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Dea Creaturae ーAc revelareー  作者: つつみ
Deinsophia
28/108

ーSophia nativitatisー

…………翌日は宵。月が昇り夜闇を明るく照らした満月の日。張は思い付きで描いた魔法陣の様なものの上に描き続けた■■■■の資料を置いた。



「準備出来たよ姉ちゃん」

張は緊張のあまり固唾を呑む。傍に有夏が立って、見守っている。

「怖い?」

有夏が訊ねる。

「少しだけ…」

張が不安を滲ませて答えた。




「大丈夫…■■ちゃんなら出来るから…」

そっ…と張を後ろから優しく緩やかに抱き締める。

「■■■■ちゃんがあなたの手で創り出される光景を、私も見たいから」

とろりと甘い声を含ませながら有夏は打ち明けた。

「…分かった、頑張るね」

背に腹は替えられないな、と張は深く息を吸う。

















都合の悪い事や嫌いな事からは逃げるけど。






好きな事からは逃げない。









向き合わなきゃいけないものが例えそこにあったとしても、好きな事じゃ無い限り絶対私は逃げる。

無視する。

相手を殺す。

相手なんて最初からこの世にいなかった事にしてしまえばいい。


だけど、好きな事なら向き合う。逃げない。

■■■■ちゃんは私の理想の全て。

■■■■ちゃんは私の好きを全て持った存在。

向き合わなくてはいけない。

彼女を現実にする為に、私の不安は飛び越える。




姉ちゃんが傍にいてくれる。

私は、■■だ。今の私は、姉ちゃんみたいに何だって出来る。



「何でも…叶えられる!!」

ーー張の声色は、次第に自信に満ちたものへ変わった。

































張はバッと腕を広げ、まるで娘を迎え入れる様に立つ。

思い付きで描かれた星陣は鮮やかな青色に光り出し一際輝いた。


…中心に据え置かれた数枚の資料がポワと淡い光を放ち、形を失い陣に吸い込まれてゆく。

(失敗じゃない…私はやり遂げるんだ…!!)

張の気持ちに呼応するかの様に陣は更に光り輝き、そして一点に収束して放たれた。




「…………………………!」

フワリと浮いた青い光。其れは()()()()()()()()と、弾ける様に光の粒が空気中に散開し、ぼんやりと僅かな光を宿す()()が其処に現れた。

「……!!!」其の一連の流れを見守っていた有夏の瞳がキラキラと子供の様に輝き出す。

「■■■■…ちゃん………」

張は思わず声を漏らした。目の前に、目の前に確かに自分が描き続けた少女が存在している。

実在している。

其処に生きている。


彼女(■■■■)は生まれたのだ。親の、張の手によって。

















ーー少しだけ(うずくま)って寝息を立てる、愛らしい可憐な少女。

「■■■■ちゃん……!!」

張よりも有夏の方が感動と喜びに色めき立っている。肝心の張本人は寧ろ驚きや喜び、様々な感情が濁流の如く押し寄せて整理が付けられない。

…其れでも、生みの親として()()()を其の腕に抱こうと迎え入れようとした。



「■■■■ちゃん」

張が、母親の様に少女の名を呼ぶ。

















































「………?」

少し眠たげな眼差しと共に、ゆっくりと目を開いた。

漆黒の髪、宇宙の熱量を孕んだ毛先、

鮮やかな青色、金色の瞳、

可憐さに相応しい白い羽根、

夜空をあしらった衣服、胸元には赤い宝石のブローチを嵌めた赤いリボン、

品の良い令嬢の様に整えられたブラウスと、同じく夜空の星々と星座の描かれたスカート。

メルヘンなグローブにブーツ、

御伽の様な出で立ち。

正しく其れは、張の理想と可愛いの全て、或いは張自身の「こうでありたい」を詰め込んだ可憐な乙女。

有夏が神話と墨を付け、公式であるべき、公式だと言い広めた程の存在。

彼女以外の者は認めない。

紛う事無き彼女達の理想の体現。




「■■■■ちゃん、」張はもう一度、少女の名を呼ぶ。

「………………」

其の言葉に応えるかの如く、浮遊していた少女は腕を伸ばす張の元へ身を寄せ、宛ら母親の抱擁を求める幼子の様に其の腕の中へ収まった。

「……!あぁ…………………!!」

愛おしむよりも感動が張の心を占める。繊細な硝子細工を扱う様に、ゆっくりと抱き締めた。

「良かった…良かったぁ……!!」

有夏は張と同じ位緊張でもしていたらしい。緊張の糸が途切れたのか、其の場にへたり込んだ。


















「■■■■ちゃん…■■■■ちゃんがやっと…」

張の安堵の入り混じった涙声とは裏腹に、■■■■と呼ばれた少女はまだ眠そうな様子をして、

「お母さん……こんばんは…」

素敵な夜だね、と少女は少しあどけなさを孕みながらそう言った。

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