ーobservatioー
「……………………。」
沙和は、あれからずっと彼女について調べ、どんな挙動にもメモを取った。
身近な者の命を脅かし、そして死へ追いやった者達の親玉の様な存在、嵩町有夏。
"彼"の死の後、彼に関するものも嘗ての遺品も全て引き取って使い始めた。
ーー沙和の心には、何時か"彼"は帰ってくる、その為に自分に出来る事をして、不在の"彼"の代わりを務めよう……とすら思ってしまう程、其の死を認めたくないものがあった。
だから彼は知る限りの方法や手段で、彼女について調べた。暗い理由ながら二見が手伝ってくれ、彼の知り合いが彼女や其の関係者達のアカウントをフォローしたりして情報の収集を手伝ってくれていた。
其の中で、沙和は特に………有夏を見続けた。どうやら嘗て自分も遊んでいたゲームに、ほぼ毎日出没するようになっていたらしい。
沙和は冷めた瞳で、画面に映る有夏のゲームデータを見ている。
「…………これが、有夏さんなんだ」
"塩屋"という名義を使っているらしく、彼女はどうも所属先のギルドで副団長辺りの役職に就いている様だった。
プレイヤーランクは282程、フレンドの数は上限の70人、そして聖女ジャンヌダルクをモデルにしたキャラクターをサポートに置いて、御伽の騎士の様なキャラクターをリーダーにしていた。
公開しているものを一通り見ると聖女ジャンヌダルクをモデルにしたキャラクターばかりだった。よっぽど、聖女ジャンヌダルクをモデルにした其のキャラクターが好きらしい。
彼女のSNS内でのアバターは初期の、何の洒落た姿でも無いものだった。
そしてそんな彼女のゲームデータ内の一言には『最近良い事が続きますね』と書かれていた。
……今は『ひゃーーーーっほう!o(*^▽^*)o』になっているが。
取り敢えずひゃーーーーっほう!と割と巫山戯ていたので、心の中で「ひゃほ町ちゃん」と彼女を呼んだ。
(この人、本当に…難病なのかな。かなり長い時間このゲームに張り付いているし、いつ寝てるのかさえ分からない。というか殆ど寝ていない?あの内容には、「あと1000年は生きたい」なんて書かれていたし、まだ死にたくないって………)
沙和の中で、小さな違和感と疑問が湧く。其れこそ、生前の"彼"が彼女との遣り取りの時に抱いたものの様に。
二見を経由して聞いた限りでは、彼女のアカウントは鍵を掛けた儘らしい。
どうも複数のアカウント持ちらしく、そしてアカウントの名義は番号を割り当てたものだった。例えば、C0、C1、C2、C3、C4…といった具合に。
殆どの情報、"彼"の自殺以前の彼女の情報についてはいとこが持ち出してきた彼が遺したノート等にきっちりと記載されており、そして彼女のほんの細やかな呟きから彼女の個人情報も綺麗に割り出していた。
住所等については何故なのか詳しくは知らなかったものの、そう言えば生前のあの人が「あるものを送る為に〜」等と嬉々として話していた事をぼんやりと思い出す。
(なのに、ねぇ。有夏さんは、死に追いやったんだよね)
暗い瞳で、深い溜息を吐いた。
相手の事なんて理解しようとしない、理解出来ないなら速攻で逃げて向き合って解決してみようとしない輩の癖に、自分の事は理解しろと宣った、嵩町有夏と云う女について彼は静かに考察した。




