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ゴブリンとの出会い

【01 勇者殺し】のおさらい


①.勇者を定期的に殺さないと自分が死ぬスキルのため、勇者に挑む俺。

②.スキル【勇者殺し】が発動すると、冒険慣れした勇者たちをボコボコにすることができた。

③.近くの村で異世界人と交流を深めるも、先程殺した勇者達と親しい方々で、俺が殺したと疑われてしまう。

④.女の子を人質に取りながらどうにか逃げる俺。これは悲劇の物語だ。


 森の中で荒い息を吐きながら、倒れ込むように地面にへたり込んだ。

 もうダメだ……一歩も動けない。

 クソ、こっちは社畜になってから三日坊主で終わったランニング以外に体動かしてないんだぞ。全身の筋肉がバキバキに千切れ、さっき食べたはずのモノが逆流しそうな気分だ。


 しかし、この鞄と財布を不用意に取り出したのは不味かったな。更にはあのお守りの宝石のダメ押しで、どう考えても俺が犯人だもんな。そう思われても仕方ない。まぁ俺が殺したんだけど──。


 どうにか呼吸を落ち着かせながら、ジャケットで鞄が見えないように位置を少しズラす。

 周りに追手が居ないことを確認し、大木の突き出た根に腰を掛け、先程の光景を思い出す。


 ギルドに突き出して嘘がどうとか言っていたが、この世界ではギルドが警察の役割を担っているのだろうか。もしかしたら俺の情報がギルドとやらに出回っている可能性が高いので、今後は用心して行動するよう心がけるか。


 それと気になったのは、スキル【勇者殺し】が発動しなかったことだ。あの勇者たちと対面した際にスキル名が光り輝き、合わせて俺の体に何か力が注がれる感覚を味わった。しかし、先程の酒場ではスキル名は光らず、エーテルは同じく操ることはできたが、俺の体にも得に異変は現れなかった。


 推察するに、やはりスキル名よろしく勇者と対峙することが能力発動のトリガーなのか。あれか、メタル系のみに攻撃力が増す感じで、俺の場合は勇者に対して戦闘力が増す。戦闘は全くの未経験ながら、歴戦の勇者を圧倒できたので強力なスキルな反面、勇者ではない相手に対しては全くの無力……。


 発動条件がややこしいな。これじゃあもしもなかなかの強者で、勇者ではない相手と対峙した場合、エーテル操作でどうにかできない場合は一方的にやられてしまう……。


 まぁそうならないよう気をつけて行動するか。不用意に自身のスキルを晒さない。加えて、能力が発動すれば戦えるが、発動しない限りは戦闘力5程度だと悟られないこと。


 さてさて、今後はどうするか。

 念願の飯屋を見つけ、多分あの村にあるはずの宿屋(旅商人が訪れるくらいだもの)を拠点に色々とこの世界について探ろうかと思っていた矢先にトラブル発生だ。100%俺が悪いのだが、証拠不十分の状態で襲ってくる野蛮人マジ怖い。この世界の文明レベルは低そうだな。


 で、このままでは野宿になってしまう。地図では少し歩いた先に街があるが、うーん歩いて30分ほどか……。結構かかるぞ。電車、タクシーは無いよね。徒歩で30分って現代っ子の俺には苦痛でしかない。

 しかし野宿って、飲み会で飲みすぎて気がついたら小学校の花壇の中で転がっていたことがあるが、それとは話が違う。夜は魔物などが現れるだろうし、無防備な状態で眠っていたらたちまち襲われてしまうだろう。それに、こんな汚らしい泥と草木の生い茂る空間で横になるのは無理だって。虫とか絶対居るし。はぁ……ベッドが欲しい……。


 ブォォォオオオ!


