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七話

 降下中に見る限り、それほど凄惨な被害が齎されているわけでは無いらしい。

 そういえば、俺を襲って来る時も正面から名乗りを上げて毎度来てたからなー、騎士道精神って奴かね?

 俺だったら奇襲不意討ち騙し討ち上等、勝てば良かろうなのだー!でやるだろうけども。

 ガチの戦闘(ころしあい)とかめんどいです怠いです、もっと楽に勝とうぜー。


 まあ、そんな感じだったので怒りつつも放った【呪毒の咆哮(カースドハウリング)】は条件付自動解除指定で、詰り手加減加えて喰らわしたんだけども。

 村に敵対する陣営特定、意識が失われた時点で呪毒が切れるようにだな。因みに呪毒ってのは読んで字の如く毒のような呪いである。

 所謂状態異常系DOTダメージ攻撃であり、HPMPの減少及び肉体苦痛付与、おまけで全ステータス低下が付く便利な奴だ。

 呪いなので耳を塞いでいても掛かるという理不尽さに、三千余年生きた竜である俺の魔力で行使するので、よほどチートな状態異常防止装備や耐性か無効化スキルを持ってないと抵抗できないんだよ。


 尚、不幸にも根性在りすぎて意識を失う事無く耐え続けた奴がいた場合、普通にHP0に成った時点で死ぬ。慈悲は無い。

 思い入れのある娘の子孫たちを襲撃してきた輩なので、そこまでは責任持つ気は無い。


 取敢えず魔法で滞空しつつ、王国軍全てが静かになったのを見届けてから、村外の開けた場所に俺の巨体を着地させた。

 呪毒で衰弱しまくった兵たちなら、村人達でも難なく捕縛できるだろうし、一応心配なので様子を見る。あと倒れている兵士たちを無闇に殺さない様、巫女から伝えるように言って置いたが、逆上して暴走する村人が出ないとも限らんしなぁ。

 結果がどうあれ、襲撃を受けた訳だし感情の痼りは間違いなくあるだろ。


「邪竜様、あぁ、邪竜さまぁ……♡ 信じておりました、きっと助けに来てくださると……んんぅ♡」


 暫らくそうしていると、やがて簀巻きにされた兵士たちが村の入り口から引きずり出されて並べられ、それから遠巻きに集まってきた村人達が、一人、また一人と俺に向ってDO☆GE☆ZAスタイルで這い蹲りだすんだけど。

 正直止めて欲しいんですよ、凄く居た堪れないと言うか、座り心地が悪いというかね!

 竜族としての振る舞いマニュアル的に、口が裂けてもやめてくれなんて言えないんですけどねっ!


 んでもって、一人だけこちらに駆け寄ってくるのは例の娘の子孫である、今代の少女巫女ちゃんなんだが。

 恐れ気もなく近寄ってくれるのは嬉しいんだけど、足元の爪先に全身で飛びついてすりすりくんかくんかしながら擦りつけるのは止めてくれませんかね、オッサン的に事案が怖いんだけども。

 いやまあ、この世界にそれ系の法案なんて無いし、そもそも竜と人だから適用外かもしらんけどさ、気持ち的にね?


『久しいな、エキドナよ。だが我が身に軽々しく牴れて良いなど、いつ我が許した! 身の程を忘れたか?』

「ハッ! ああああっ、も、申し訳在りません、邪竜さまっ!

 私たちの危機にこうして翔けつけて下さったという嬉しさに、つい我を忘れてしまいぃ!?」


 微細に威圧を込めた念話を送ってやると、ビクンと飛び跳ねた巫女ちゃんが狼狽ててずざざーっと後方滑りしながらジャンピング土下座を見事に決める。

 うん、どうやったらそんな動きできるの、見ててちょっとキモかったんやけど……。


『その方で在ればこそ許すが、増長も許さぬ。

 して、我が命は徹底したであろうな?』

「はいっ、勿論でございます! 皆思う所は在りましょうが、守護神たる貴方様のお言い付けに逆らおう者など、この村には一人とて居りません」

『ふむ、ならば良い……』


 めっちゃくそ偉そうですね俺、言ってて全然柄じゃなくて内心ストレス堪るんですが。

 でも仕方無いんや、マニュアル外の対応したのがばれた場合、長老衆からの折檻が、折檻がぁ(ガクブル)。

 だ、駄目だ、思い出しちゃ駄目だ、封印だ、あの時の記憶は封印するんだ! 大丈夫、俺は出来る()

 ……ふぅ、よし落ち着いた!


 さて、気を取り直して漸うと村の外に運び終わったらしい王国軍を眺める。なんか簀巻きにされて転がってる一角が、大量の芋虫を想起させてちょっと嫌な光景だよ。

 しっかし百人くらいしか暮らして無い村に、まあよくもこれだけ兵士を揃えて来たもんだ。二千は軽く越えてるだろ。

 念を入れてなのか、指揮官の性格なのか。

 さっきチラ見した時にリーネルディット王女を見かけたので、後者かもしれないが、ちょっとそぐわない気もするな?

 別にどうでもいいけど。


『それで、小奴らは何を目的にこのような愚挙を起こした?

 王国の本来の標的は、この身であった筈なのだがな』

「……それについては、私にも判りません。最初に私の身柄を要求して来たのですが、それを拒否した流れでこうなりました。

 その後、対面した時に問うてみたのですが、丁度翔けつけて下さった邪竜様の威に打たれてそのまま気絶されまして、その、色々と凄い事に……あはは」


 ああ、なる程ね。ちょっと間が悪かった的な?

 とは言え、あの時は見過ごす事も出来なかったしなぁ、しょうがないと言えばしょうがないよなー。

 うん、俺は悪くない。王国軍が悪いんや。QED終了。


 だったら、改めて本人から聞けばいいだけだしね。ちょっと連れてきて貰おうか。


『なれば我自ら問い質してやろう。あの王国の小娘をこの場に引き摺ってまいれ。

 事と次第によって、改めて見逃すか、塵殺すべきか判じるとしよう』

「承知致しました、全ては邪竜様の御意のままに」


 深々と頭を下げてから身を起こし、村人に指示する為に戻ると見えた少女巫女だったが、何を思ったか立ち止まりこちらを振り返って来たんだけど。

 いや、何でそんな蕩けそうな牝顔してんだよ! ここまででそうなる流れなかったやろ!?


「は、初めてお住まいの外に出られた姿を拝見できて、その、凛々しすぎて、思わずジュンッ♡って、なっちゃいました♡

 今から成人する日が、巫女としての“禊の義”が待ち遠しくて堪りません邪竜さまぁ……♡」

『………そうか』


 いや、どう答えろっちゅーねんそれ。

 えー、その、あのね、この子の言う“禊の義”ってのは、詰りあれだよ。うん。

 初代のあの娘と無茶苦茶アレしたアレが、何でか子孫には巫女としての『儀式』として認知されてんだよね、本当なんでなんだぜ? 直前に『眷属化』したせいか?

 とは言え俺としてもその、そういうの嫌いじゃねーし?

 でもせめて倫理的に、成人してからね!って最低限予防線は張ったので理解してくれると嬉しい。って誰に弁明してるんだろう俺。


 マジであの時の事、どういう風に伝わってるのか知らんが、お陰で代々の巫女は総じて『こんな感じ』なんだよなー。何でだろうなー、ふっしぎだなー?(お空を見ながら)。

 ふぅ、今日も空の蒼さが眩しいなぁ、はっはっはっ。

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