ーobscura peregrinationeー
りりんが変わらず同じ様な日々を過ごす間、勿論彼女が視線を向ける相手達も様々な変化があった。
今回はシヨーーこと嵩町有夏。
りりんと今日もSNSでキャッキャキャッキャと盛り上がっていたが、りりんに訊ねられて更に彼女は嬉しそうに振る舞った。
『あ!ねえシヨちゃん、■■■のマイページの一言が今日「ひゃーーーーっほう!o(*^▽^*)o」に変わってたけど何か良い事あったのー?』ポンッ
『えー?ww』ポンッ
『そう?』ポンッ
空かさずシヨがりりんへ返事を返し、りりんが其れを揶揄えば、彼女は恥ずかしそうな顔文字と合わせて「りりんにたけ」こっそり打ち明ける。
『…あのね、最近ちょっとあのゴミロマの奴の身内がね……ふふっwあまり出て来なくなったしあと不幸になってるんだって!!』
シヨがゲームの名義として使っているNo.65403403の塩谷のアカウントを見たんだね?と含ませつつりりんへ嬉しそうに答えを返す。「勿論私自身にも良い事いっっっっっぱい起きてるんだけどもね!!www」と付け加えて。
『いやーほんと嫌いな奴がもっと不幸になる様って見たり分かると最高に快感♡だよね、りりんさんっ』
シヨの「嫌いな相手をとことん追い詰める嗜好」に少し引きつつ、然しりりん自身彼女の思想には大きく共感しているのもあって、
『うんうん、シヨさんの言ってる事すごい分かるよ!!共感しちゃう!!!やっぱりあの人達にはもっと苦しんで不幸になって欲しいよね!!ふふふー♡』
『でしょwww生き残ってる奴もとことん苦しめなきゃwwww』
彼女は「あー他にもクズロマの身内いないかなー、いたらそいつらも正義の鉄槌でも下してあげよwww」と嗤い、そして「もしいなさそうならクズロマさんのご家族にしようかな」と呟いた。
りりんは彼女の大胆な行動力と思想、そして手段の発想にとても大きな感銘を受けて、彼女への信心が更に深くなっていった。
…………其れだけでは無かった。
シヨ…有夏の其の言葉にはもう一つの意味があったに決まっている。
単純に嫌い・憎い相手や其の家族の不幸が喜ばしいとか自身に大きな幸運が常に続いているとか、そんな事じゃない。確かに彼女にとってひゃーーーーつほう!となる程の喜びではあるだろう。だが。
りりんの存在だ。
…餡を自分に従わせられた事で、次はりりんを狙っていた。彼女は、りりんがより日増しに自分を信じ、日増しに繋がりが強くなってゆく様になっているのを確かに感じ取っていた。
だからこそ彼女を捉え、彼女を餡の様にさせるのは簡単だ、と彼女は確信しているのだろう。
ーーでも。
でもまだ少しだけだ。もう少し、もう少しでりりんさんの心を私が満たし、支配出来る。
有夏は来たるべき其の時を想像し、下腹部を抑える様に手を添えながら舌なめずりをしていた。
ーー私に良い事ばかりが起きている。
私を遮るものも、邪魔するものも、みんな私を虐めた罰として苦しむし、私はそいつ等の幸せを奪い続ける事でもっと相手を苦しめながら自分の幸せへ変えてゆく。
そしてでいんちゃんも餡さんも、次はりりんさん。……私と同じ存在にして、そして私達の理想を作り上げてみせる。
…より確実に上手くいく様に、もっとあいつ等を苦しめよう。
あいつ等が不幸になればなる程、私は幸せになってゆく。
「あの時」に得たものが、誰かの犠牲から私を守り、幸福にしてくれるのだから。




