ーYuka, Resurrectione, Ascensioneー
紙面に描かれた最上の可憐な乙女。
「…………………………!!!!!」
夢に胸を膨らませ、有夏は無邪気な子供、童女の如く瞳を輝かせる。
「これが、私達の理想になる■■■■ちゃん…」
ぽつり、小さく。御守の言葉の様に其れは吐き出された。
震える目先の夢に「心が崩れてはならない」とでも願って唱えられたかの様に。
夢が本当の現実へ変化する為のプロセスが一つ進められた。
たった其れだけですら、有夏にとっては大きかった。
…何より、張自身意欲的に賛同してくれた。ーー其れより、其れよりも。
「〜〜〜♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
描かれた■■■■のあまりの愛らしさに、有夏は両目にハートを浮かべて心躍り歓喜する。
宛ら本物の子供の様に喜ぶものを手に入れて燥いでいた。
「でんちゃっ、でいんちゃん!!■■■■ちゃん可愛い!!!でいんちゃんも可愛いっ、最っ、最高!!!■■■■ちゃんは神話♡♡♡やっぱり■■くんにぴったりなのは■■■■ちゃんだけだよね!!!!!!♡♡♡♡♡」
■■■■以外の他の存在は皆全て塵芥、ゴミでしか無いと有夏は喜びながら答えた。
ぎゅうううぅ、と張の背の高い身体を有夏の小さな身体が強く抱き締める。
「あぁぁぁぁまたでいんちゃんの■■■■ちゃんと■■■■■か見れるなんてぇぇ〜うへへ♡えへぇ〜♡♡♡」
とろん、と蕩けた表情を浮かべて、有夏は昇天した。ビクンビクンと身体を震わせ、ガクガクと足を痙攣させながら必死に其の場に立っている。
「ちょ…姉ちゃん大丈夫!?」
目の前の有夏の姿にまさか革命活動を無理し過ぎたんじゃ、と張は心配し焦る。
「らいじょうぶぅ〜で…んちゃんの最高作がまた生まれたんだって思って♡イッちゃっただけ…♡えへっ、えへへぇ♡♡♡」
ガクンガクンと震える脚の間から、何か透明な液体の様なものがビシャビシャと溢れ床を濡らした。
歓喜と快楽で昇天したのだろうか。
「うっそ姉ちゃんちょっ…大丈夫なの!!?」
「えへ♡えへ♡出ちゃった♡出しちゃった♡♡でいんちゃんごめんね♡♡♡嬉しくて♡でいんちゃんも♡この■■■■ちゃんも♡♡♡♡♡」
うふ♡うふ♡と喜ぶ有夏は淫女の如くふしだらで、快楽に無節操な畜生の様に見えた。
然し張はそんな有夏を心配しながらも満更では無い様子で心中で喜びに胸躍らせた。
「はぁ…はぁ……でいんちゃん……今日は疲れちゃったよね、もう休もっか。私も一緒に良い?♡」
張に掴まり自身を支えながら、有夏は寝台へ向かう事を促した。
「続きは寝台の上で話そう、でいんちゃん」
戯れへ誘う様に彼女は張が眠っていた寝台へ張へ手招きしながら向かう。
ーー寝台に二人、背の高い張と背の低い有夏の二人。
「でも、姉ちゃん、どうしてあれが■■■■ちゃんを現実にする為に必要なの?」
張の疑問は純粋なもので、既知である筈の■■■■を改めて描き直す必要かあったのかと訊ねる。
「うん?確かにーーでいんちゃんがこれまでに描いた■■■■ちゃんでも良いよ?」
「えーっ!!?じゃあ別にリファインする必要無かったじゃん!!!」
「あははっ、ごめんねでいんちゃん。…でもね、出来れば新しくて、それでやっぱり現実にするんだからもっと素敵に出来るんじゃないかって思ったの」
そういう理由だからでいんちゃんに無理させちゃってごめんね、と有夏は話す。
「そっか〜………うん、別に怒ってないよ。姉ちゃんがそう考えたからだもん、■■■■ちゃんを現実に出来るってだけでも夢みたいなものなんだから」
嬉しいに決まっている。自分があれこれ練って考えたオリジナルのキャラクターが理想的な姿で"本当に"形になるのだから。
「■■■■■を現実にって考えたら……■■くんだけでも耐えられないのに」
■■の為に考えて宛てがった、公式には存在していない者を此の世で現実にし、更に好きな存在も現実へ生み出して両者を永遠のものと合わせる。
清らかな交わりも少年少女ながら淫靡な交わいも現実に出来てしまう。
そうさせる。
なんて素晴らしくて最高で、端末の画面を指で描いたあの数々の絵の出来事全てが現実になる。なろうとしている。
張は其の事を考えただけでも脳が沸騰しそうだった。
寝台の上で二人きり、枕へのし掛かり彼女達は話す。
其の肌を外気と隔てるのはたった一枚の薄布のみ。傍の仄かな灯明が暖かに照らす。
「ーーねえでいんちゃん、私ね、もっと私達に従わせる為に考えていたんだ」
有夏は知己への語りの様に言葉を紡ぎ始めた。興奮で気怠げな、寝台に埋もれる二人の身体は衣服を纏わない。
「今は世界中が流行り病で混乱してるでしょ。私達はこの力で病気にならずに済んでいるけど、他の人はそうじゃない」
有夏は薬指に嵌められた、二人で作ったお揃いの指輪を眺めながら話す。
「だから私、その人達を助けたいんだ」
「姉ちゃん…」
なんて優しいの姉ちゃん!!とでも感極まって言いたくなりそうだが………張は敢えてぐっと飲み込んで彼女の話を聞く。
「でもね、全員が助けられたからって私達に従うとは言い切れないでしょ?」
甘い溜息を吐き、有夏は指輪に接吻した。
「"私達に従い、■■■■ちゃんを崇めるのならば、その命は保障しましょう"ってーー」
「でもさ…姉ちゃん、それでもーーその人達が従わなかったらどうするの?」
自身に満ちた有夏の言葉を崩す様に、張の惑った言葉が入り込む。
…有夏は隣の張の肌を厭らしくなぞる。獲物を捉えた蜘蛛の様に蠱惑的な眼差しが張を捉えた。
「そんなもの、」
「抵抗するのなら、私達の為に尊い犠牲になってもらいましょう。全ては私達の理想の実現に必要な事なのだから」
有夏の口から当たり前の様に語られた暗い闇の様な思想、思考。
「……………!!」
張は彼女の言葉に僅かに青褪めた。だが幸運にも灯明のお陰で悟られずに済んだらしい。
ほんの一瞬だけ、張は有夏の欲底の深さに戦慄した。




