ーGratum exitium Miss Takamuraー
ーー高村侑花は、年明けから一月下旬のある日までは活動し、急に一月ほどを開けた。エンジニアとしての仕事と趣味とFPSに興じる傍ら、彼女は順調に計画を進め三月の今日、遂に落ち着き準備を整えた。
「長かったけれどやっと終わった………!!」
感慨深そうな声色で身体を伸ばした彼女は、例の研究員から報告を受けた。
「シーフォーン様、あれの用意は出来ています」
「ご苦労様です。私の指定の通りに設置は出来ましたか?」
「はい。仰る通りご指定の場所に全て…」
研究員が言い切るより早く彼女は嬉しさで言葉を遮った。
「ふふふっ、遂に私の望んだ世界になってゆくんですね……!」
侑花は溢れる喜びから笑みを零し続けた。何もかもが理想的で恐ろしい位に行き過ぎて、嬉しくて嬉しくて堪らない。
そして大いなる理想の一つを、これから彼女は歩まんとしている。
「ーーさあ、貴方は他の人達と同じ様に指導員として信者の避難、そして隔離を行いなさい」
「はい」
ふわりと髪とスカートが舞い、妖艶な微笑みを向けて、彼女は研究員に役割を与えた。
(信者達への伝達は既に済ませているから、後は指導員の皆が安全なシェルターへ避難させれば良いだけの事)
そして彼女もまた、自らに課した"御役目"の為に身を翻して何処へと向かって行く。
ーー指導員達から各地の信者達の避難が完了したとの報告を受け、用意した旅客機へ搭乗する。先持って張達が乗り込んでいた様だ。
「旅客機に乗るの久し振りなんだけどw姉ちゃん凄いね!!大変だったでしょ」
妹兼妻の様に愛する張が隣に座った侑花へ笑顔を向ける。
「ふふん。でんちゃん、こんな事位なら高村の財力と私の貯蓄に掛かれば大した事なんて無いんだよ」
「そっか、姉ちゃん家ってお金持ちだったよね」
「ーー皆さん、遂にこの時が来ました。私の意思に付き添ってくれてありがとう!!皆さんがもし…望んでくれるのなら、これからもよろしくお願いします」
流行病をものともせず。
崇高な志を胸に抱いて。
ーー旅客機が飛び立つ。彼女と、彼女の愛する者達を載せて。
彼女は奇跡の力を、身に付けている首飾りに注いだ。
旅客機が空高く飛び立った頃、ある場所で大きな爆発が起きた。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!轟音は乗客の居る旅客機をも震わせたが、侑花が即座に力を振るって皆を守る。
「今のままでは叶えられないのなら、こうするまでなのよ」侑花はぽつりと、誰にも聞き取れない小さな声で呟く。
「侑花さん!?あれは…」
仲間の一人が下で起こった事を訊ねる。けれど侑花は一瞥をした後、くっと微笑むだけ。
その間にも地上のあちこちは轟音と爆炎を立ち上げ、この国は、たった今、確実に破壊されてゆく。
「………ふふふっ、あは、あはははははははっ!!」
堪えた笑いが遂に溢れ、侑花は高々に笑う。
自分達が生まれ育った国がベルトニウム核で爆破されてゆくのを旅客機に乗って見届ける中、侑花はゆらりと立ち上がり、椅子を手摺に、彼女は一番前の方に立った。
ホログラムモニターが彼女の側に幾つも浮かぶ。
日本の各所が爆破されている様子を映しながら、うっとりと一つ一つを見つめる。
そして、彼女はモニターを背に皆の方へ振り返った。
「これは……私の大いなる奇跡!この愛おしい世界の女神へ至る為の御業!!」
侑花は、今から本当のシーフォーンになる。
「世界は私に注目し、私は美しい理想を叶える!!」
ーー高村侑花、改め、真なる女神たるシーフォーンは、瞳に愛する天使の星を宿した。




