第4話 お付き合い
2人とも反応が無い。まるで屍のようだ。
まあ屍じゃなくただただびっくりして反応が出来てないだけだと思いたい。
じゃなきゃ、友達すらなっていない状況で告白してこの顔よ。
俺は椅子に戻り両手で顔を隠した。
やっちまったァァアアアァァアアアァァアアアァァアアアァァアアアァァアアアァァアアアァァアアアァァアアアァァアアア!!!!!!
これだから童貞&人付き合いが下手な奴はダメなんだ。何が付き合えだ。どんだけ上から目線なんだよ。しかも、最後勇者の顔に見惚れて顔を逸らしてしまうし…。
俺が1人勝手に悶えていると
「ま、魔王様?一体どういうことですか?」
ニーズルが意味が分からないみたいな顔で見てくる。
「魔王よ。どういう意味だ!?」
勇者も復活したのか少し顔が赤らみているのだが恐らく怒りで顔を赤くしてんだろ。
「いや、ほら。勇者美人やん?あ、ニーズルも美人なんだけどさ?その勇者と付き合えたら良いなって言う気持ちが出ちゃって…その、はい」
俺は素直に思ったことを言ったのだが2人とも顔を赤くする。
赤くなるまで怒ったのか?
まあ、そうだよな。ニーズルは勇者に対して魔王がこんな事言うのは確かに怒るよな。
勇者もいきなりよく分からん人間からーーいや、魔王だ俺。魔王から告白されたら今まで敵だと思っていたんだから侮辱されたと思われても仕方ない。
はぁ。こういう空気を読めないから彼女すら出来なかったんだよな。
俺が勝手に落ち込んでいると
「…良いわ。付き合ってあげる」
勇者からまさかの返事が来た。
俺はすぐ勇者を見る。
「え?あのさ本気?いやいや俺は本気だけど一応魔王だしさ?それに勇者ならもっとイケメンとかに告白されてチヤホヤされてそうに思えるんだけど」
自分で言うのもアレだが俺は顔は普通だ。
普通すぎるくらい普通だ。
不細工でもなければイケメンでも無い。
至って普通なんだよ。
「誰がチヤホヤされてるか!!私は勇者だ。そういう恋愛とかは勇者になるって決めてから捨てたんだよ!女をな。だから、強くなれた。だから魔王に勝てる。なのに…チヤホヤされてるだと?はっきりいうが確かに貴族や王族の男らから声はかかっていたが、全て無視した。魔王…お前を倒すためにな」
勇者がすっごい勢いで怒ってくる。
あれ?俺変な事言ったか?言ってないはずだよな?
「あ、ああ。勇者の事情は分かったよ。というか、それなら何で尚更OKしてくれだんだ!?」
「オーケー?」
「ああ承諾したんだっていう意味」
「それは…勝てなかった相手の言う事を聞くのが当たり前」
「そうですよ魔王様。この世界じゃ強者が絶対なんです。勇者だろうが負けた相手の言う事を聞かなきゃならないんです。この世界が出来た時から決まってる事です」
なんという世界なんだ。
負けたら言う事を聞かなきゃならない?
「だから、承諾したんだ。魔王でもある俺の告白に」
勇者は目をそらす。
ははは。そうだよな。普通に考えれば魔王である俺の言葉は聞かないもんな。
普通の俺がOK貰える理由なんてそんな事でしかOK貰えるわけないよな。
「…ムカつく」
「え?」
「ムカつくムカつく!!」
俺はただただ駄々っ子のように声を荒げた。
「魔王様落ち着いてください!!」
「なあ、勇者とニーズルよ。ムカつかないか?」
「「は?」」
「負けたら言う事を聞くって言うのが。恋愛も仕事も生活も負けたら言う事を聞いて相手に捧げなきゃいけないのか?フザケンナ!腐ってるわこの世界。よし決めた。世界の常識壊してやる」
俺はいつから出来た“当たり前になったルール”を壊したくなった。まあ単純に告白してOK貰ったけど世界が定めたルールに従いOK貰ったことが単純に腹が立っただけだ。
つかよ、そういうルールでしかOK貰えない俺って…いや考えるのはよそう。悲しくなるだけだ。
「魔王様、あのいったい?」
俺1人で盛り上がっていただけで目の前の勇者とニーズルは訳わからないみたいな顔をしてる。
「あ、いや俺魔王じゃん?壊すの得意じゃん?その世界を作った時の決まり事を壊そうかと思って。だってさ力あるものが下に無理難題を押し付ける世界って正直嫌だ。だから、壊して自由を手に入れたいんだよ。まあ、どうやって壊すとか分からんけどもさ」
つまりは無謀な挑戦だ。
だが、魔王になった時点で俺の中の常識ってのは崩れ落ちてる。いや、あの神様に会った時からかな。
俺の言葉を聞きニーズルは涙を流す。
「ど、どした!?」
ニーズルが涙流したことにより「あ、俺まずい事言ったか!?」と思ってしまった。
「魔王様、流石です。世界を壊す。まさしく魔王様しか出来ない事です。私は魔王様に支えれて心底感激します!!」
ニーズルは熱く語っているが…
なんか急激に熱が冷めてきた。さっきまで怒りが優先してて熱くなっていたが冷静になると俺何言ってるんだろうと恥ずかしさが出てきた。
え?世界を壊す?
厨二病みたいなセリフをスラスラ言ってたな俺。
ァァアアアァァアアアァァアアアァァアアアァァアアアァァアアアァァアアアァァアアア!!!
恥ずかしい恥ずかしい。黒歴史確定じゃねぇか。
よし、ここは落ち着いていこう。
ふー。よし。
「魔王…あなたのその願望私も手伝うわ」
勇者ァァアアア!!!
お前、戦ってる時と全く違うじゃねぇか!?
何そのキラキラした目。
さっきまでの殺人者みたいな目はどこいった!?
くそ、なまじ美人だとキラキラした目は上目遣いもプラスしてドキドキが止まらないんだけど。
「ゆ、勇者よ落ち着け。お前は勇者だろ?魔王が世界を壊すって言ってるんだよ?妨げなくて良いのか?むしろ賛成しちゃダメなんじゃないのか!?」
「勇者?どこに勇者が?先の戦いで魔王に傷すら負わせれない勇者が勇者と言えるのか?否!言えるわけもない!!今ここにいる私は魔王の彼女だ!」
勇者…もとい彼女は立ち上がりそう宣言した。
あ、俺ダメなタイプの人間に告白したかも。