ーGrata retroー
ーー沙和の記録より。
汐屋……有夏が静かになってから9日目程。
10日目に差し掛かろうとしていた矢先の、大体後ほど。
何と物言わなかった彼女は其のゲームに帰ってきた。
実に9日振りの事だった。
どうやら代わり映えもしなければ己のした行為への反省も全く無い様子だった。
…というよりも戻って来ても彼女という存在は、本当に変わらなかった。
遺族からの恨みを、彼女は嘲り踏み躙るのが変わらず得意だった。
苦しんだ者を更に追い詰め、残された者を馬鹿に見下すのは上手く、そして生き甲斐らしい。
ーーさて、元に戻して。
今からなら、6時間ほど前まで。
結局は雲隠れもする気は無かったようだが隠しきれない部分も幾つかあった。沙和は、静観する事で彼女を引き摺り出して炙り出すつもりだったが、見事に動いてくれたとは。
おかえり、侑ちゃん。
貴女まだ甘いアメの様な世界の中で、お兄さんとお姉さん達に可愛がられてる「お嬢ちゃん」なのね。
そうですか。侑ちゃんは、お嬢ちゃんか。
もう数年したら、30代でしたっけ。大人の自覚はまだ持ってなかった儘なら、其れで良いですよ。
貴女は貴女だから、支払いを踏み倒す事はしないでしょう。如何なるか位なら、その「かしこーい」知識で理解出来てますもんね。
ねえ。
有ちゃん。侑ちゃん。ゆうか。ゆか。有夏、侑花。ゆうか、ゆか、お嬢ちゃん。
ゆうちゃん。
人に有る花。
高町?高村?高市?嵩街?高村?高村?堺は?八つの尾が見える?
あれ?
所でゆうちゃん。
有ちゃん?侑ちゃん? ??。
君さあ。「君の足元に転がっている其の人は誰だったの」?
対価は、まだ払っていないの?例え大阪人だからって勢いで踏み倒ししようってのは良くないよねお嬢ちゃん。
…ねえ、ゆうちゃん。貴女はまだ、其の人を死に追いやった事実から逃げてるの?




