ーDiscrimen estー
手記に書かれた圧倒的な負の言葉と、たった一人を集団で追い詰めようと躍起になる者達の挙動、
其の内の一人のものに過ぎない一冊の書物に記された怨恨、憎悪、侮蔑、嘲笑。
紙の一枚一枚を捲る度に激しさが増してゆく。
此の手記の持ち主の、恐ろしく激しい暗さが集約されているのだろう。
ーーぐらぐらと、視界が拉げて歪んでゆく苦しい感覚に身を委ねてゆく。
ーー…………………………………………
ーー……………………
ーー…………
ーー……
ーー201■年 某日 某県某市
何処かのオフィスらしき場所にて。
「えーと…」
カウンターの女性が何かを探している。メモだろうか。走り書きされたメモを探してカウンターの彼方此方に手を入れる。
「あったあった、………えーっと…これ何て読むのかしら……」
女性は改めて走り書きした事を後悔した。だけど仕方が無い。そのまま名前下に羅列された数字を当てに電話の番号を入力する。
プルル…… プルルル…………
電話の鳴る音。
カチャリと誰かが電話を取る。
ーー同刻、大倉美亜の自宅。
「電話だ、出なきゃ」
美亜が電話に出て、応答する。
『もしもし?オグラミワ様でお間違え無かったでしょうか?』
「え?」
電話口の相手は、美亜の事を「オグラミワ」と呼んだ。
「あっ、違いますオグラじゃ無くて大倉、」
「オグラさん…では、無くて?」
「お・お・く・ら、です!」
「あっ申し訳ありません!!オオクラミワ様ですね?」
電話口の相手の女性は美亜に指摘され、呼び方を直す。
「あのー…「ミワ」でも無くて「美亜」なんですけど……」
美亜は電話の向こうの相手にやや呆れながらも今度は名前の方を指摘する。
「あっ…!これは大変失礼しました!!大倉美亜様ですね?」
電話の向こう側の相手であろう受付嬢が改めて訊ね直すと、美亜はそうです、と返事をした。
「美亜様へお荷物が届いていたのですがご不在の様だったので此方でお預かりしております」
「ああ、はあ」
美亜ははっと思い出した。数日前、「シヨ」こと有夏からSNSのDMで『餡さんに届けたいものがあるので前の■■■創作者オフ会の時に教えてもらったご住所で合ってますよね?』と連絡が来たのだ。
勿論餡こと美亜は『合ってますよ〜!(^o^)/届けたいものって何ですか??www』と直ぐに返したが、荷物の事を訊ねるや
『秘密です!!www』
と返されただけだった。
「今からそちらに向かいます〜」
美亜はそう電話の相手に告げると、一通り話してから電話を切って、支度を始める。
「あ、そう言えば…」
スマートフォンを手に取った所で、美亜はSNSの画面を開く。
「そう言えばででんさん、dedenさんに名義変えて新しく本垢作ったんだっけ、何か無いかな」とタイムラインを辿った。
ーータイムラインを辿れば、繋がっている者の呟きが一気に流れる。
其の中には勿論ででん改めdedenのものもあった。
「おー!ででんさんペイントアプリに新しいイラスト投稿したんだ!!」と嬉々としてブラウザへ飛べば彼女の絵がペイントアプリのランキングの6位にランクインしていた。
「凄い凄い!!ソ■ィアちゃん可愛い〜っ」と美亜は美しいものへの溜息を吐いた。
@dd_s■spと記されたアカウントは、確かにででんのアカウントであり、絵柄を見ても一目瞭然。
「これから荷物を取りに行かなきゃだけど、いやー嬉しい事ばかりだね、ででんさんはピクシーにもここにも新しくアカウント作ってソフ■■ちゃんの絵や■■■■■またいっぱい上げる様になったし、シヨさんも益々元気になってるみたいだし!!」
美亜は我が事の様に喜び、マスクを着用した後飛び出した其の足取りはとても軽やかなものだった。




