6
三日月の魔術師を倒し1日が経った。あれ以降切り抜き殺人は一つも起きていない。
「奏太、ちょっとこっち来て。大事な話がある」
朔が奏太を手招きして呼んでいる。
「何の話?」
「君の母親の話だ」
朔はいつも以上に真剣な表情で言った。
「朔、奏太君は?」
雪葉は朔に聞いた。
「あの通りだよ。納得はしてくれた。だけど心の踏ん切りがつかないみたいだ」
長椅子に横たわり泣いている奏太の姿があった。
「仕方ないよ。母親は殺されカマキリになってしまい朔に殺されたなんて言われたら…ああもなるよね」
「ああ」
「どうしようか、これから…奏太君のこと」
「奏太はここで預かるっていう話だよね?」
「あぁ、うん。それはそうだけど…私が言っているのは奏太君の心のケアのことよ」
「それなら大丈夫だ」
「なんで?あんなに悲しんでいるのに何もしてあげないなんて」
「“何もしてあげない”こそ一番の選択肢なんだ。僕たち男ってのはね、乗り越えなきゃいけない悲しみっていうのがいつか来るんだ。それを自分で乗り越えてこそ、立派に逞しく成長することができるんだ」
「でも…まだあの子は子供よ?まだ10歳なのに…こんなの酷よ、いくら何でも」
「心配しなくていい。さっき話していてよく分かった。」
「彼は」
「強いんだ」
奏太は長椅子から起き上がり目をこすり涙を拭いた。奏太が最後に流した一滴の涙は悲しみの涙ではなく、これからの彼の逞しさを表すかのように爛々と輝いていた。
作品についての感想、指摘待ってます‼