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order-15

「お休み…ですか」


「はい」


 金、土曜のオリエンテーション合宿を終えた日曜日のこと。いつも通り朝早くにアリスさんは来ていた。


「振り替え休日もありますし、アリスさんも自分のために時間を使ってください」


 来てくれるのはありがたいがせっかくの休日、俺にばかり構ってもらうのはさすがに申し訳ない。


「私なら大丈夫です」


「いえ、合宿の疲れもあるでしょうし、ゆっくりしてください」


「その二日間、私は一体誰を罵ればいいんですか!」


「罵らないという選択肢はないんですか!?」


結局、朝ごはんだけ一緒に食べて帰ってもらった。




 暇だ。アリスさんがいない間、残っているであろう家事でも済まそうと思っていた。


 しかし洗濯物は干してあるし、合宿の荷物の整理も終わっていた。どうやら俺が起きる前に済ませてくれていた様子。やることがない。


「ごめんくださーい」


 ノックの音と男性の声。誰だろうか?来斗の声ではないし。


「はい」


「小野ー、あいつに弁当箱を…ん?」


 扉を開けたのは旗手先生だった。小野、とは前の住人だろうか?


「すいません。今住んでいるのは山下さんでしたね。まあいいでしょう」


「どうしたんですか先生?」


「いえ、実は君の隣に住んでる大家さんに弁当箱を持っていってほしいのです」


「大家さんに…ですか」


 あの豪勢なお弁当大家さんが作ったの?しかし隣にいることはわかっているのになぜわざわざ俺に?相変わらず刀さしてるし。よく職質受けなかったな。


「お願いできますか?」


 色々と謎だが弁当箱を持っていくぐらい別に気にすることでもないか。


「はい、わかりまし」


「映ー!」


 自分の部屋の扉を蹴破り、いつも通りだらしない服装の大家さんが出てきた。もちろんショットガンは標準装備。


「まったくあんたは!そろそろ弁当箱返しにくるころだろうと思って部屋で待ってたのに!」


「嘘つけ!毎回隣の小野の部屋で待ち構えてるじゃねえか!」


「それをあんたが読んできてると思って裏をかいて今回は部屋にいたのに!」


「そんなことだろうと思って今回もこっちに来たんだよ!」


「ちっ!今回はあんたの勝ちか!」


「今回の弁当箱洗いはお前だ!」


 あの物腰丁寧な旗手先生の語調が荒い…。ていうか何でこの人たちたかだか弁当箱返すのに心理戦くりひろげてるの?あと今回はってこんなこと毎回やってるの?


「先生、大家さんと顔見知りだったんですか!?」


「ええ、同級生なんです高校の」


大家さんの高校時代…。きっと想像を絶するような学生時代だったに違いない。少なくとも昔から凶器は携帯してそうだ。お互いに。


「まったく、こいつは高校の時から堅物でね」


「お前も高校の時からおおざっぱなままだったな。相変わらず残念な美人だな。きちんと手入れをしやがれ」


「ふん、そっちこそ、昔っからキリッとして、もうちょいラフなほうが映えるんじゃないかい?」


 あれ?この二人実は仲いいんじゃないか?


「やはり決着をつけるしかないね…」


「そのようだな…」


 大家さんはショットガンを構え、旗手先生は刀に手をやった。体に悪寒が走り、辺りの窓が音を立てる。明らかに一般人が出せる雰囲気じゃない。


 睨みあう二人。それはほんの数秒のことだったが、体感的には10分以上の時間を思わせる圧力だった。

 その後すぐ、そっと二人は得物から手を離した。


「「相討ちか…」」


 何がでしょうか。次元が違いすぎてついていけない。


「晩御飯はワリカンだな」


 え、今のはそういうやり取りだったの!?


「部活終わったら飛んでくるんだよ!」


「わかってるよ」


 そう言って、回れ右で先生は帰っていった。


「…嬉しそうですね」


「楽しみだからね。さ、今日は何を着ていこうかな♪」


 部屋に戻っていく大家さんは、さっきの死闘とはかけ離れた普通の少女のような笑顔だった。




 とんでもない非日常をついさっき体験したものの、部屋に戻れば先生が来る前と同じ暇な時間だった。


 そよ風にゆれる洗濯物は当然まだ乾いていない。天気予報では今日は夕方に雨が降ると言っていたしかし、部屋には暖かい太陽の光が差しこんでいる。


 もうこのまましばらく日なたぼっこというのも悪くないかもしれない。


「ごめんください」


 女性の声。今度は誰だろうか?

まあさすがにさっきのような非日常を味わうことはないはずだ。新聞の勧誘だろうか?


「すみません新聞は…」


「出かけますよ山下さん」


非日常、到来


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