二話
千年位前から、俺はとある山の山頂に寝床を作って微睡みライフを送っておりました。
竜って、生きてるだけで世界に漂うマナを吸収してLV上がって行くんだよね。だから大体巣で寝て過ごしてます。
いやー、前世じゃ生きる為に必死に働いていたのが馬鹿みたいだよねって今なら思うくらい、凄く気楽です。
食事もしてもしなくても良いみたいで、嗜好の範疇だし。魔法があるから身奇麗に保つのもちょちょいと済ませるからね。
引き篭もりライフが捗るわー。我輩、幸せ也。
一応、戦闘すれば経験値は入って普通にLVも上がるんだけど、同族以外の種族って俺らからしたら正に『見ろ、人がゴミのようだ、ぐわはははっ!』って感じなので、殺しても得られるそれは微々たる量。
なので好んで殺戮とかしない主義です、種族全体が。
だけども、ほら、竜の素材ってゲームとかじゃよく最上級か、それに準じた扱いされてたじゃん。
竜素材で作られた武器は、やっぱりありがちに竜殺武器に加工できたりとかさ。で、この世界でもそうだったらしいんよ。
結果どうなるかというと。
「邪竜よ、今日こそが貴様の最後の日だ!
我らウルミスト王国ギルド所属、特級パーティ『黒き王牙』!
これよりその命、貰い受ける!」
『うおおおおおおっ!』
うん、こうなるわけです。
名誉とか名声とかさー、他で勝手に稼いでろよ、何で俺のトコ来るのよ。
竜殺しはロマンかもしれないけどさー、それで数年毎に似たような連中が押し込み強殺しかけてこられても、その、困る。
都度に出来るだけ手加減して追い返すのも、楽じゃないんですがね。いい加減にしてくれませんかねぇ……。
あと根拠もなしに邪竜呼ばわりとか失礼じゃないですか、俺ここで千年前から勝手に住み着いて寝てるだけよ?
その何とか王国って、数百年前にここらで興った国だよね、つまり先住権は俺にあるよね。はい、論破。
ところで俺、竜族は竜族だけど、それも細かく系統が有りましてね?
ほら、よくある火竜だとか水竜だとかな感じで。
その中で俺は、ちょっと特殊な位置になっておりまして。
何でも『瘴気竜』って他の種族は呼んでるみたいなんだけども、これには昔からある伝承が有りましてね。
“その漆黒の鱗禍々しく、咆哮は生きとし生ける者の命数を断つ呪毒。黄金の竜瞳は魔眼にて、意を以ってねめられたが最後、死しても開放なき永劫なる隷従を強いる。
故に、彼の竜降り立ちし国々は悉く滅びの道を辿るであろう。そは災厄の顕現、大地のマナを腐らせ、汚染されし瘴気へと変える者。則ち――、瘴気竜なり。”
いやぁ、酷い風評被害だよね!