ーSic transformavit deprauationemー
事柄が展開したのは張の誕生日である1月1日を過ぎてから半月以上が経った時からだ。
世界中では様々な問題が、特に此の国内では重ね重ね新たな問題ご雪崩込み、そしてあろう事か最悪の一歩手前に世は傾いた。
そんな中での、ある一幕である。
ーーざっくりと書き連ねてゆこう。彼女は青い鳥のアカウントでもーっと自分を主張し始め、例えるなら前よりドロッと酷くなってしまったのだが、そんなものはお構い無し。
今や彼女の様な創作者は人権を得たも同然で、そして何よりも公式の関係者と繋がりがある事、大衆に向けた自■行為の様な夢語りが容認されている事が確固たる自信へと繋がっていた。
本日も蕩ける様な甘い夢に浸る。嘗て名乗った■■■■は己の名であったのを、自分の手で生み出した少女騎士の名として定義付けた。
見事に。綺麗に。
正しい本来の形を彼女は履き違えてしまった。最も言えば、もしかしたら今の歪みを先進的に作り上げた張本人の一人とも言えるのかもしれない。
そして本来ならば違法になる筈の行為を、向こうが何も言わないのをいい事にやれ■■■■■、■■■■■と騒がしく浮上した時の呟きはほぼ其の事ばかりになってゆく。
自衛?ナニソレオイシイノ??キムワイプおいしい(゜∀。)
…駄目みたいですねとは正に彼女達だったのかもしれないし、見た時点で前よりも明らかに悪化していた。
此の儘、年毎に悪化の一途を辿るのだろう。寧ろ月を経る毎により質の悪い規模に迄上がり続け、最悪の存在が、魔性の女みたいな奴になるかもしれない。
此れも女という別枠で獣めいた者が集まってしまったから成し得るのだとするなら。
ーーいやはや、女という生き物は矢張り恐ろしいと思う。
ーー其れだけならまだ、まだであれば、もしかしたら軌道修正程度なら図れたかもしれない。
だが事態は急遽進行し、彼女の烈女にして悪辣で淫猥な魔性たらしめる要素はほんの細やかな切っ掛けで意図も容易く発露する。
令嬢・嵩町有夏の願いと我儘が大きい進展を生み出し、彼女の快復の秘密に何者かが大いに関わっている事、更に彼女は張と、他なら餡やりりん改め木兪にも同様の力を与えろ、と何者かに強引に叶えさせた事。
突如として起こされた出来事によって、彼女の未来は変えられたのだ。
「これが…?ほんとなの姉ちゃん?」
「そうだよ!!■■ちゃんも私と同じ神様みたいな力が使える様になったんだよ!!凄いでしょ!!!」
まるで少女の様に嬉々として語る有夏を前に、張は怪訝そうな表情を浮かべて戸惑いの色を見せる。
「………待って待って待って、姉ちゃん…騙されてるんじゃ」
「本当だよー!!信じられないなら、■■ちゃん、見てっ!!!」
有夏が両腕を高く大きく広げると、辺りは幻想的な宇宙の様に空間が展開される。
「うわぁ………!!」
張は彼女が作り出した空間に魅入られ、瞳をきらきらと輝かせていた。
「ね!!凄いでしょっ。……それと、遅くなっちゃったけれど明けましておめでとう!!■■ちゃん、お誕生日おめでとう!!!些細だけれど姉ちゃんからのプレゼントだっ」
ふふん、と鼻を鳴らして笑うや彼女は細い指をくるくると回す。すると天の空に少女騎士がぼんやりと現れる。
「っ!!■■■■ちゃん!!?」
突然のサプライズに思わず感嘆と驚愕を漏らし、張は嬉しそうな悲鳴を上げる。
「それだけじゃないよっ!!」有夏は更にくるりと指を振ると、少女騎士、そして張にとって確かに愛おしい男の姿が現れた。
「■■くんっっっっっ!!!!!!!」
待って待って待って待って、死んじゃう、死んじゃう、とやや情緒不安定そうに張は挙動不審な動きを始めた。
「こんな事もしちゃうんだっ!!!」
ぱぁっ、と腕を大きく広げた有夏は世界を仮初に塗り替える。少女騎士と男の、愛し合い重なる甘い光景。
「はあああああ〜っ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
張の双眸は、其れこそ比喩や形容の例えだがハートを宿しているかの様。
睦まじく、微笑ましく、然し年端も行かなさそうな男女が湿らかに、霙を溶かし合う様に、睦み合い、愛し合う。
「〜っねえちゃんまってまって駄目だよこういうの!!」
白昼堂々と男女の睦みを展開するのはいけないよ、と張は顔を真っ赤にしながら必死に抑えようとする。
「えーだって〜」有夏が不服そうに振る舞ったが、彼女は言った。
「でもこれはあくまでも私と■■ちゃんにしか見えない様にしてるから他の皆は見えてないよ〜?」
「そういう事じゃなくって!!!!!!!!!!」張は一瞬揺らぎこそしたものの慌てて彼女の言葉を撤回する。
ーーするとふと、張の目に飛び込んだものが一つ。
…キラリッ、と、金の装身が幻の光を反射した。
「あ、あれ……!!」
「そうだよ〜♪■■ちゃんが■■■■■のイメージイヤリング作ったでしょ〜、■■君の赤と■■■■ちゃんの青色で一組になってるやつ!!」
……夢アクセ、或いはカップリングアクセ。有夏の言及している事は、恐らく1月某日に青い鳥の張のメインの公開アカウントに上げた■■■■■のイメージイヤリングの事だろう。
「あれ可愛かった!!流石っていうかもう■■君と言えば■■ちゃんの■■■■■だもんね!!」
有夏はさも当然の様に、何も間違っていないと言わんばかりに非正規のものを正規で公式だと主張した。
「でも惜しむらくは■■ちゃんの創作騎士とは言え■■■■ちゃんが公式じゃないってとこかなぁ…でも」
有夏は声高々に意気込んで話した。
「■■■■ちゃんは■■ちゃんが公式だから!!だから■■君も■■ちゃんのものだし■■■■■は最初から公式!!うん!間違っていない!!!■■ちゃんは完璧に正しいよ!!!!」
…と、隣にある異邦の国の血を宿す少女の肩をぐっと持って、有夏は改めて決意を秘めた。
……時は不幸な事に、あらゆる災害や事件、そして突如寄せられた流行りものが国に渦巻いている。
そんな中での、夢に現を抜かして浮き渡る或る女。
「ーーだから、■■ちゃんの■■■■ちゃんを、本物にしようよ」
甘やかで狂気的な、惑いの言葉を吐き出した。




