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3/10

VS 勇者パーティ


 ゲームは昔から好きだったので、有名どころからそこそこマイナーなRPGは遊んでる。

 ただ、どのゲームでも基本最初の敵は低級のモンスターが殆どだ。

 俺みたいに勇者様御一行が初っ端の相手は珍しいと思う。まぁ探せばあるかも。


 お命頂戴します! なんて馬鹿なこと宣言した瞬間、どぱっ! と頭の中で何かが噴出した。全身がドクン! と脈動する。ぎゅ……っと五感が絞られていく。思考が意識が加速していく──。


 なんだこれ、いきなりどうした? って焦った時、俺の顔面に拳が突き進んでいることに気付く。見るからに武道家の、ガタイの良い女性が渾身の右ストレートを俺に向かって放っていた。

 疾い!

 TVで俯瞰するボクシングの試合とは明らかに異なるド迫力の巨大な拳が迫る。身体がしなり、体重の乗ったいいパンチだ! と格闘技に関して全くの無知の俺でもわかる程のスペシャルなパンチ!

 一切の躊躇無し。

 俺を敵と判断しての刹那の先制攻撃。


 しかし、俺にはその動きがハッキリクッキリと見て取れる。スローモーション、とは異なる、まるでこの武闘家の未来を予測しているかのように──。

 俺の体も動いていた。

 意思を持って一歩踏み出す。

 その分だけ距離が縮まった。

 ひゅんっ

 と俺の頬に、相手の拳が擦れた。じゅっと頬が灼ける。

 擦れた瞬間、俺は右手を振り抜いていた。ざしゅッ……という重々しい感触が右手に収束したエーテル刀に余韻となって広がった。


 交差する刹那、武道家の腹を切り裂いた。


 ぶっしゅううううう! と鮮血が飛び散る。うわぁ、グロい……。俺はケンケン足になる感じでバランスを崩しながらも、振り返り、腹を抑える武道家を見据えた。顔は真っ青に染まりながらも、ぐっと傷に手を当てた。するとその部分が淡い水色に輝いた。──コイツ、何かしらの術式で回復しようとしている! と情報が頭の中に流れ込んでくる。んだと!? マズいヤバイさっさと殺せ!殺せ?殺せッ♪ って喚くような感覚が流れ込んできた。 

 さっきの一撃を容易くかわした時の感覚が蘇る。


 よし!

 首だ。

 首を飛ばそう。

 スッパーン! って。

 そうすりゃやれる! と嬉々とした感触がぬるりと俺を促す。促されるまま、収束したエーテルを一定の方向に僅かに解放した。刀の形状を伸ばし、物干し竿のような長さの刃を、武道家の首めがけて振るう。武道家の目が大きく見開かれ、迫りくる刃を眺めているだけだ──。


 キィィンッ!


 あ~欲しい!

 寸前のところで当たらなかった。戦士の男が俺と武道家の間に割り込み、剣で防ぎやがった。


「リンは下がれ! マリン回復を、急げ!」


 戦士は吠えるように言った。さっきまでの腑抜けた表情は消え失せ、完全に戦闘モードに入ってやがる。

 しかし、俺のエーテル刀を受け切るとは恐れ入った。刃状に圧縮したエーテルは木々を豆腐のように切り裂けるので、勢いをつければ金属の剣程度は真っ二つだと思っていたのに……。やれやれ自信なくなるんだが。


 その時、戦士の刃がバチバチ──と緑色の光を纏っていることに気づく。なるほど、エーテルを属性に変換させ、剣に流していたのか。知らない情報のはずなのに、まるで既存の情報の如く俺の中に流れ込んでくる。


 戦士は受けた剣を滑らせるように前進すると、跳躍するように一気に駆けた。

 俺が思いっきり長いエーテル刀を振るったので、バランスが崩れている隙を狙ったんだろう。

 けど、

 まぁ、

 敢えて……ですよ。

 バランスが崩れてしまったかのように見せかけて、俺は戦士を誘ったのだ。


 バチバチバチッ! と戦士の剣から電撃が迸る。

 真下から俺の顔目掛けて剣を振り上げようとしている。初対面に電撃纏った剣で攻撃ってコミュ障ってレベルじゃねぇぞ。

 俺は、エーテル刃を握っている右手を大げさに見せつけながら、腰に隠すように下げた左手にエーテルを集中させる。あくまで然りげ無くだ。やべぇどうしようと冷や汗を顔に浮かべて──。


 そんな演技ができるのか、と俺自身が驚く。目の前の戦士は辛い冒険者生活を幾度もくぐり抜けてきたのだろう。そんな歴戦の戦士を騙せるなんて……。俺には闘う才能があったのか? それとも……。


 カウンター気味に左手からエーテル刀を投げつけると、よし! 戦士の頭部に見事に突き刺さった。剣と全身を覆っているエーテルだが、攻撃に移る際は一瞬だけバランスが崩れ、頭部を覆っているエーテルが薄まる。その一瞬の隙を狙ったんだ。


