ーAlter in zona mortuisー
「沙和の事は助けてあげるよ。君だって本意じゃないだろう?僕もだけど」
『……有り難う、アルター』
足元の修復が進む中、崩れから戻りつつある"彼"の手を黒い青年が取った。其の身体を起こすと、少しぐらつきながら、向かい側に居る"彼"は何とか其の場に立ち上がる。
『…一つ訂正させてくれよ』
形を取り戻した青年が語る。
『確かに僕達はこうなってしまった。でも、もしもーー有夏が見える所で悪く言った事を認めて其の事だけ謝ってくれていれば、そしてででんが解決しない事と分かっていても其れから逃げず、一度目の終着点まで向き合ってさえいれば。そしたら、此処までにならなかったよ。僕達も其処で彼女達の言葉と答えを受け入れられた』
『そして認められなかったと言うよりは、そもそも■■は現れた時点で彼女の心を射止め、彼女だけのものみたいな扱いになった訳だし、他の奴が■■絡みで考えたものは本来許されない。公に沿って埋め合わせた解釈を入れて「ソフィアちゃん」という存在を創り■■に宛てがったででんの創作物だけが正しく、其れ以外は間違いだ、と。ででん本人は敢えて謙遜を装うが…有夏の普段の過激な発言や彼女がピックアップしたLEOの呟いた発言からして、そういうものなんだよ。彼女本人、そして有夏達の様な取り巻きからお許しを頂かなければ、そして彼女達の為に彼女達が喜ぶ■■ソフィを創る機械に徹しなければいけなかっただけ』
ーー創り出す事への意欲を失った、彼の瞳は暗かった。
「…そう言えば、そういう気性だったよね。抱え持ったものがある以上、そうしなければ周りに合わせるのも困難な程だったか」
『うん。何か、ごめんね』
青年はそう静かに話した後、闇の様に暗い場所へと消えていった。




