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order‐2.5

 ふふふふ夫婦!!?それってそのつまり、夫婦ってこと!?←?

 ふとよみがえる昨日の記憶。


(別にけ、結婚したいとかそんな!)


「…!」


「あの、大丈夫ですか?何か顔真っ赤ですし、暖房器具かってぐらいに熱出てますし」


「問題ありません」


 いけないいけない、さとられるわけにはいかない。

 

 って違う!そうじゃなくて!私は正直に告げなくてはならない!今までの非礼を詫び、素直にいきさつを説明するんだ!


「山下さん」


「はい?」


 さあ言え!言うのよ私!


「どうもすみませんでした」


「え?」


「毒を盛るのを忘れていました」


 ちっがぁぁぁう!


「俺に死ねっていうんですか!?」


「冗談です」


「目がマジなんですけど!?」


 緊張で顔がこわばってるからかより一層誤解が深まる。


 そうじゃない、そうじゃないんだ。私が伝えたいのはそうじゃなくて…。


 ん?何この妙にしょっぱい卵焼き?あ、つくったの私か。


 しまった!てことは卓弥くんにも同じものを!?二つのうちまだ形が綺麗なほうを卓弥くんの皿に盛ったけど、どっちみち超しょっぱい卵焼き出しちゃった!?


 ああ、またやっちゃった…。さっきも会いたい気持ちがはやるあまり朝5:00という異常に早い時間に起こしに来てしまったというのに。ミスは続くわ罵倒するわ…。


「…」


 涙がでそうなのをぐっとこらえる。珍しくうまくいったはずのみそ汁はなぜか味がしなかった。


「大丈夫ですよ」


 そう言って彼は、落ち込む私の頭を撫でた。


「…!!?」


 思わずみそ汁を吹き出してしまった。


「な、ななな何を!?」


「い、いやその、落ち込んでる感じだったので何とか慰められたらなー、なんて…」


(大丈夫だよ)


 その言葉を聞いたのは何年前だったか。そう言って私の頭を撫でてくれたのは何歳のころだったか。

 忘れたことはないあの日、私を救いだしてくれた彼は、あの日と同じ優しいセリフ、あの日と同じ温かい笑顔で。


 今、私をはげましてくれた。


「…」


 メイドとして半ば強引におしかけ、理由もなく罵声をあびせる迷惑極まりない存在であるはずの私にも優しい、素直になれない私を素直に気遣ってくれる。ああ、やっぱりこの人は。


 こわばっていた表情は綻び、次第に口角が上がる。


「帰ります」


「はい?」


「みそ汁まみれになってしまったので、カッターシャツとブレザーを変えに帰ります。ですが入学式のお向かえには来ますので」


「そ、そうですか」


「覚悟しておいてください」


「何を!?」


(お゛の゛さ゛ぁーん゛…)


 再び昨日のことが頭に浮かぶ。私は何を心配していたのだろう。何年たとうが、やっぱり彼は彼卓弥くんだった。


 私の大好きな山下卓弥という男の子だった。


「そうそう」


「何ですか?」


 謝罪はまだできていないけど。


「…ありがとうございます、卓弥くん」


 笑顔で感謝することくらいはできたのだった。


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