「は? ぎゃ……ぁ」


 戦士は変な声を出してぶっ倒れた。ぐるぐると転がり、俺の足元で白目を向いてむごたらしく蠢いている。


「カ……カインッ!? カインッッ!!!!」


 奥で武道家に駆け寄っていた魔法使いが絶叫した。俺が念の為、と再び右手に集めたエーテル刀で戦士の首を切り落とすと、「あ……あ……あぁ…」と魔法使いは声にならない悲鳴を上げる。うーん、リアクション激しい姿に、あ……実はこの二人は……と色々察してなんか申し訳なくなる。ただまぁ俺も襲われたし、切羽詰まっていたし、仕方ないじゃん?


「マリン、術式を──」

「わかって……ます、【泥王の波動】!」


 シーフに急かされた魔法使いは俺を睨みつけながら、血走った形相で術式を唱えた。──泥が付くことから水系統の術式。これまた知らない情報が……。


 トンッ


 と杖が地面にふれると、ぐわんと大きく地面が揺れた。次の瞬間には、魔法使いの杖が着いた先の地面がぐにゃりと震える。俺の足元まで──「うわぁ!?」と情けない声が出てしまう。何故なら地面が一瞬で泥になり、足が取られて前方につんのめる。


「【業火の矢】!!」


 泥で動きを制限し、間髪入れず弓による遠隔攻撃。

 避けられない。

 炎を纏いながら迫る矢に、俺は反射的にエーテルを目の前に集め、シールドにして防いだ。が、炎に包まれた矢はシールドに突き刺さり、透明なバリアに亀裂が走る。


「柔い──いけるぞ」


 シーフはシールドの強度を理解すると矢継ぎ早に矢を構える。おっとこれはマズい。いくらシールドを再度展開しようにも、あの矢を止められるとは限らない。厚みを変えるか、いやこれ以上纏めるとエーテルが反発して最悪分散してしまう。


 撃ち抜かれて、矢が体に刺さったら轟々と燃えるのだろう。おいおい焼死なんて絶対に苦しい奴じゃん。嫌だ困る……。あぁもう考えろ、考えるんだ俺! もう一度死ぬのは嫌だ。せっかく魔法? とか使える楽しそうな異世界に転生したのに、いきなり雑魚っぽい勇者様御一行に倒されてしまうなんてあんまりだ──。


 ふと、上司のにやけた面が脳裏をよぎる。

 仕事の同僚たちの思い出も──パチンコの結果を毎日報告してくる先輩や、スマホゲーのガチャ課金を嬉々として自慢する後輩、昨年度のサービス残業時間が1000時間を超えたと嬉しそうに語る同期などなど……。他にも営業のフゴさん(咳をするたびにフゴフゴうるさい)や協力会社のコピーさん(精神的に壊れて毎日コピー機を触ってる怖い人)などの表情が浮かんでくる。

 ろくでもねぇ記憶だな。ってか走馬灯かよ。マジで本気になれ。どうにか避けたいが──でも泥はいつの間にか硬い土に変わり、膝まで完全に固定されている。上半身だけでも、あの矢をエーテルで打ち返す? それもムリだろ。だったら──。


 思考を打ち切るように、矢が到達した。

 左胸だった。

 避ける、なんてホントムリ。……けど、当たる最中、俺はエーテル粒子操作術を自分自身に向けて発動していた。今までは大気にエーテルを粒子化させていたが、今だけは……俺の体をエーテルに変換し、そして粒子化させる。


 体がふわりと浮き上がる。

 パン! と弾けるように俺の体は四散していた。細かな粒子になりながら。

 でも全体の場所が……なんとなくわかる。俺は空を飛んでいた。矢が当たった瞬間にその反動を利用して分散し、右手にエーテル刀を集めながらシーフに飛びかかる。


 恐怖で歪む顔がなんか笑えるよ。


 体を斜めに切り裂いた。切り裂きながらその反動で更に腕を振るう。

 魔法使いは杖を掲げるも、それより早く喉を裂いた。ぷしゃぁぁぁぁあ! と血が溢れる。だから血は苦手なんだよ。採血とかでも毎回目を背けるくらい好きじゃないので頭がクラクラする。やれやれ……と一息つこうとしたところで、まだ武道家が残っていることを思い出す。武道家は突如死んだ三人の仲間の姿に呆気にとられながらも、頑張って抵抗してきた。


 拳をシールドで受け、エーテルを纏う足を股関節辺りから切り裂いた。

 それでも果敢に向かってきたので、努力に免じて殺してあげることにした。ほら、深手を負い、仲間を失うそれでも一人で生き残るって可愛そうじゃん。俺そういうの苦手なんだよ。うん、今度こそ首を裂く。おいおい逃げるな……待て待てって! よっと、よし! あーきり残った。次は当てる……そ〜れっと!



//続

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