ーDamnum normalitatisー
「もう少しでアニバーサリー…ジャンヌちゃんにも会える……あっあとソフィアちゃんを動かしてでんちゃんを喜ばすんだから……!!」
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19日から27日の間の侑花の様子は珍しく控えめだが彼女自身は勢いの止まる所を知らなかった。ゲームも現実も、「仲間」との深い関係も夫との関係も良好。
相変わらず赤ちゃんがいるので浮上は下がると明記したままだが、活動自体は活発になりつつあり明記した内容が嘘になっているのは確かだった。
『最強かわいいのソフィアちゃんを作りたい計画 左改造前 右改造後』ポンッ
『スカートの改造、髪の物理を弄って自然に動くように調整した 髪の毛の物理はめちゃくちゃがんばった!』ポンッ
『ソフィアちゃんモデル改造の為にさんすうのべんきょうをしました』ポンッ
『姪っ子の夏休みの宿題手伝う横でエクセルでマクロ組んだ、ソフィアちゃんの髪の物理計算したくて』ポンッ
そして「仲間」の一人であるクロの上げたものを拡散、『これ世界観尊くて涙が出そうになる』と素早く反応。
映画の話、祝い事への反応、『私の性癖』と一言と共に金髪の女性の画像、
『君と夏の終わり将来終わり』
『ちょっと目を離した隙に人の薬でサッカーして遊んでる可愛い子だーれだ』
『お盆過ぎにひぐらしの鳴く山間の墓地で墓石に水を注ぎながら懐から小包装されたおせんべいとか取り出して懐かしげに微笑む未亡人とか素敵だと思う』
…と立て続けに素早く呟き、目まぐるしくゲームの話題…と今日という日までを辿る。
数は本当に珍しく少ないものの彼女の呟きの自体の更新速度はかなり早い。
其れも当然ではあった。何せ今、彼女が注目している■■■ではアニバーサリー前に彼女が活動的になるイベントが開催されているからだ。此のイベントの時だけ、高村侑花は汐屋になる。
汐屋としての彼女はジャンヌが好きで、仲間である張の「娘」のソフィアが大好きで、ソフィアと■■以外の男女の仲も創作も認めたくない程過激な女性だった。
…いやデフォルトでそうなのだが、此の時の彼女は特に顕著だと感じた。
沙和は彼女の断片的な日々を頼りに特定を進めている。汐屋として現時点で活動している高村侑花の方も併せながら、可能な限りの記録を取り続ける。
(確か今回は午前中、また出てきたけど20時頃だろうか…)
情勢の不安定さ故にある程度余裕を得られた事が幸いか、侑花に関する断片的な内容が集まりやすくなった。
「…。こっちの方は30人支持して、22人に支持されているのか…………」
記憶に間違いが無ければ両方共24人前後程だった彼女のアカウント。対信者用の公の方はまた別として、此方は彼女のプライベートな方だ。
鍵を開ける様になりはしたもののあまり多くないのも当然である。一応、細かに記録をする。
(お…ミズノからみずのりんに改名したのか…改名多い人なんだな……)
また侑花のアカウントから彼女の断片を得ていると、芋づる式に彼女の「仲間」の発言や遣り取りも記録する事が出来た。
目的は高村侑花或いは汐屋・C0、そしてででん改めdendenとなった張の二人。「仲間」達の断片は優先度が多少下がるものの彼女達を知る機会としては悪くない。
『わかる(*´▽`*)』
『このキャラ本当に良いよね!!可愛いとか美しいとか超えて“良い”んだよぉ…人人』
『ちょっとログインしてなかったから会いに行ってくるわ…(((いそいそ』
どうやらミズノとはまったりと遣り取りをしたらしい。
「…こっちはデスボ云々の辺りから呟きが無いが汐屋の方はログイン状態が最新の状態になってるな、今も居るなこれ」
2つの画面を見分けながら考え、汐屋のアカウント状況も細かに記録を取りながら沙和は同時に仕事の残りをこなす。
「前回の記録から汐屋のプレイヤーレベルは292、詳細172枚169個、ID65403403、「赤ちゃんいるので浮上率低いです」、ログイン状況はログイン中…と……」
アカウントの呟きが無いのはゲーム中、と付け足して様子を見る事にする。明日送るデータに不備や誤字が無いかを探しながら修正しなくてはならない。
(二見さんや二見さんの知り合いの方も彼女を見ているようだけど、二見さん達も都合があるだろうし…)
抜け落ちている部分を埋め合わせられれば…と思いながら沙和はPCとにらめっこするのだった。
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「よしよしよしよし!今回も上位の方に食い込んでおかなきゃっ」
侑花の方は端末の画面とにらめっこしながら、一方で器用にPCでソフィアのモデルを調整し動かしていた。
(ソフィアちゃんの方もそれっぽく出来てきてる…!後は……)
ーーと、彼女が取ったのはもう一台の端末。
『進捗はどうですか』其の一言だけを添えた宛先はベルトニウム爆弾の開発と管理を任されていた所長だった。
ピロンッ♪軽やかな効果音が空かさず鳴る。
『ご計画の通りに進んでおります』との一言だけだったが、侑花は口端を不敵に吊り上げた。




