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Dea Creaturae ーAc revelareー  作者: つつみ
Cyrphorn
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ーMilestone opens qui in mundoー

『ーー……年某日〜…った乗用車が…………人の…を撥ね…………名が死亡〜…』




テレビからは毎日の様に悲惨な事故や事件がニュースとして流れてくる。

(またか………)有夏(ゆか)は呆れた眼差しでテレビを見ていた。

やれナントカ国民がどうの、政治家がどうの、殺傷事件がどうのーー連日の報道によってすっかり聞き慣れてしまった。

(ネットは何処でもそういうので溢れかえってるし、SNSでも流れてくるし)

いい加減、と思いながらも彼女は心を痛める善人の振りを振る舞う。周囲から「品が良くて優しく素敵な人」でいる為にだ。

…厳しい家訓によってそう育ち、強いられたからでもあるのかもしれないが。
























今、此の国では元号が変わって新しい時代が幕を開いたばかりである。

然し前の元号の時も悪い事が起きはしたが、改元されて早々悪い事が続いている。

飽きる程の連日の報道も、こういうのも手伝って尚更だった。




(あーあ、うざったいなぁ。こういう事無くなれば良いのに。………あ)

彼女は何かを思い付いた様にぱっと目をみひらかせた。































ーー世界を変えられる程の力なら、私にあるじゃないか。



































彼女は思い出したのである。

























(あいつから貰った力があるじゃん!!)

有夏は思い立って立ち上がり、休日にも関わらず急いで準備し駆け足で外に出た。

「行ってきますっ!!!!!」

「有夏お嬢様?何処へ行くんですか〜?」

ーーあの青年の所へ。

今の彼女には、彼に聞きたい事が沢山ある。









さあ早く、行こう!

分からない事ははっきり聞くべきなのだから。




ーー()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
































































ーー某所登山道中。



「はあ、はあ………何で、条件付けたんだ……………」

徒歩で一歩一歩、山道を歩く彼女は青年から受けた言葉を思い出しつつ進んでいた。









ーー……………………



『僕に会いたければ条件が3つ。見晴らしの良い場所である事、自然である事、そして君が徒歩である事だ』

青年は殉教の赤を取った彼女が目覚めゆく寸前にそう語ったのだ。

(せめて近場にしてよね……!!!)

ぐぬぬ、と少しばかり悔しそうにしながら、()に会う為に山道を登るのであった。

































「やっと……つい…た………」肩で呼吸を繰り返す有夏が目的の地点まで辿り着いて、そして最後の一歩を踏み出した。


ーーそして、世界は既知の光景とは異なる形へ変貌する。






「え……あ?」

何これ?だなんて言える程の状態では無く。


明るくも懐かしい空より金の雨の如く光が降り注ぎ、緑に茂っていた野は輝く金色の穂が織り成す一面の海の様に変わっていった。

太古の黄金に思いを馳せるならばこういう光景なのかもしれないと言えそうに憧憬が軈て現実へと移り変わる。

























「うわ………」有夏が辺りを見回せる程の頃となれば既に其処は()()()野では無く。

『やあようこそ。我が憧憬、太古に降る黄金の灰の下へ』

「……また大層な手品を使った様ですが、」

あまりの光景に驚かざるを得なかったが、敢えて彼女は何処までも悪態を吐いた。

『手品師扱いとは失礼な。奇術師ならばまだ響きとしては良かったのだが』

「どっちも同じでしょ?」

悪態には戯けて返す、青年の側面が垣間見えた。彼の笑いは彼女が見せるせせら笑いとは異なっている。




『そうは言えど此れは言えば魔術とかそんなものだよ。僕はそもそも現実の世には存在出来ないしね』

「魔術だか魔法だか仰っていれば良いですが貴方はせめて黙って私の要求を飲みなさい。其れに科学で証明出来ない事を私は信じませんので」

『へえ、君は「私守護霊が強いらしいんですよ」とかSNSで言ってる癖にかい?オカルトな事を話したり言う割にはオカルトを信じないだなんて、笑える皮肉だね』

「う…っ」

青年の指摘に彼女はばつの悪そうな顔を浮かべて目を下方へ背けた。何故そんな事まで此の青年は知っているのだろうか。彼女は一度考えたが最早答えなんて無意味だった。だから即座に本題に移る。









