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機人の月  作者: パプリカ
蟷螂の己(前)
4/7

3

3人は一瞬固まった。朔は奏太にこう答えた。


「ごめんな、その依頼は受け付けられない」


「どうして?」


奏太は困惑の表情を浮かべていた。


「その件について先約があったんだ その内容は2つ。1つは君を死んでも守ること。もう一つは…その人の捜索依頼が来ても必ず突っぱねることなんだ」


「?」


奏太はますます困惑していた。


「誰?その依頼した人」


声が若干震えていた。


「答えられない」


朔は言った。


「わかった。じゃあ僕からそれじゃない質問してもいい?」


奏太にはその依頼人が誰であるのか?という疑問があったが他にもあった。


何故自分のことを知っているのか?


朔と出会ったのは先ほどあの化け物の大群に襲われたときが初めてだった。なのに朔は「君」と前の依頼人の護衛対象がまさしく奏太自身であるというような口ぶりだった。


ならお母さんのことについて何かこの人たちは知っているのではないか?むしろ何かこの人たちは奏太の両親のことを隠しているような気がしてならなかった。


「奏太君、今君は君のご両親のことについて考えてるよね?」


雪葉が口を開いた。


「大丈夫よ、君のご両親はきっと無事。だから安心しなさい、今は自分の安全のことを考えて。君はちょっと、いや、かなりあの化け物たちから狙われやすくなってるの。大丈夫‼君は私たちが責任もって守るから‼」


「うん…」


奏太は不服そうだった。




「11月5日、夕方のニュースです。」


事務所にある一台のテレビからニュースが流れている


「今日の午後3時ごろ、また三日月型に切り抜かれた体の一部分が発見されました。警察によりますと、被害者の胸の部分が三日月型に切り取られ、それ以外の部分は消えており現場に残っていたのはその三日月型の被害者の一部だけでしたそうです。容疑者、被害者共にまだわかっておりません。先月のはじめ辺りから始まったこの事件、先月の下旬から被害者数はかなり減ったものの未だ続いております。お出かけなさるときは注意して外出なさってください。では次のニュースです。」


「はぁ…仕事が増える増える」


朔はニュースを聞きながらため息をついた。


「あともう少しで突き止まるんだ。今夜も頼むぞ。」


和浪は新聞を広げタバコを吸いながら言った。


「へーいへい、がんばりますよ~」


いつもながら面倒くさそうな朔であった。




「じゃ、行ってくるわ」


朔は今夜も化け物退治に出かけて行った。奏太は家にいても危険だったので事務所で預かられていた。


「ねぇ、和浪さん。夕方にもうすぐ突き止まるって言ってたよね?なにがなの?」


奏太はふと疑問に思った。


「ん?あぁ、この事件の大本だよ。もうすぐ場所がわかる」


和浪は答えた。和浪は最初は奏太のことを少し遠ざけていたが次第と仲も深まった。


「どうやって場所を探すの?」


「あの化け物たちがいただろ?あいつらを朔に狩らせてるのは事件の被害者を減らすためじゃないんだ、実はな。あいつらは魔力で構成された、所謂操り人形さ。魔力はもちろんその大本の奴のものだ。奴の場所を探るためには魔力サンプルがかなり必要だったんだ。今、朔の半身に魔力を収集できる細工をしててだな、あいつが奴らを倒せば倒すほどサンプルが手に入る。その魔力サンプルを分析し、それを元に逆探知をしていくんだ。どうだ?わかったか?」


「う、う~ん?」


奏太は首を傾げた。


「つまりね、朔が敵の場所を突き止めるためのヒント集めをしてるってわけ。はい、カフェオレ。和浪さんはコーヒーね」


雪葉が二人分の飲み物を持ってきた。


「おう、ありがとな」


「やっぱりまだ和浪さんの話は早いわね。それに魔力って言われても全然ピンと来ないでしょ。魔法だなんて一般的には存在しないもんね、ファンタジーの世界よ」


「魔法ってほんとにあるの?」


奏太は興味を示した。


「ああ、魔法はあるぞ。自分で使っていても未だに素晴らしいものだと感心してしまうものだ」


「和浪さんって魔法使えるの?」


奏太は目を輝かせながら言った。


「ああ!もちろんだとも‼こう見えてもな俺は魔術に関して一目置かれてた存在なんだぞ。なんならお前に教えてあげてもいい、いや、教えよう‼お前はなんたってあのレイズの息子な」


「和浪さん」


雪葉は和浪を睨んだ。


「おぉっと」


和浪は口を噤んだ。


「むすこ…?てことはやっぱり知ってたんだね‼なんでお母さんたちのことを教えてくれないのさ‼」


奏太は怒っていた。


「いや、あの…なんだ、その…忘れてくれ、な?奏太」


「答えて‼」


奏太は和浪を問いただす。雪葉と和浪はお互いを見合ってため息をついた。


「わかった、奏太。この事件が終わったら全部話す。まぁ、話さなくても朔が勝手に言ってただろうけどな」


「ということよ、奏太君。まぁ、もう少し我慢してね」


「わかったよ…」


2人の言葉を聞いた奏太は引き下がった。


「で、魔術の話に戻そうか。奏太、お前には魔術の才能がある。その才能を埋もれさせるのは一魔術師として見過ごせない。だから俺が師匠となってお前を教えるよ。いいか?」


「うん、わかった」


和浪の提案に奏太はすぐに乗った。和浪は続けた。


「雪葉も教えるからわからないことがあったら雪葉に聞け。俺は時々話を余計難しくしてしまう癖があるからな、さっきみたいに。自覚はあるんだよ、自覚は」


「てなわけでまただけど、よろしくね!奏太君!」


「よろしく!雪姉‼」


「あっ、そうだ!」


雪葉は何か思い出したように言った。


「これで奏太君も魔法使えるようになったら~、使えないのこんなかで朔だけになるんじゃない?」


「それもそうだな。あいつ、奏太をここに連れてきたときかなり嬉しそうだったもんな。魔法使えないの僕だけじゃなくなったぞー‼って言ってな」


「え?朔兄って魔法使えないの?」


「うん、使えないよ。だから早く朔を抜かしてみんなで笑ってやろうよ」


雪葉と和浪は不敵な笑みを浮かべながら言った。


「盛り上がってるじゃないですか、皆さん。魔法が…なんだって?」


「あ、朔お帰り」


「朔兄お疲れ~」


「シャワー浴びてくるわ」


朔は少し不機嫌そうだった。


「うっわ、朔。大人げな~い。自分だけ使えないのがそんなに嫌かな~?」


「ゆきは?後で覚えときな」


「ごめんごめん‼調子乗りすぎた‼謝るから許して‼」


「しゃーないな」


そう言いながら朔はシャワールームに入っていった。




「で、どうなんだ所長。わかった?」


「ああ、元々敵の名前と顔は知ってるからな。周辺まで分かればこっちのものさ。敵の場所は…これは教会か。カルト宗教…何教だって?スナンタ教だって?相変わらずセンスのかけらもないな」


次の日の朝、朔と和浪は話していた。


「で、決行はいつにする?」


「朔、お前の調子で決まるんだけどな」


「じゃあ、今晩だな。僕はいつでもバッチシだよ」


「それは頼もしい限りだ。後で雪葉にも伝えておく。時間までゆっくりしてていいぞ」


「言われなくてもそうするつもりだったよ」


朔は長椅子に寝転がって眠りについた。


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