 その時だった。

 どこからか猛獣の唸り声が聞こえた。

 さっと辺りを見回すも何も居ない……。今度は少し離れたところから悲鳴と木々をなぎ倒す轟音も聞こえてくる。……誰かが襲われているのか? 唸り声と移動する悲鳴からそう思った。魔物とエンカウントしてしまい、倒すことができず逃げる。──が、RPGなどのゲームであればモンスターから逃げることも可能だが、現実はそう上手くいかないのだろう。


 どうしよう。ここで隠れているか、それとも──。

 俺は好奇心に唆され、その音がする方向へ駆けていった。


 腰の高さほどある草をかき分けながら進むと、切り立った崖に出た。高さは5メートルほどで、その下は広い空間が広がり、細い木々が生えている。そこをまるで巨大なイノシシみたいな生物が唸りながら疾走していた。魔物だ……多分。いやあの厳つい姿は魔物に違いない。そしてその魔物の先に、あれは……人間の子ども? が追われている。悲鳴を上げながらどうにか細い木々の影に隠れるも、魔物は狙いを定めて突進する。細い木々は呆気なく折れ、その度に子どもは這い出てきて見つかってしまう。


 助けようかな……。

 しかし相手は魔物だ。俺があんな巨大なイノシシの前に立ち向かっても木っ端微塵にされるのがオチだ。でも子どもが追われている。守った方がいいんじゃない? って俺の優しい心が声をかけてくる。両親からは親切な人間になりなさい、と教育されたしな。いや俺関係無いし、満員電車で老人に席を譲るとはわけが違う。見て見ぬ振りを決め込むか。すまんな子ども、来世ではもっと優しい人に助けて貰いなさい──。


 だが、子どもはなんと俺が立っている崖に向かって逃げてきた。もちろん登れないが、子どもを追ってきた魔物はどうやら崖の上に立っている俺を見つけたらしい。ブォォォオオオ! と鼻息荒く崖に向かって突進して来やがった。嘘だろ、マジかよ……。


 ズドンッ!


 と凄まじい衝撃にさっと地面にしがみついて堪えた。崖に向かって足を突き立て……流石に登っては来ないか。しかし俺を見つけて更に興奮している。このまま逃げたら別方向から迫ってくる可能性は高いな。


 俺は魔物の姿を確認しながら、右手にエーテルを収束させる。

 エーテルを刀状に纏めると、それを魔物に向かって投げた。ずぶっ! と顔に突き刺さる。一瞬の間を置いて、魔獣が痛みに声を張り上げる。おっと逃がすか。俺は立て続けにエーテル刀を何本も魔獣に向かって投げまくった。頭部に三本、体に四本刺さったところで魔獣はガタガタと震え始める。スキル【勇者殺し】は発動してないが、それでも【エーテル粒子操作術】はこの程度の魔物であれば一方的に倒すことができた。


 魔物はどっしーん、と崩れ落ちる。ブフォ〜、ブフォ〜と鼻息荒く呼吸を繰り返していたが、やがてそれも止まった。うぉ、最後死ぬ寸前の姿は先程の勇ましい姿と異なり痛々しいな……。勇者達を殺した時はすまん! って感じであまり重く受け止めることはなかったが、動物の逝く姿は可哀想だ。


 やれやれ、結果的に子どもを助けてしまったぜ──。

 これで先程の酒場での一件もチャラになるかもしれないな。俺は自分勝手な計算をしつつ、崖から降りて逃げていた子どもを確認しようとした。崖から離れた箇所にどうにか降りられそうな坂を見つけ、ひぃひぃ悲鳴を上げながら降りた。


 この一着しかないスーツが傷つかないよう必死に地面に降り立ち、子どもを探す。と、細い木を抱きしめて震えていた。


「さぁ、これで助かったぞ。感謝しろよ。あと親御さんに俺の活躍を伝えてお礼を……お願い…え……、え?」


 ──それは、人間の子どもじゃなかった。

 黄色い巨大な瞳。

 歪な形に尖った耳と下品に耳元まで避けた口。

 赤茶の肌。

 ひぐひぐと涙を零す姿も異様なこの姿は──鬼? いや、ゴブリンか。



//続く

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