「……た、訊ねたい事があります」

『訊ねたい事?直ぐ逃げに走ったね。()()()()()()()()()()。彼処でもさっきみたいな遣り取りで逃げた癖に、現実でも同じだったんだね』

…此の青年は自分の事を暴こうとしている気がする。

「そんな事は良いでしょう、早く答えて下さい」そうはさせるものか、と言わんばかりに彼女は逃げに走った。兎に角逃げようとした。暴かれて見下されるなんて屈辱なんか味わいたくない。"自分が選ばれて恵まれている事を自負している"のだからにはこんな奴に、こんな奴なんかには。

()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?










































「先ず私が聞きたい事は沢山あります。貴方は正直に答えなさい。そうしなくてはいけません」

『強制?』

「ええそうです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。私を騙くらかそううったって無駄ですよ!!」

『……………………』彼女のあまりにも傲慢な言葉に、青年はふう、と溜息を小さく吐いて静かに話し始めた。


























『…君が此処に来たのは大体察しているよ。君に与えた力について聞きに来たんだろう?其のつもりならば来ると思って話す為にこうして君を隔離させたんだ』

青年はどうやら、彼女が訊ねに来る事は予め察していたらしかった。

「なら話は早いですね。全て話して私を有利にしなさい」

第一こんな大層な事なんかしなくったって良いではありませんか、と彼女は吐き捨てる。



『…。君は傲慢だな。おまけに言っておくけど此処までやらなかった場合君が不審者扱いされるだけだぞ、一応君の地元の名景として有名なんだろ』

青年は本当に、何処までも彼女に呆れ果てながら話し始めてゆく。シェヘラザードが毎夜、異国の物語を語り紡ぐ様に。











































ーー………殉教の赤。他者の血と怨嗟と憎悪によって染まる赤色。或いは緋の衣。

選び取った君には其の身以上の業がのし掛かる事だろう。


永い命、

願いの履行、

黒い祝福、

屍の玉座。


君には其の四つの加護が掛けられている。

そして君は其れ等の力を行使して、神を否定し世を変える事になるかもしれない。

人の理を君は君の意思で塗り潰す。

永い命とは君が望んだ命の願いであり、願いの履行は君が呟く大欲を現実のものとする。黒い祝福は君に掛かる魔性、そして屍の玉座とは数多の犠牲の上に君が至る極致。

君は君の願いを叶えた上で、血の冠を戴く事になるのさ。




ーー但し。

但し君には代償を伴うだろう。君が望みを叶える度に、犠牲は付き物。

そして君自身、傲慢にして強欲となる。軈ては、獣の様に成り下がるだろう。

知恵のある、然し欲に至上の獣として。





































ーー青年の言葉は明確さは無かったが、然し彼女の中にはするりと浸透していった。

静聴して訳の分からない事を言っている筈なのに、何を伝えているのかがはっきりと理解出来た。

『こんな感じさ』

「なる、ほど」青年の言葉を聞いて彼女は驚きつつ己に与えられた力について理解し、振るい方を学んだ。

『そういう事だから、じゃあ』彼が隔離の世界を解き、現実へ彼女を引き戻そうとしようとした時、

「ちょっと待って下さい」

彼女が、青年を引き止めた。



















『……追加の願いかい?』彼女の瞳の奥にある()()()()()を見付けた青年は至極嬉しそうに、同時に不愉快そうに、口元を歪ませ吊り上げた。

彼女は我儘を孕んだ心で青年を見る。

『良いだろう、代金は高めに戴くよ』

そして両者による、太古の黄金の中での、暗い取引が行われ始めたーー

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