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Dea Creaturae ーAc revelareー  作者: つつみ
Ultor_1
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ーQuæ operatus est nocere nobisー

ーー…あの事を振り返る前に、流れる今の時を描こう。









沙和は、今日も朝早く、いいや殆ど眠らずに過ごした。生前頼まれていた事を淡々と熟しながら。

そうすれば、"あの人"が戻ってくるのではないか、と何処かで希望を抱きながら。もうそんなもの叶わないと分かっているのに。


そして淡々と準備を終え、仕事を始める。

世の情勢故にリモートワークを強いられてしまっているが、だからこそある程度の余裕を持って様々な事が出来た。




お昼休みのつもりの休憩に、そして片手に持った"彼"の端末に。

(許せない…でんでんさんはどうしてこんなにも…………)

沙和は、今日も彼女を見る。勿論二見の知り合いが彼女のフォロワーとしてこっそりフォローしており、その100人程の内の一人だったりするし、そして二見も興味があるのか其の知り合いを経由して知れる限りから彼女の個人的な事を特定していたりするのだが。


然し、其れ等を沙和に教えるのはあまり良くないだろう、と二見は沙和の従兄弟と話し合って伏せていた。

だから沙和は独自に彼女達のアカウントを見つけ出し、そして何か無いか見ているのだ。



(あとこんな事も言ってはいけないけれど…あの人が生前、お絵描きアプリで遊ぶ人で良かった。アプリ内のランキングにでんでんさんの絵が上がってる時あるから…)



そしてアプリのランキングを端末の方で見た沙和は、彼女が二見が隠れた趣味でやっている小説投稿サイトを見た事があるのも知っていた。

(リンク先は違うけれど、でも彼女の発言や動き……二見さんの話していた事と同じ様な…二見さんの書いてるものも隠れて読みに行ってたりするのだろうか?)

沙和はそう考察した。







そして仕事用に使うPCで、沙和は彼女のアカウントを覗いた。


返信内容の分は見ていないものの、8月の14日から大分経った21日に新しい呟きがあった。


『イラストの依頼頂きました、ありがとうございます!

小説が元のキャラクターはせっかくなので小説を読んで世界観を理解してから描きたいので結構時間がかかると思いますがそのぶん心込めて描くので気長にお待ちいただければと思います(人 //•u•//)(盛大な空リプ』


其れからは、

『ネットで間違ってタブを消してしまった時わざわざ履歴から探さなくても「Ctrl+Shift+T」で簡単に戻せるってもしかして意外とみんな知らない???』

『そういえばフォロワーさん100人!!!?ありがとうございます(T_T)(T_T)人人 ほぼ壁打ち垢ですがこれからも優しく見守って下さい...!』

『オリキャラが使う星雲と天球儀の剣 頭の輪っかと連動するよ』


依頼で作品のキャラクター、誰かのアイコンを描いていたり…


『流行り病でまだバイトできてなくてまじで金欠で泣いてる』


『ありがとうございます!!!!!私が大感動した大人■■■ちゃん描いていいんですか!!!!!!!実は陰で■■■ちゃん落書きしてたのでおまけにでもいれときたいですね!!!!!!!!』

『ブーストありがとうございますーーーー!!!カスタム楽しんでいただけたら幸いです!!』

『今取り掛かっているのは〜とても斬新で面白そうな依頼で私のセンスが問われますね!頑張ります!!』

































(健気で堅実そうに振る舞ってるなんて…)

一人を自殺に追い込んでおきながら、彼女は一際輝いているのだ。

(あの人が自殺した原因なのに)

人殺しになった彼女は、理解多き良き人として振る舞い、生きている。



何故ーー

抱えた病もあれど、苦しみに死んだあの人。例え悪かったとしても、でもあの人には大切なものがあったし、私達もあの人の幸せを願っていたのにーー


如何してあの人の幸せが奪われる形で、彼女達があんなにも輝かねばならないのだろう。


其の眩さをまざまざと見せ付けられる度、残された者である彼は苦しめられた。


(ぼくも死んでしまったら、そんな事で苦しまずに済むんだろうな)

彼女(ででん)のアカウントを開いた儘、沙和は自死について考えた。

其れでも。

其れでもーー沙和は踏み留まった。




駄目。後を追えば、あの人の苦しみや無念は晴らせられない。









其れこそ彼女達の思惑通りになってしまう。

"彼"の後に沙和達が死んでしまえば、"彼"が死して尚苦しむ事を彼女達は、首魁のシヨと…もしかしたらででんも、よく理解しているだろう。

彼女達の目的はきっと死んだ"彼"を、其の死後も苦しめ続ける事。


こうして沙和が彼女達の眩さに当てられ心を弱めてゆく事すら、"彼"にとって痛ましいだろう。分かっててやっているのだ。己の目的と利害的に一致しているのもあって。

敵を苦しめる事と、其の手段として己が目立ち、輝く事。その二つ。

































「……。ごめんなさい、■…………」

そう小さく呟いた後、沙和は改めてアカウントの内容を見た。

……最新は今の所8月の31日、アプリ内のランキングを見る限りじゃ9月1日頃に出て来てるから…………

8月27日の星花火と思われる其の絵を恐らく投稿サイトの方にも上げているだろう。


「うーん…『skeb作業中:残り2件』……仕事取れてるみたいだし此処って確か金銭の遣り取りが発生するところだったっけ…結構な額取れてるんじゃ…?バイトする必要あるのかな、あんなに目立っていて」

一瞬だけ流石中国人、金絡みがどうのと偏見が出掛かるが抑える。だって日本生まれ日本育ちの中国人だもの!!!と抑えになってなさそうな理由を強引に上げて取り敢えず偏見を取り下げた。

















































(ああまた苦しまなくちゃいけないのか)

沙和は彼女達を見る。例え避けても必ず何処かで目にしてしまうから。

(でも必要な事になる)

だけど彼女達の動きを見る。何時か、何らかの形で直接報復してやりたいと望んでいる。

(苦しいなぁ)

苦しくても。あの人が生前愛し行っていた事を反復する事でもしかしたら帰ってくるんじゃないかと叶わない望みを薄ぼんやり抱きながら。

(…………疲れたなぁ)

摩耗した心を引き摺りながら、喪った人の無念を晴らす為に。

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