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Dea Creaturae ーAc revelareー  作者: つつみ
Cyrphorn
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ーAeris inmensi superat egressus sum de rithimoー

20■■年某日ーー





























「行ってきまーす」駆け足に似た調子で家を出る女の様子。

「行ってらっしゃい、有夏(ゆか)お嬢様。お車の送迎は良いのかしら?」

「いえいえ!!良いんです!!調子良いし出来れば自分の足で行きたいですから!!!」出先の家政婦との遣り取りを軽く済ませ、有夏は家を出て行く。

すっかり元気になった彼女が、此れから通う大学へ向かうべく敢えて自転車に乗って行った。





























「有夏久し振り〜!!」

「病気治ったんだって!!?凄い奇跡じゃない!!?ww」

「へへへへへwやっぱり神様は居るわ〜病気で苦しんでた私に味方してくれたんだもんwww」

目的の場所に着いて早々、学友との会話に明け暮れる。

SNSでの繋がりだけでは無く、どうやら学友達との間に弾む程の遣り取りはあるらしい。

青年が居れば、『つくづく、恵まれているな』とでも吐くのだろうーー








勿論、SNSでの繋がりのある者達からも完治の報を祝福された。

『おめでとうございます〜!!( ˆoˆ )/』ポン。

『姉ちゃあああああああああん!!!!!おめでとおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!』ポン。

『■■さんおめでとうございます〜!!』ポン。

『■■ちゃんやったね!!良かったね!!はわわどうしよう■■氏自分の事みたいに嬉しいよ〜!!』ポン。

『■■ちゃんホント!?ウチも嬉しいわ〜■■ちゃんと創作の話出来るんだもん、またイ…したいんよ〜♡』ポン。

『■■さんおめでとうございます!完治だなんて奇跡じゃないですか!!』ポン。

……と、多数からの返信があったのである。


其の光景を見て、ゆっくりと噛み締めつつ己の中の顕示欲と承認欲求が満たされてゆくのを感じた。






嫌いな奴等が死んで、願いが何でも叶って、ーー…病気が治って、自由になって、幸せになって。ああやっぱり自分は愛されている。本当に恵まれている。最高に幸せ。きっと、世界で誰よりも一番に恵まれた存在だろう。

辛い事があって飛び降りようとした〜なんて呟いた時はフォロワーから大丈夫?と慰めや心配の返信があったが、あれや闘病してても健気にしてるという呟きの時よりも周りからは祝福され、しかも病から奇跡的に救われた人として時の人扱い。あの時よりもちやほやとされていて、内心ではゾクゾクと快感の波が押し寄せていた。




ーー兎に角、"()()()()()()()()()()()()()"になれたのだ。









彼女にとって其れ以上に嬉しい事なんてーーあるとしたら、何でも思い通りに出来る力を得られた事位かもしれない。

(■■■■■■さんに投書と一緒に沢山のお金を送ってみようかな、■■■■ちゃんがもっと贔屓されて欲しいな、■■■■ちゃん出て欲しいな、……ちゃんの■■■■ちゃんが公式になってくれたら良いのにな、もし……するなら■■先生か■■■先生辺りに描いて欲しいなぁ)

そんな事を思うと、無意識に笑みが溢れ落ちる。

学友や付き合っている者と過ごした昼下がりを過ぎて、宵の近い頃。





























彼女は住み慣れた実家に帰る。父親達が待ってくれている。

早く帰って論文等を書くのだ。SNSに張り付き、好きな版権の話をして、ゲームをして、謳歌する。

選ばれた自分だから許される。

『御無沙汰。』

彼女の背後をひやりと伝う黒い靄が、じっとりと過密に付き纏う。



















「ーー貴方は誰ですか」

『しらばっくれるなよ、夢の中とは言え一時を共にした仲じゃないか』

「誤解を招く言い方は止めて下さいっ!!…誰かに聞かれたらどうするんですか」




『聞かれたら?別に可怪しいと思われるのは君の方だよ?僕の声は君にしか聞こえていない』

声のみの存在らしい。ケラケラと小気味良く笑っている様な、気がした。

「ーー〜っ何それ!!?そんな言い方ーー」

『君は覚えているのか』青年の声が打って変わって静かな口調に変わる。

































『ーーあの後、君が僕の手を取り赤を選んだ後の事だ。…"大規模国民死亡事件"。各地で謎の死亡事件が一斉に発生した。関連性のあるものとして警察は捜査を続けている。…然し死因は異なり、年齢も違う。疫病等と言った要因は皆無で、其々の死因から大規模な割には大きい事件性も感じられない』

青年の口から事件の事が語られる。

『述べて日本国民の約3割近くが死んだ。ーー君の病を治す為には、其の位の犠牲が必要だったという事さ』

「わ……私には、関係なんか無い」有夏は必死に弁明し、"自分と事件は関係無い"と主張した。









『ーーそう?まあ良いよ。()()()()と言い張るならね。君には関係無い』

「そうです。其の通りなんですから。ーーそれに、貴方から与えられたこの力?だって使いこなして見せる。貴方の思い通りになんかさせない」

彼女は、キッ!と強く後ろを睨んだ。



『第三の道を作る、と言うのかい?』

「ええ。二択なんておかしいでしょ。()()()()なんですから、()()()()()()()()()()()()()()()()()です」

…ある種の二律背反、というものだろうか。

『変な冗談だな、我儘な癖に私利私欲に走らないんだ?可怪しくない?君は君を認めてるのに、まだ優しい選択肢があると信じているんだ』

「そりゃそうでしょう!!この力でもっと良くすれば良いんですよ!世の中変えられたらって!!」

『ふうん、そうか。其れは結構な事だ。「自分と自分の好きなものにとって良い世の中」じゃない事を祈るよ。そんな風に出来るならやって御覧よ』



「絶対に思い通りになんかなりませんからね」

『はいはい。ならば懸命に其れを維持する事だね』

其の一言を告げて青年の影は忽然と、彼女の背後から消えていた。
















(悪態なんか吐いて。負け惜しんで悔しそうに泣いてれば良いのにw)

影の気配が消えた後ろをしっかりと見て、踵を返して帰路に着いた。

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