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機人の月  作者: パプリカ
蟷螂の己(前)
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17歳のときであった。私、アンドルフィン・クリスティアナは有名な魔術師の出だった。

魔術学校のある時計塔ではいつも主席、類まれなる美貌を持ち、それは周りにいる人間をいつも魅了していた。

順調な人生だった。なにも狂いは無く、まさに順風満帆であった。

しかし、ある事件が私の人生を狂わせた。


ある夜、私たち家族が寝ていた時のことだった。突然玄関のドアが開き複数人の大男が入ってきた。私の家系に伝わる魔術は召喚術。とっさのことであったので対応ができなかった。

その夜、私の父は殴り殺された。そして私と母は男たちの慰み者となった。行為が終わった後、母は用済みと言わんばかりに殺された。私はそのあと誘拐され何か月も監禁、行為を強要された。


事件の半年後、その男たちは逮捕された。しかし私の憎しみは消えることがなかった。私は復讐するためにいろいろな研究をした。その結果探し当てたのが月の魔術だ。私が研究で足踏みしていた時、ある青年が私に声をかけてきたのだ。


「力が欲しい?」


まさに神様であった。私は復讐のためならなにも厭わない覚悟であった。命でさえ捧げようと思った。もちろん私はその青年の提案に乗った。


月の魔術は月石げっせきという無限の魔力の塊を使い万物を創造する魔術であった。月石には4つの種類があった。一つは満月、一つは半月、一つは三日月、一つは新月だ。彼の言うところによると、この4つの石に多くの生贄の血とあふれ出るほどの魔力を注ぎ込むと「紅い月」というものの生成ができるそうだ。紅い月には世界を混沌に陥れ、新世界の創造をできるようにするといったものであった。彼の目標はそれの生成にあった。


私は実際そんなものに興味はなかった。ただ奴らを苦しみぬかせて殺せる力が欲しかっただけだった。それから私は月石魔術の研究に打ち込んだ。私は月石魔術と秘伝の魔術である召喚術を組み合わせてみた。この組み合わせが良かったようで、パワーは前の5倍以上、魔力は無限にあるため幾らでも出すことができた。


月石魔術は素晴らしいものであった。私の復讐はそれからすぐに終わった。カマキリの生成、そして生きたまま心臓を中心に三日月型に切り取り殺す。見ていて清々しかった。その清々しさは復讐の達成によるものではなく力の獲得によるものだと気づくのにそう時間はかからなかった。


それから私は力を求め続けた。求めて、求めて、求めて、求めて、求めて、求めて、求めて…


嗚呼、裁定者の言った蟷螂の斧という言葉、実に私にあっている。力を求めた結果がこの有様だ。無様な敗北、死。結局は背伸びをしたに過ぎなかったのだ。そう、まるでカマキリが勝ち目のないものに斧を掲げているのと同じだ。


私にはこの言葉より似合っている言葉がある。実はさっき思いついたのだが…蟷螂の斧の「斧」を「己」という文字に書き換えるのだ。


蟷螂の己


なんと滑稽で儚い言葉なのだろう。


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