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order‐7.5

「九条さんは好きな人でもいるんですの?この学校に」


 その話は唐突に始まった。


「なな、何でそんなことを?」


「やるわねー林檎…だっけ?そのとおりよ」


「ちょっ、歩村!」


 隣の席から歩村が口を挟む。


「えっと?」


「あ、紹介するね。友達の街瓜歩村」


「で、何でこの娘が好きな人がいるってわかったの?」


「勘です勘。私もその…同じなのでなんとなくわかりました」


「同じ…?」


「私も…好きな人がこの学校に入学していて」


「へー、どんな人なの?」


「ちょ、歩村…」


 と、歩村をなだめようと思いつつ気にはなるので深くとめられなかった。


「その人と始めて会ったのは小学生の時でした

「転校したての私は周辺のことがよくわからず、学校からの帰り道に迷ってしまいましたの

「かといって学校に戻る道もわからなくなっていました

「途方にくれ、泣き出しそうな時に現れたのが彼でした


「なるほど、それでその子が助けてくれたのね」


「いいえ」


「?」


「学校までの道を案内すると手をつないでくれたんですが、一緒に迷いまってしまいましたの

「結局、二人とも近所の大人にお世話になりましたわ

「でも彼は

「きっと同じくらい不安だったはずの彼は

「警察がくるまでの間、私の手をずっと握っていてくれたんです

「また泣き出しそうな私を(大丈夫だよ)とはげましながら

「それだけで私はどれほど救われたか!


「あの日以来、彼を忘れたことはありません」


「なるほどね…ってアリス?何で泣いてるの?」


「だって…だってぇ」


 似たような体験を知る私にとってその話は涙なしには聞けなかった。


 私の両手は自然と彼女の手を握りしめていた。


「きっと…きっと上手くいくよ!まったく根拠はないけど!」


「はい!」


 白雪林檎さん。


 まるで小動物のように可愛らしい彼女が慕うその人がどんな人かはわからないが本当に上手くいってほしい。


「何だか誰かと状況が似てるわね」


「似てる?」


「この娘の好きな人もね、小さいころに親切にされたのがきっかけなのよ」


「そうなんですか!?」


「だから好きとかじゃなくて、その、恩を返したいっていうか、感謝を伝えたいっていうか」


「「( * ̄∀ ̄)」」


「何よその顔は!林檎まで!」


 今度手を両手で握るのは林檎だった。


「きっと上手くいきます!」


「な、何が!?」


「実はね、アリスはもうその人の家まで行ったどころか、一緒に朝ご飯を食べたりしてるのよ」


「え、すごく進展してるじゃないですか!もう後は押し倒すぐらいしかやることがないのでは?」


「お、おおお押し倒すって!」


 林檎ちゃんの目は真剣だった。可愛らしい見た目してこの娘すごい行動派。見習うべきなのだろうか…。


「お。いいねー。それはそれでおもしろそう」


「おもしろそうって何よ!?」


「メイドまでしてるのよ?むしろ専門分野じゃない」


「歩村はメイドを何だと思ってるの!?」


 というか冷静に考えると誰かの家に急にメイドとしておしかけるって押し倒すよりもよっぽどアクティブではないか?


 好きかどうかはその…置いといたとして。


「どうしんですの?急に真っ赤ですよ?」


「…おかまいなく」


 急に恥ずかしくなってきた。


「ところでメイドってどういうことですの?」


「その人のところにメイドとして恩を返すんだって。というか何でメイドなの?」


「昔、彼がそういうのに憧れるって言ってたから」


「す、すごい!好きな人のために自分を変えたんですね!しかも直接!私も見習わなくては…」


「だから好きとかそういうんじゃ…」


「「(* ̄∀ ̄)」」


「何よその顔は!」


「九条アリスさんいるー?」


 そう言っていると、先生らしき人物に呼ばれた。


「はい?」


「明日のスピーチについて話があるから職員室まで来てくれる?」


「わかりました」


 そういえば学年代表のスピーチを頼まれていたんだった。


「じゃ、ちょっといってくる」


「はい」


「いってらー」


 手を振る彼女らに手を振り返し、私は教室を後にした。


林檎の口調が少し変わっていますが、設定忘れてたとかそういうのではないので気にしないでください


…本当ですよ?

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