、彼にもそういう風にしたんだし』
ああ〜、となるが、どうもそれだけじゃあ無い。
『其れに言葉だけなら幾らでも誤魔化す事は出来てしまう。侑ちゃんは口も上手いからね。流石お嬢様だし如何にも大阪府八尾市青山町が生んだ神に愛されし天才〜ってレベルなのかもしれない。…なんて巫山戯たのは置いといて、言葉で幾らでも誤魔化せてしまう。本心なんて出せば良くない事くらい分かってる。そんな初歩的な事察せない馬鹿じゃないよ』
彼女は、馬鹿だと自嘲して相手を愚かだと見下せる、そういう言葉の使い手なのだ、と説明した。
『仮に彼が或る人から聞いた話じゃ「私は○○さんと仲良くしたいけど」って言ってる癖には無視してくるし、口だけ立派で陰でなんぼでも悪く言ってきた…なんて話だって、遺されたやつに日記みたいにあったもん』
はぁ、と溜め息が一つ。
『侑ちゃんの自称する事のどこまで本当かは分からないよね』
マゾを自称してた事も、難病だと言ってる事も、余命宣告の事も、数年後の今でもピンピン健康体で、SNSに居て、今日も彼等が見た何処かのゲームに浮上している。
『…例えば小柄な事も、胸がでかいって事も、もしかしたら盛ってるって事?』
料理の話をする割に、仲良くしてるチャイナ娘みたいに作ったものの画像は上げないし小説デビューするって言っても音沙汰も無い。
『まあジャンヌ・ダルクが好きな事とかパンドラってキャラクターを幼女って呼んで、ついでに其れ等が出る版権作品のキャラクターを勝手に設定盛って我が物顔で創作ですぅしてたり何気に著作権侵害してる事は知ってるけどもね、あと版権キャラを自分のものにした上で商業利用的な事とか色々』
『えっそれ犯罪では…その辺よく分かんないけど』
小さい誰か二人の会話が、何故かちょっぴり今時の人間の様なものになっている。
『………全部さ、全部、ちゃんと一通り聞いて、見れるものは見て、そして遺されたもので残りを知ったよ』
だけど自分には其れを引き継ぐ様に彼女を見て、そして記録し続ける事しか出来ないんだ、と寂しそうに呟いた。




